【特別掲載】ベルギー1部移籍決定的!コンサドーレ・鈴木武蔵選手が対談で語った“成長への意欲”

「肌感覚としてはまとまっていく方向だと思います」

 8月13日朝、J1リーグ・北海道コンサドーレ札幌とサポーターに激震が走った。クラブ所属の日本代表FW・鈴木武蔵選手に突然の海外移籍報道、それも一両日中にも移籍決定的と報じられたからだ。

 同日の報道によれば、移籍先はベルギーリーグ1部のベールスホット。昨シーズンは同リーグ2部で優勝し、今シーズンから1部に昇格。今月に入りコンサへオファーを出し、両クラブと鈴木選手本人を含めて交渉がおこなわれていたという。

 同日昼、報道を受けてコンサは緊急会見を開催。移籍交渉の責任者である三上大勝ゼネラル・マネジャーは「正式なレターは届いていない」として、交渉は口頭でのものだとしながらも、冒頭のように見通しを示した。

会見するゼネラル・マネジャーの三上大勝氏(8月13日、北海道コンサドーレ札幌提供映像より) ©財界さっぽろ

 選手の移籍交渉に関して、まだ決まっていない段階で経過説明のために会見を開くのは、コンサのみならずJリーグのクラブとしても異例のことだ。コンサ番記者は「13日に一報を出したスポーツ報知のスクープ。鈴木選手の代理人と同紙関係者に深いつながりがあったことから、水面下での動きをキャッチしたようだ」と明かす。

 その上で「会見などを踏まえて、恐らく一両日中(8月14日)には正式発表があるだろう」と予測する。

 鈴木選手は1994年ジャマイカ生まれ。父はジャマイカ人、母は日本人で、2012年に当時J1のアルビレックス新潟へ加入。15年にJ2水戸ホーリーホック、17年に松本山雅FCへ期限付き移籍を経験後、18年にJ1のV・ファーレン長崎で公式戦31試合12得点とブレイク。翌19年シーズンからコンサへ完全移籍していた。

 またU-17ワールドカップをはじめ、年代別の日本代表にも早くから選出。リオデジャネイロ五輪代表としてもアジア予選から主力の一員として出場し、本戦グループリーグでも2試合1得点を記録した。

 月刊財界さっぽろ2019年3月号では、U-17日本代表時代から世代別代表の一員としてプレーをしているMF荒野拓馬選手と鈴木選手との対談を掲載。荒野選手とのお互いの第一印象や、ミハイロ・ペトロヴィッチ(ミシャ)監督の下で学ぶ意気込みを語っていた。以下、その全文に加え、本誌に掲載しなかった内容を含めて公開する。

   ◇    ◇

鈴木武蔵選手(2019年1月撮影) ©財界さっぽろ

ミシャさんの指導でもっと上手くなりたい

――移籍を決めた理由は。

鈴木 コンサが2018年シーズンからミシャさん(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)に代わった後、実際に対戦してみて、その前のシーズンとはまるで違うチームになっていたのを感じました。とくに攻撃面では、監督の指導の結果、こういう試合ができているんだろうなと思って。

――そうした監督の戦術や指導に憧れて移籍を決めたと。

鈴木 そうです。

――監督から学びたいことは。

鈴木 攻撃時のコンビネーションですね。

――いわゆる〝ミシャ式〟戦術で、どう貢献できると考えていますか。

鈴木 まずは自分の特徴を忘れずにというのが一番ですが、攻撃についてはミシャさんの指導を受けながら自分に足りない部分をどんどん学んでいきたい。成長して、上手くなりたいという思いが強いです。

それと守備については、1トップやシャドーの位置からでもしっかりやってきたので、そういう部分も出していけたらと思っています。

――荒野選手からみた鈴木選手のプレーは。

荒野 得点力があるので、コンビネーションで相手DFの裏に抜け出したり、自分たちが入れるボールに対してしっかり触ってくれるというのもありますし、そういうところを期待しています。

――鈴木選手は昨シーズン、V・ファーレン長崎で初めて二ケタ得点(11点)を記録しました。

鈴木 高木(琢也)監督は元FWだけあってFWの気持ちがわかってくれますから、そういう面ではすごく自分にとっても良かったのかなと思います。

――将来は海外挑戦も視野に入れていますよね。コンサには小野伸二選手(当時、現J2・FC琉球)のような海外経験をたくさん持つベテランも在籍していますね。

鈴木 ジェイ選手もすごいと思いますし、いいところはどんどん吸収していきたいです。

荒野 結構若返ったな、と感じます。

鈴木 自分も中堅と呼ばれる年齢ですから。

荒野 トップチームで試合に出るのは9年目ですからね。

――試合で同時にピッチに立った時のイメージは。

荒野 世代別代表ではポジション的に近いところでやっていましたが、コンサでは俺が後ろから武蔵に配球する役割。いいボールをしっかり出していきたいです。

――先発と途中出場ではどちらが力を発揮できるタイプですか?

