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顧客、社員、家族・・・〝人〟を大切に 新体制の札幌オーナーズが始動

【左】
札幌オーナーズ会長
森 賢一
(もり・けんいち)1959年名寄市生まれ。地元高校卒業後、札幌市内の大手賃貸仲介会社などで不動産の経験を積み、1994年「札幌オーナーズ」を設立。札幌市内を中心に5000戸を超える賃貸物件を管理する。
【右】
札幌オーナーズ社長
大西 裕司
(おおにし・ゆうじ)1977年北広島市生まれ。専門学校卒業後、不動産売買仲介会社に就職。2002年札幌オーナーズ入社。23年常務取締役就任。24年11月社長に就任。

バブル崩壊後、1億円の借金からのスタート。
森賢一社長が1994年に設立した「札幌オーナーズ」は、〝人〟を大切にする経営で10年で借金を完済。昨年、創業30周年を迎え、11月には事業承継により新体制を敷いた。主軸の不動産管理業のほか、企業の社宅管理代行事業など新事業にも挑戦する。今後のビジョンを語ってもらった。

バトンを次世代に。 新社長を後方支援

 ――昨年11月5日に新体制に移行されました。

 森 一粒万倍の日を選びました。私がお世話になったオーナーも高齢化してきました。世の中の流れに迅速に対応するために世代交代しました。会社設立当時から私が65歳まで、と決めていましたから。ただ、引退はしませんよ。生涯現役です。後方から新社長を全力でバックアップしていきます。

 ――社内から新社長を抜てきしました。

 大西 2002年に入社し、不動産管理業界のイロハを学びました。23年に常務に昇進したタイミングで、森会長から正式に社長の打診を受け、社内外に次期社長と発表されました。社長に就いてまだ間もないですが、これまで以上に売り上げや業績の推移に敏感になりました。トップの重圧を感じています。

 森 2代目社長ということで、これからさまざまな見方をされるでしょうが、会社の業績を伸ばして社員の給与を上げること、社長の仕事はこれだけ。バブル崩壊で被った1億円の借金を背負いながらも私がブレずに継続してきた「お客様、社員、家族を大事にする」という〝根っこ〟を大切にしながら、時代に応じた経営を実践してほしい。

 大西 20年以上森会長の近くで商売の鉄則を学ばせてもらいました。〝損して得取れ〟という義理人情あふれる姿勢で、お客様の信頼を得てきた姿を見てきました。森会長が築いた当社ならではの伝統を守っていきます。

 ――今後の展開は。

 大西 まずは当社の主事業の不動産管理を伸ばしていきます。現在は約5000戸の賃貸物件を管理していますが、年間500戸増、2030年には7500戸を目指します。また、自社保有物件も増やしていく方針です。管理業と大家業というストック型ビジネスを拡大させ、経営基盤を盤石にしたい。

 新規事業としては、企業の社宅や社員寮の入退去手続きやクレーム対応などの代行事業も今年から準備、計画しています。

 森 人材不足の昨今、企業の担当者はさまざまな業務に追われています。各種手続きや修理の手配などは煩雑で、とても大変な思いをしていると聞きました。管理のプロである当社が日々の管理を丸ごと請け負うことで、担当者の負担を軽減できます。さまざまな企業に積極的にアプローチしていきます。 

社員の待遇向上でマンパワーを確保

 ――不動産管理業界も人材が不足していますね。

 森 管理戸数の増加に伴い、当社も人員を増やし、気づけば社員は50人を超えました。数ある不動産管理会社の中から当社に入社してもらえて素直にうれしいですね。

 大西 労働時間の抑制や休日の確保といった働き方改革を進めるのは当然ですが、採用面ではやはり待遇が重要なポイントです。社員の給与をしっかりと上げていくことを盛り込んだ5カ年計画を社長就任時に森会長と策定しています。

 一方、管理業務にマンパワーを集中できるように、社員のスケジュール管理や各種情報共有、勤怠管理、売上管理などを一元管理できる社内システムも自社で開発したほか、毎月2億円に上る顧客オーナーへの家賃の送金などはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による自動操作なども活用しています。これからも生産性の向上も推し進めていきたい。

 森 AIをはじめとするテクノロジーの進化は目覚ましく、今は時代の革命期だと感じています。この流れに乗れるのか、乗れないのかで、今後の企業の明暗を分かつ。このタイミングでトップを譲りました。

 ただ、時代が変わってもやはり〝人〟が最も重要。お客様も社員も人対人であるということは、何度も伝えています。

 大西 森会長に助言を仰ぎながら、踏襲すべき部分と進化すべき部分を見極め、業務にまい進していきます。