【田中賢介・まだ見ぬ小学校へ】コープさっぽろ理事長・大見英明氏と語る(後編)

 本誌連載「田中賢介 まだ見ぬ小学校へ」より記事を抜粋して紹介。立命館慶祥小学校の開校を目指す田中学園はコープさっぽろと包括的連携協定を結んだ。田中学園と民間企業との連携は初めて。大見英明理事長と食育カリキュラムの構想などについて語り合った。以下はその後編から。

食は幅広い分野とリンクしている

 ――両者は連携内容の一つとして、食育カリキュラムの共同開発・運営を掲げています。どのような食育カリキュラムを実施したいと考えていますか?

 田中 現時点では、具体的な内容を公表できる段階にはありません。ただ、食という分野は、単純に食べるだけではありません。生産、お金、社会など、さまざまな話とリンクしています。

 私どもの小学校で実施する教科横断型カリキュラム「LINK(リンク)」を通じて、幅広い視点での食育に取り組んでいきたいと考えています。

 大見 確かに、食の分野は幅広い。「食する」ということは、命の恵みをもらうということ。生命についても勉強することができます。また、「食の大切さ」ではその延長線上として食品のフードロスにもつながっていく。さらにその先にいくと、「SDGs(持続可能な開発目標)」の問題にもリンクしていきます。

 一方で、いまの社会は生産(者)と消費(者)が離れてしまっている印象を持っています。たとえば、子どもたちに「魚の絵を描いてください」と言ったら、ホッケの開きを描くとか、そういったケースがあると聞きます。

 ですから、生徒たちが、生産者のところに行ってみる、という学習方法も考えられるかもしれませんね。生産の現場を見るということは勉強になります。

 ――田中学園では民間企業などからの支援を募っていますが、コープさっぽろが第1号となります。

 田中 コープは食を通じて、安心安全はもちろん、生産から流通までを展開している団体。そういう強みのある団体と連携させていただくことができ、大変ありがたく、また心強く思っています。

 当学園としては引き続き、民間企業などへの支援を呼びかけていきたいです。保護者からの学費と北海道からの補助金などで、学校運営をまかなえるかというと、現実問題として、厳しさもあります。 支援は資金面だけでなく、どういった分野でも構いません。よろしくお願いいたします。

2020年11月27日に連携協定の調印式を実施(コープさっぽろ本部にて) ©財界さっぽろ

 大見 コープとしては、これまで、札幌大通高校や札幌開成中等教育学校で食育授業を実施してきました。しかし、小学校との連携は初めてとなります。

“食を意識”するという裾野を広げるのは、低年齢から取り組む必要があるのかなと思っています。小学1年生からの食育に取り組めるというのはコープにとってもチャレンジになります。

 子どもたちに向けた食育は親御さんにも影響を及ぼすと考えています。「子どもの成長とともに親も成長する」という話をよく聞きますよね。今回の連携を通じて、そういうことにつながる取り組みを実施していきたいです。

 田中 親御さんが子どもたちと一緒に参加できるアフタースクールなども実施できたらいいですね。そういうことを検討していきたいです。

 大見 このほか、連携内容の一つとして、田中学園の学校給食に関しても協力していきます。関連会社であるコープフーズはこれまで幼稚園給食事業などにも取り組んでいます。そうしたノウハウを活用できればと考えています。

 田中 スペシャルメニューの提供なども実現できれば面白いですね。

 心意気だけで経営者として素晴らしい

 ――経営者の先輩として、大見理事長から見て、理事長・田中賢介はどのように映っていますか?

 大見 畑違いの方が、北海道で私立の小学校をつくる。しかも私財を投じて。そもそも、この心意気だけで、経営者として素晴らしい!社会貢献としても十分な取り組みでしょう。

 私は経営者にはまず、パッションがないとダメだと思っています。田中理事長にはそれがある。そして、お会いすると、「こういう小学校をつくりたいんだ」というビジョンがある。これも経営者には必要なことだと思います。

 田中 そう言っていただいて、ありがとうございます。今後も、大見理事長にアドバイスを頂戴しながら、また、コープの知恵と経験をお借りしながら、子どもたちが食を通じて、成長できる小学校をつくっていきたいと思っています。

◎前編はコチラ

 本記事が掲載された月刊財界さっぽろ2021年2月号は、以下の当社公式通販サイトなどからどうぞ。

→Webでの購入はコチラ

→デジタル版の購入はコチラ