【田中賢介・まだ見ぬ小学校へ】立命館慶祥中・高校長 江川順一氏と語る(後編)
本誌連載「田中賢介 まだ見ぬ小学校へ」より記事を抜粋して紹介。田中氏が設立した「学校法人田中学園」は私立小学校設立にあたり、江別市にある立命館慶祥中・高校と連携。連載第2回では、初回に続き同校長の江川順一氏と教育論、連携内容などを語り合い、田中学園のカリキュラムの中身などについても迫っている。以下は後編から。
民間企業などに支援を呼びかけたい
――田中学園の特徴的なカリキュラムを教えてください。
田中 まずは「Root(ルート)タイム」です。朝の始まりに暗唱、音読、計算などに取り組む時間を10分程度設けます。子どもたちの勉強のスイッチを入れる時間と言いましょうか。
この他、「Watashi(ワタシ)時間」。自分の好きなことを見つけて、それに取り組む個別最適化学習です。算数など、学力の差が生まれやすい授業で一人ひとりが自分に合った学習をし、複数の教員がサポートします。
江川 多少、普通の授業に遅れる子どもも出てくると思います。そういう場合、この時間を活用し、先生が付き添って、その遅れを取り戻すということにも使えますね。
田中 「LINK(リンク)」は教科横断型カリキュラムです。問題解決型の力を養うために効果的な教授法で一つのテーマを設定し、複数の教科を組み合わせることで深い学びを実現します。また、私自ら授業を担当する「K(賢介)タイム」も実施します。
江川 カリキュラムではないですけど、導入する縦割り教育の「Tree(ツリー)システム」もユニークな取り組みです。
田中 全校生徒300人を3つの縦割りにして、グループごとで体育祭、宿泊体験学習など、学校行事などに参加するというものです。そして、各ツリーには枝葉のようなイメージで「リーフ」があります。リーフは1年から6年生までの1人ずつの6人編成で、それが1チームになるイメージです。1リーフでも活動してもらいます。
江川 ここまで全学年の子どもたちを動かす仕組みというのは全国的にも珍しいと思います。ただ、その実現のためには、同規模の学校よりも、教員をはじめ、たくさんの人員を配置することになります。つまり、通常の学校よりも、お金も人も必要になるということです。
――そのために何か取り組もうと思っていることはありますか。
田中 民間企業などへの協力をお願いしたいです。保護者からの学費と北海道からの補助金などで、学校運営がまかなえるかというと、現実問題として、厳しさもあります。
ですから、企業の方々にもいろいろと支援してもらえるとありがたいです。そう呼びかけていきたいです。資金面だけではなく、どの分野でも構いません。たとえば、人材の派遣などもそうです。
協力していただいた企業には、何か“恩返し”できるプログラムなども考えています。企業側にとって、社会・地域貢献活動や社員教育の一環として活用してもらえるようになっていきたいですね。
江川 田中学園は地方自治体との連携も模索しています。これもなかなか他の学校にはない取り組みだと思います。
田中 どうしても実現したいことの一つです。たとえば、札幌圏の子どもたちと地方の子どもたちにはそれぞれの良さがあって、競争したり、お互いに何かを発表し合う環境があってもいいのではないかと考えています。
そのため、地方自治体と連携し、その地元の小学校との交流などを計画しています。もうすぐ発表できる時期がくるかもしれません。
――教育現場というのは、“聖域”というか、そういうイメージがあるため、なかなか外部から入っていきづらい環境にあるのではないでしょうか。
江川 確かにそうだと思います。教育の世界は“敷居が高い”かもしれません。ただ、何のしがらみもない賢介さんなら、北海道の教育に一石を投じられる存在になりうると感じています。
田中 田中学園の前提にあるのは北海道の教育を支え、貢献していくこと。当学校を通じて、北海道の教育のあらたな価値観を提案できればとも考えています。まずは企業、自治体が参加できる仕組みをつくっていければと思っています。
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