衆院道2区補選“第1ラウンド”は松木謙公圧勝、次期総選挙で自民候補は誰に?
「みなさんのおかげです。本当に。幅広く応援をいただきました」
4月25日投開票の衆議院北海道2区補欠選挙で、立憲民主党公認の元衆院議員・松木謙公氏が5期目の当選を果たした。
投票締め切りの20時ちょうど、いわゆる“ゼロ打ち”で当選確実の一報を受け、松木氏は札幌市北区の立憲民主党道2区総支部に置かれた会見場に到着。自身の選対幹部とともに万歳三唱ののち、3年半ぶりの返り咲きを果たしたことについて、冒頭のように感謝した。
告示日前日の4月12日現在、北区の大部分と東区の道2区内に有権者は45万9958人。今回、補選で投じられた票の総数は14万88票、このうち無効票を除く有効投票数は13万6398票で、投票率は30・46%。これは衆院の補選としては過去2番目の低さで、前回17年衆院選の57・12%と比較しても26・66ポイント下がった。
その上で、以下は立候補した6人を得票順に並べた。また得票総数に対する得票率も算出した。
与党の自民・公明が候補擁立を見送った一方、立民公認、共産党北海道委員会・国民民主党・社民党がそれぞれ推薦した野党統一候補として、ライバル不在の選挙に臨んだ松木氏。だが得票総数に占める割合(得票率)は43・74%と、目標の5割には届かなかった。立憲・共産支持層を手堅くまとめたが、期待された保守層の取り込みは思うように進まず、無党派層への浸透も道半ばに終わった。
このため、秋までに必ずある衆院選“本選”に向けて、陣営は楽観視していないどころか、危機感すら抱く。
その理由の一つが、松木氏本人の“甘さ”だ。たとえば選挙中、街頭演説で消費税率の引き下げなど、立民内部や野党間の政策合意が不十分な“言ってはいけない”事柄に触れてしまうひと幕があった。
「余計なことを言ってしまう軽さがある。こういうことを続けると、取れる票を落とすことにもなるし、陣営が引き締まらない。貪欲に票を稼ぐ姿勢がまったく足りない」と選対関係者は苦言を呈する。
もう一つの危機感は、無所属ながら2万7355票を得た鶴羽佳子氏の動向だ。
鶴羽氏は兼ねて、自身の政策は自民に近いとして、今回の結果いかんを問わず、次期総選挙では2区の自民候補者を選ぶ公募に応じる姿勢を示していた。
そのため、鶴羽氏陣営や自民関係者の中では、戦前から野党統一候補として圧勝での当選が予想されていた松木氏の票に、どれだけ迫れるかが注目されていた。
党の支援を得ない無所属、つまりほぼ個人・支援者のつながりから得た票だけで一定の得票があれば、来る自民道連による候補者選考の際、優位に働くのではないか、という皮算用があるからだ。
そうした鶴羽氏について、松木氏の選挙にかかわる労組関係者も「自民・公明支持層に加えて、女性候補に流れる浮動票・無党派の票は侮れない」と警戒。収賄罪で在宅起訴、辞職した2区前職の元衆院議員・吉川貴盛氏とは「違った票の出方になる」と見ている。
さて、その自民道連だが、現在発売中の月刊財界さっぽろ2021年5月号でも既報の通り、総選挙に向かう体制づくりのイロハの“イ”、道連会長人事の混迷が未だ続いている。
道内選出の衆参両院議員11人のうち、道7区選出衆院議員・伊東良孝氏を推す6人のグループと、参院議員道選挙区選出の高橋はるみ氏らでまとまる5人のグループとの対立は深まるばかりだ。
「別にいま、道連会長がいないからといって困っていることなどない。6月の道連の定期大会までに決まっていればいいので、多数決ではなく公平な議論の上で決めてほしい」と中堅の道議会議員は突き放す。
会長人事が決まれば、そこから会長代行をはじめ道連内の組閣、そして次期総選挙に向けた選対本部の役員人事など組織づくりがおこなわれる。2区の次期候補もその下に選考委員会が置かれ、その上で公募がおこなわれる見込みだが、こと候補者選びに関して、自民のおこなう“公募”の意味合いはその時々で変わっていく。
そもそも、2区補選の不戦敗を決めたのは、党本部、もっといえば吉川氏や首相の菅義偉氏と当選同期の党選対委員長・山口泰明氏の意向だ。
当サイトでも報じた通り、吉川氏が辞任した後、自民の補選候補は道連による公募だったものが、自民道2区支部の要請で2区内の意向優先に変更。その上で、2区支部は北区選出札幌市議の高橋克朋氏に補選出馬を要請した。
山口氏が不戦敗を表明したのと同じ日、高橋氏は当時道連会長だった橋本聖子氏と面会。その席で、橋本氏に出馬の意向を伝える予定だった、とされる。
2区内の道議・市議が合意のもとで推した候補を、党本部が強引に覆したという事実は、2区内の自民支持者の中に大きな“わだかまり”として残っているのだ。
「どこで支持者に会っても『何で不戦敗なんだ』というお叱りを受けるところから始まる。こちらが聞きたいくらいだ」(2区内の市議)
故に、選考委員会、公募ということは決まっていても、公募の仕方、選考委員の選び方、といった細部はすべて会長以下、6月に自民道連の新執行部が決まってからということになる。
今回の補選で1万5738票を得た自民党員・弁護士の長友隆典氏も含め、補選の得票数が2区の候補者選考に何かの影響を与えるかといえば、何もまだ決まっていないのだ。
5月15日発売の財界さっぽろ2021年6月号では、圧勝したとはいえ次期衆院選に向けては引き締めが必要な松木氏陣営の動向、巻き返しを図る自民の水面下での動きをさらに報じる予定だ。
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