寿司職人になりたい若者へエール「鮨たいら」店主の小平さんが語る技術の研鑽と挑戦の醍醐味

小平 義人
(こひら・よしと)1988年美唄市出身。北海道美唄高等学校(現・北海道美唄尚栄高等学校)卒業後、寿司職人を目指し、すし善に入社。15年間の修業を経て、34歳で独立。2023年12月に「鮨 たいら」を開業。
寿司職人――厳しい修行の世界と思われがちだが、今やその活躍は国内外へ広がる。ススキノの人気店「鮨たいら」店主の小平さんは「もっと若者にこの道を志してほしい」と語る。寿司職人の魅力とは何かを取材した。
――今、寿司職人が注目されています。その魅力とは。
小平 寿司はシンプルに見えて奥が深いです。〝握る〟という動作ひとつにも力加減、シャリの温度、ネタとのバランスなどすべてが計算されています。こうした技術を極める楽しさが一番の魅力だと思います。また、目の前でお客さんの反応が見られる〝ライブ感〟も醍醐味です。「おいしい」の一言を頂いた瞬間は、何物にも代えたい充実感を感じます。
――寿司職人は厳しい世界と聞きます。
小平 私は18歳の時に寿司の世界に飛び込み、初めて人前で握ったのが3年目の時でした。これでも業界内では早い方ですが、下積みの期間は大変でした。挫折する人も多く見てきました。数え切れないほどの失敗を経験したからこそ、今があると思っていますが、厳しすぎる修行文化には疑問を感じていました。最近は短期間で技術を学べる環境も増え、技術をしっかり学びながら成長できる時代です。
――寿司職人を目指す若者にメッセージを。
小平 寿司職人の道は、決して楽なものではありませんが〝飯炊き3年握り8年〟という時代から徐々に変わりつつあります。ただ厳しいだけでは、若い世代が育ちません。「技術は見て盗め」ではなく、実践を積みながら技術を身に付けることが一番の成長につながります。最初は誰でもうまくはいきませんが、そこを乗り越えた先にしか見えない景色があります。近年は、国外でもニーズが増え、寿司職人の活躍の場が拡大しており、稼げる職業としても認知されています。私は〝寿司が好き〟という単純な動機でしたが、この気持ちを持ち続けられるかが重要です。本気で寿司の世界に飛び込む覚悟がある人は迷わず挑戦してほしい。
――最後に、寿司業界発展への思いをお聞かせください。
小平 カウンター寿司は敷居が高いと思われがちです。服装や食べ方などのマナーに厳格なお店は多いですが、寿司は日本の食文化の一部であり、誰もが気軽に楽しめるものだったはず。だからこそ、もっと身近に感じてほしい。当店は〝職人のこだわりを押しつけない〟をモットーに、子連れのお客さんでも来やすい店作りを意識しています。これからの時代は、これまでの〝伝統〟を重んじるお店のほか、時代に合った〝改革〟を行うお店など多様化が進むと思います。寿司の可能性が広がることで、職人のなり手の増加や利用者層の拡大につながることを期待しています。