【田中賢介・まだ見ぬ小学校へ】北海道新聞社・広瀬兼三氏と語る(前編)

 本誌連載「田中賢介 まだ見ぬ小学校へ」より記事を抜粋して紹介。立命館慶祥小学校の開校を目指す田中学園は授業で新聞を活用する――北海道新聞社と包括連携協定を締結。道新と共同で「MNI」教育に取り組む。広瀬兼三社長(収録当時、現会長)と新聞の可能性などについても語り合った。以下はその前編から。

正しく情報を扱い、発信する人材を育む

新聞社がカリキュラムづくりに参加

 ――連携に至った経緯は?

 田中 2019年シーズン限りで現役を引退した際、北海道新聞社に僕の記念写真集をつくっていただきました。シーズン終了後の納会のときに、その本を広瀬社長が直接、持ってきてくださいました。そのときから面識があります。

 広瀬 田中さんの現役時代は、セカンドでのプレーが華麗でした。“本業”以外でも、乳がんの早期発見・治療を支援するピンクリボン活動を長年続けています。社会貢献活動に敏感な方だと感じていました。

田中賢介氏 ©財界さっぽろ

 田中 僕は昔から新聞が好きでした。いまはもちろん道新を毎日読んでいます。

 小さいころは新聞を読んでいる父の姿を見て、僕もマネて読むようになりました。いま、息子たちも僕をマネて、道新のこども新聞「週刊まなぶん」を読んでいます。

 新聞にはさまざまな分野の話が載っていて、自身の知識や教養につながります。

 今回、小学校をつくるにあたって、新聞はすばらしい教材だから、教育に生かせないかと考えていました。調べ始めたところ、道新も取り組んでいる国際的な教育運動「NIE(教育に新聞を)」の存在を知りました。

 こうして、僕のほうから道新に協力をお願いしたく、広瀬社長にお会いさせていただきました。

 広瀬 昨年の秋でした。田中さんが語る教育の理念はもちろん素晴らしく、現役時代、海外挑戦して目の当たりにした貧困問題、格差社会の話も印象深かったです。そして、初等教育の大切さ、学校開校の話を聞き、ますます田中さんのファンになりました。

 当社も18年から、道新先生というキャラクターをCMに登場させたり、教育に関する紙面を毎日掲載するなど、教育に力を入れてきました。

 田中学園との連携に可能性を感じたので、即断でした。

 ――道新もおこなっているNIEの取り組みとは?

広瀬兼三氏 ©財界さっぽろ

 広瀬 もともと識字率などを高めるために、1930年代にアメリカで誕生しました。現在、80カ国以上でこの運動がおこなわれ、「民主主義を支え、よりよい市民をつくる」と考えられています。

 国内では日本新聞協会がNIEを呼びかけています。新聞を読むことを通じて、子どもたちが「読解力」「思考力」を養い、「社会への興味・関心」を持つ。

 実際に新聞をつくることで「コミュニケーション能力」「情報を選び取る力」「書く・表現する力」「相手の状況を考えて伝える力」などを養う。それが目的です。

 当社は2003年にNIE推進センターを設置し、出前授業や職業体験を実施しています。

 ――昨年12月22日に包括連携協定の調印式をおこないました。

 田中 連携によって、情報を適切に取捨選択し、自らの考えをまとめ、発信できる人材の育成を目指す「MNI(Master of News & Information)」教育に取り組みます。

 授業はNIEを活用したものが基本になると思いますが、新たにカリキュラムを共同で開発していきます。

 広瀬 新聞社が小学校のカリキュラムづくりに参加するというのは全国的にも珍しい。当社の担当者は「週刊まなぶん」の初代編集長です。

 田中 田中学園は私立学校ですから、カリキュラムの自由度が高い。

 たとえば、道新の教育用記事データベース「まなbell(べる)」を使って、調べ学習などを実施できるかなと考えています。その道のプロの方に、正確な情報をどうやって迅速に集めるのかを子どもたちに教えてもらいたいです。

 また、当学園には教科横断型カリキュラム「LINK(リンク)」があります。その中で、「新聞」と別の科目を組み合わせた授業もできるかもしれません。

 MNI教育のためのカリキュラム開発は、そう簡単ではないと思います。でも、道新と協力することで実現できると考えています。

 そして、将来、MNI教育のカリキュラムが当学園のものだけではなく、公立小学校でも活用されるくらいにしていきたいです。そういう志で取り組んでいきます。

 広瀬 こういう取り組みが北海道から出てくるのはうれしいことです。将来、田中さん、田中学園が新しい教育のフロントランナーになるかもしれませんね。当社も全力でサポートしていきます。

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