早期事業承継の準備は完了。自身が〝最終章〟と位置付ける年がスタート
〝除雪のT.K.R〟として知られるT.K.R(本社・札幌市)は、1995年に鉄筋業として創業。現在はコンサルティング事業など多角展開している。同社を率いる加藤忠社長に、創業から30年を振り返るとともに、将来の展望について語ってもらった。
銀行に預けていても売り上げは増えない
大型商業施設やスーパー、コンビニ、倉庫、飲食店など1000社以上の法人と除排雪契約するトップカンパニー。〝除雪のT.K.R〟というテレビCMで認知している人も多いだろう。
2007年設立で、現在は除排雪事業のほか、防犯監視カメラやLED照明の施工販売を手掛け、省エネによる「企業のコストダウン実現」をテーマに〝総合コストダウンコンサルティング企業〟としても業容を拡大している。
創業は1995年、加藤忠社長が20歳の時で鉄筋業が主事業だった。
「同級生3人で、札幌市北区の4畳半のアパートからスタートしました。営業のやり方もわからず、お世話になった鉄筋屋さんから仕事をいただいていました。本当に助けられましたし、感謝しかありません」と加藤社長は当時を振り返る。
その後、東区の中沼に100坪の加工場を確保。「ここから元請の仕事も徐々に入ってくるようになり、仕事の幅も広がった」と加藤社長。その後も地道に敷地の拡大を進め、現在はは約2000坪に及ぶ。
しかし、順風満帆に進んできたわけではない。創業から3年後に法人化したが、業績不振で30歳の時に一度廃業した。しかし再び奮起し、業態を変えて会社を起こす。それが前身企業の「TK工業」だ。さらに自身が32歳の頃に「除雪をやろう」と考えて、現在のT.K.Rに社名を変更した。「R」は「鉄筋」「除雪」そして「リフォーム」の英語の頭文字だ。
経営セミナーを受講するなど経営にも本腰を入れた。加藤社長は「一度倒産を経験したことが大きかった。倒産後もついてきてくれた社員がいて、〝自分のためだけじゃなく、人のために動かないと〟と気づいたんです。そのためには、会社を強化する経営ノウハウが必要だったんです」と語る。
セミナーでは〝強い営業が必要〟ということを知り、資金を積極的に人材へ投資。自らも営業スキルを磨いた。その結果、除雪の注文が次々に舞い込み売り上げが跳ね上がったという。
「出た利益は新たな人材と設備投資に充てました。人材育成に投資して、優秀な人材を育てることが会社を大きくする基本。銀行に預けておくだけでは、売り上げは増えません」と加藤社長は当時を回顧する。
チャレンジ精神を忘れず失敗を恐れない
現在、除排雪以外に、LED照明や防犯監視カメラの施工販売などの事業も手掛ける。さらには、治安悪化や防犯意識の高まりを予見して、セキュリティ事業をスタート。23年からは、中古ガレージのリサイクルも開始している。
常に新しいことにチャレンジし、誰も走ったことのない道の先頭を走ってきた。30歳で一度失敗したことも通過点――こうした前向きな姿勢で、人材育成や社内組織の強化も推進。従業員には〝全員がお互いを思えば一番ビジネスに繋がる〟ということを伝えている。
「お客様が何を求めているかを一番に考える。まさに皆が〝WinWin〟ですよね。『新しい事をやる事が恐い』より『新しい事にチャレンジできなくなる方が恐い』です。できるできないではなく、やるかやらないかで未来が変わる」(加藤社長)
新たな年は創業から30周年、加藤社長自身も50歳の節目の年となる。
「50歳からは経営者としての最終章と位置付けています。早い段階で事業の承継を視野に入れている。承継は5~10年の長期計画が必要と言われていますが、新たな年からは後任の選定に本格的に取り掛かかる。目の黒いうちに次代へバトンをつなぎ、これからは、若い人達が中心となって業界を支えてほしい。そのために早期の引退が必要だと考えています」と加藤社長。