【今月号特選記事】新型コロナ「ススキノ・夜の街」報道を続ける道内マスコミの理屈【回答全文掲載】
北海道内のマスコミが、ススキノの接待をともなう飲食店などの利用者を「夜の街」関連として報じたのは、7月15日にキャバクラで初めてクラスターが発生した時からだ。
東京都内の繁華街で先行して感染者数が増加していたこと、来店者の特定が難しく濃厚接触の特定ができないといった理由から、市や道が最大限に警戒を呼びかけたことから、マスコミも注意喚起に協力。その後も感染者が目立ったため、ススキノ関連のみ“内訳”報道をおこなっていたもの。
だが、道や市の経済対策やGo Toキャンペーンに代表されるように、近ごろは感染予防対策と経済活動の両立をどのように進めていくかが官民、国内外問わず議論されるようになってきた。
とくに北海道は独自の緊急事態宣言を全国に先駆けて出していたことから、飲食店をはじめ客足の途絶えた時期が国内のほかの地域よりも長く、ススキノは閑古鳥が鳴き続けており、経営者の体力も限界が近い。ススキノ観光協会によれば、すでに300軒以上が閉店を余儀なくされたという。
「報道で言うススキノとはどの地区のことを指しているのか。それと〝接待をともなう店〟とはどういう定義なのか。定義は正確に、明確にしてもらいたい。こんないい加減な報道を続けられたら、さらに大変なことになる」
全国に先駆けて感染症対策のガイドラインを設定、マニュアルの配布をおこなってきたススキノだが、年末の繁忙期を控え、報道に対する関係者の怒りは爆発寸前。そこで本誌は、北海道新聞社、NHK札幌放送局、STV札幌テレビ放送、HTB北海道テレビ放送、HBC北海道放送、UHB北海道文化放送、TVhテレビ北海道の道内マスコミ7社に、以下の通り質問書を送付した。
以下に回答の全文を掲載する(STVは回答拒否、UHBは10月15日現在未回答)。 なお、回答内のクラスター発生数や感染者数は本誌11月号締め切り現在のものだ。
●本誌編集部から送付した質問内容(2020/9/28付け)
(1)新型コロナウイルス感染症にかかる貴社の報道について伺います。毎日札幌市から新型コロナウイルス感染症の陽性患者について発表がありますが、この際「夜の街」関連、つまりススキノ地区で感染したと思われる者を内訳として別に発表しています。当社の聞くところによれば、報道側からの要請であると聞いていますが、これについて以下質問いたします。
ア 「夜の街」関連で陽性と分かった者をその日の陽性者全体と別に報じるのはどのような意図からですか。
イ 別に報じるようになったのはいつからですか。
ウ 貴社として札幌市へ夜の街関連の陽性者の内訳を明かすよう要望されましたか。
エ ススキノの接待をともなう店で最初のクラスター発生がPCR検査によって確認されたのは7月中旬ですが、内訳についての報道はいつまで続けるか検討されたことはありますか。
(2)1に関連して、上記内訳の報道は、ススキノ地区で感染症対策を取りながら営業をしている店に対し、コロナ禍で落ち込んだ客足の回復を阻害する風評被害や嫌がらせであるという指摘が同地区の飲食店関係者や市民から上がっています。そうした指摘についてどのように考えますか。
●北海道新聞社経営管理局法務・広報グループの回答(2020/9/30付け)
(1)―ア
ススキノでは7月15日にキャバクラ店の従業員と客計12人によるクラスターが発生しました。鈴木直道知事と秋元克広札幌市長は16日に緊急会談を行い、道と市は合同の感染症対策チームを設置しました。市はススキノに臨時のPCR検査センターを開設し、飲食店に支援金も支出しました。
また、市は15日から、このキャバクラに限らず、ススキノ地区の店舗を訪れたことがある不安のある人にPCR検査を受けさせるため、客に名乗り出るよう求めていました。道や市はススキノで重点的に感染予防対策を行ってきており、ススキノの感染状況を詳しく報じる必要があると考えています。
(1)―イ
ススキノのキャバクラでクラスターが発生したのは7月15日です。このキャバクラに限った感染者数の動向については、16日付の朝刊以降掲載しております。「ススキノの接待を伴う飲食店で感染者が出た店舗数と感染者数」を掲載したのは7月22日付朝刊からです。
