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北海道文教大学

渡部 俊弘 学長
(わたなべ・としひろ)1952年日高管内門別町(現日高町)生まれ。77年東京農業大学農学部卒業。79年同大大学院修士課程修了。北海道栄養短期大学助手、講師を経て89年東京農業大学生物産業学部食品科学科講師、2000年同大教授に就任。東京農大バイオインダストリー社長などを経て14年同大副学長に就任。18年北海道文教大学学長に就任。博士(農芸化学)。

大学内外の体験を通じて五感で学び、人間力を鍛える

――今年度から地域未来学科が開設されましたね。

渡部 滑り出しは順調ですが、18歳の学生には地域創生が響かない部分もあるので、今後は実習を増やすなど、より実力を伸ばせるよう体系を充実させる計画です。

――「就職の文教」と称されるほど就職率の高さが知られています。実績を教えてください。

渡部 2023年度は卒業生416人に対して就職者数が389人。実就職率は94・2%で「実就職率ランキング」(大学通信)では道内大学で1位になりました。

――要因をどう捉えていますか。

渡部 もちろん1つだけではありませんが、資格試験の合格率が良いことと、キャリアデザインなど働くための意識づけを丁寧に行っています。これが高い評価につながっていると感じています。

また自治体や企業、医療機関との連携協定も進んでおり、学生たちはボランティアなどにも積極的に取り組んでいます。昨年度は、不登校児の小中学生を支援する恵庭市教育委員会の教育支援センター「学びの森」が本学内に設置されました。これも恵庭市との連携協定によるもので、子どもたちの学習の支援を学生たちが行っています。「エスコンフィールド北海道」(北広島市)では、本学の学生が考案した「韓国風チキンワッフル」がエスコングルメの新定番となりました。この取り組みも日本ハムさんとの協業によって行われたもの。学外での取り組みによって、人間力が磨かれていることも要因の一つだと考えています。

――授業だけではなく、さまざまな体験ができるようですね。

渡部 デジタル化が急速に進んでおり、チャットGPTや生成AIなどへの対応も積極的に行っています。やはり人間力を磨くには「五感で学ぶ」ことが重要だと思いますね。デジタル化が進んで転機を迎えていると言われていますが、人間味が失われてしまってはいけない。〝古き良き教育〟と現代の教育の良いところを上手く取り入れて、対比しながらレベルアップしていく教育方法を考えていきます。

――連携協定先も増加していると聞きました。

渡部 連携協定の数は88にまで増えています。中には奨学金の提供によって、一緒に地域で活躍する人材を育成していくという取り組みに発展しているケースもあります。大学内だけではできない体験が充実しており、人間性が大きくなるのではと感じています。

――部活動はいかがでしょうか。

渡部 例年通り注力しています。野球部では、野球用室内施設としては国内最大級のスポーツアリーナも設置しました。さらにスリランカの野球連盟と連携し、短期実習などの活動が始まっていきます。

また、先日開催された女子アイスホッケーの世界選手権には、現役・卒業生合わせて3人が日本代表選手として出場しています。とても誇らしいことです。アイスホッケーでも同様に、海外の大学との連携を模索しています。

――今の時代、大学として求められるものとはなんでしょうか。

渡部 コロナ禍によって狭い範囲の社会で育った学生も多く、人とのつながりを積極的に作っていける人材が必要とされると思っています。そのきっかけとなるのはコミュニケーションと対話です。大学のように常に人に囲まれて生活していると、自分を大切にする一方、自然に相手を気遣うこともできるようになります。

ただし大学の役割は「対話しなさい」と強制することではなく、その場所や話題を提供することです。今はグループで取り組む学習形態を増やしたり、課外活動を強化しています。そのほか、敷地内にベンチを増設したり、無料で飲めるコーヒーを設置するといった取り組みも行っています。

――今後の取り組みについて教えてください。

渡部 起業家を育成するためのビジネス系学部の新設を構想しています。食マネジメントや国際ビジネスなどが分野になる。健康や食などの分野で、人々が幸せになるためのサポートをする人材を育成したいと考えています。

JR恵庭駅から徒歩8分とアクセスも良好だ
23年には野球部のスポーツアリーナが完成。国内屈指の広さを誇る