鈴木 僕は先発で出ていたいほうがいいですね。長い時間出ていたいタイプです。

荒野 前任者(鈴木選手の前の背番号9は現・セレッソ大阪の都倉賢選手)はロスタイムにすごい点を取ってたよ。

鈴木 (笑)。都倉さんとプレースタイルは違いますが、自分も負けないくらい活躍したい、と思います。

荒野拓馬選手(左)と対談する鈴木選手 ©財界さっぽろ

アジア大会の世代別代表として一緒にプレー

――鈴木選手と荒野選手はアジア大会(2014年)のU―21日本代表で一緒にプレーしていて、面識があったそうですね。

荒野 はい。移籍のニュースを見て、俺のほうから武蔵に連絡しました。「来るの?」って。

――移籍を後押ししたとも言われていますが。

荒野 一緒のチームでプレーしてみたかったんです。代表ではやってますけど、コンサでも一緒にやれたら、楽しいと思ったので。

――世代別代表で初めて一緒にプレーした時の第一印象は。

鈴木 声が変なヤツだなと。

荒野 なんだよそれ(笑)

鈴木 〝クセ〟がありそうだ、と思いましたね。

――仲良くなれない感じを受けた。

鈴木 いやいや、逆に自分と持っている空気感が似ていると感じました。

荒野 武蔵と最初に会った時は、こんな今風のイケメンではなかったんです。坊主頭で〝隠キャ(暗そうな性格)〟だったよね。

――どちらから先に声をかけたのでしょう。

荒野 たぶん、一緒に集まるグループがあって、お互いその中の1人として自然と話したのかな。

――コンサについて、鈴木選手へ伝えたいことは。

荒野 武蔵は自分だけじゃなくて(MF深井)一希とかとも一緒にプレーしているので、とくに何か教える必要もなくチームに馴染めると思います。

鈴木 GK阿波加(俊太)とも、代表で同部屋だったことがあるんで、選手同士の関係については心配していないです。

――選手間でテレビゲームの「マリオカート」が流行っているそうですね。

鈴木 自分も持ってはいますが、まだ札幌に持ってきていなくて。

荒野 (キャンプ地の)タイに送ってもらおう。

鈴木 いやいや。

荒野 新しいの、買おうぜ。

鈴木 イヤだよ!

――マリオカートでは駒井選手がチーム内の〝チャンピオン〟だそうですね。

荒野 Youtuberと戦ったりしてますから。

鈴木 ホント?

荒野 (駒井)善成くんからYoutuberに連絡して、ネット対戦をしてしまうくらい本気。ただ、俺もそこに参加して、一度だけ1位になったことがあったので、一番上手かったのは俺ですが。善成くんより俺のほうが上手い!とあえて言っておきます。

――最後に、今シーズンの目標をそれぞれお願いします。

荒野 チームとしては残留をいち早く決めた上で、昨シーズン出られなかったACL(アジア・チャンピオンズリーグ)を目指すこと。個人としては、出場試合数の割にピッチに立っていた時間が少ないので、今年はそれを増やして行けたらと思います。

鈴木 自分はFWですから、15ゴール以上が目標。チームとしては自分も当然同じ目標を目指していきます。再来年はアジアの舞台にチャレンジできるよう自分も力を尽くしたいです。

   ◇    ◇

 鈴木選手はこの対談後、19年シーズンはコンサで公式戦39試合20得点と大活躍。J1リーグ戦13ゴールはチーム内得点王、YBCルヴァンカップでも6試合7得点と同大会準優勝の原動力となった。昨年はその活躍が認められ、フル代表にも初選出。12月のE-1サッカー選手権で1得点を記録するなど7試合に出場した。

タイキャンプで練習に臨む鈴木選手(2020年1月撮影) ©財界さっぽろ

 中島翔哉選手、南野拓実選手といった同じ日本代表・リオ五輪組が海外リーグで活躍する中、“ミシャ式”で成長を遂げ、自らも海外へと飛躍する鈴木選手。ベルギー、そして代表でのさらなる活躍に期待したい。

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