(1)―ウ
要望していません。7月21日に市保健所が行った記者会見で、報道機関がススキノの夜の街関連の感染者数について質問し、市保健所が答えました。
(1)―エ
ススキノでの感染はいまだ続いている状況です。いつまで続けるか、現時点では決めていません。(2)
ススキノの接待を伴う飲食店の感染者数動向を報じる目的は(1)のアでお答えした通りです。
弊紙では、ススキノで感染予防に取り組む飲食店を紹介する記事や、風評被害について取り上げた記事を複数回掲載して啓発に努めており、報道がススキノの風評被害や嫌がらせであるとの指摘は当たらないと考えています。
ススキノではこれまで7つのクラスターが発生しており、9月以降だけでも4カ所に上ります。現時点でもススキノで感染が収束したと言える状況ではなく、引き続きススキノの感染状況を報道していく必要があると考えます。
●HTB報道情報局報道部の回答(2020/10/1付け)
(1)―ア
7月15日に札幌市からススキノ地区での集団感染を発表して報じて以来、数字の推移を視聴者に伝えるために報じています。基本的には会見での情報をもとにしています。
(1)―イ
上記の通り7月15日からです。
(1)―ウ
内訳の発表につきましては、日々の会見や個別取材で各社から相次いで質問をうける状況を考慮して発表するようになったと捉えています。弊社は会見や個別取材で各社と同じように質問はしておりますが、ご質問の趣旨のような要望はしておりません。
(1)―エ
感染者の報じ方・表現、内訳については、その時その時の発表状況に応じて検討しておりますので、あらかじめ「いつまで」と期間を区切って検討はしておりません。
(2)
新型コロナウイルス感染症の差別・偏見問題に関しては、(主に医療関係者について書かれていますが)今年5月に民放連と新聞協会で共同声明(参考リンク)を発表しています。この考えに基づき、弊社においても感染者に関する公表や報道のあり方については、社会にとって有用な情報を提供するという観点で日々、部内で協議しながら報じております。
●HBC北海道放送広報CSR部の回答(2020/9/30付け)
(1)―ア
基本的にコロナウイルスの新規感染者数と死者数を毎日お伝えしています。これ以外の情報としてはクラスターが発生した場所や状況など、視聴者に伝えるべきトピックスがあれば、その都度優先度を判断して放送しています。その情報が「夜の街」のクラスターに関連することもあれば、別の情報の場合もあります。
(1)―イ
「夜の街」関連のクラスターが拡大した7月中旬からです。
(1)―ウ
「夜の街」に限らずコロナウイルスの感染や拡大に関する詳細な情報提供を常に要望しています。
(1)―エ
(ア)で回答した通り、「夜の街」の内訳を継続的に放送している状況ではありません。
(2)
感染状況を正確にお伝えすることが視聴者全体の利益だと考えています。
●NHK札幌放送局の回答(2020/10/2付け)
ご質問にあるような要望の事実はありません。
新型コロナウイルスについては、取材や放送によって、差別や風評被害が助長されることのないよう、十分、留意した上で、札幌市の発表に基づいて感染状況などをお伝えしています。
※個別の質問に対する回答はなし
●TVh報道部の回答(2020/9/30付け)
ススキノ地区での接待を伴う店で新型コロナウイルスの最初のクラスターが7月中旬に発生して以来、同地区のいわゆる「夜の街」関連の感染はこれまでに100人を大きく超え、一つのエリアの発生状況としては多いと言わざるを得ません。
感染予防を呼びかけなければ、さらに感染が拡大してしまう恐れがあると、当社は考えており、ススキノの「夜の街」関連の感染者数は継続して道民に伝えていく所存です。
※個別の質問に対する回答はなし
●STV報道部の回答(2020/10/1付け)
お問い合わせの件ですが編集権に関わるご質問には、回答を控えさせていただきます。何卒ご理解の程お願いいたします。
※質問への回答は一切なし
ススキノ観光協会大島昌充会長のコメントなど、本記事の詳細は2020年11月号に掲載している。
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