【今月号特選記事】オーナー会社が詐欺の舞台になった東国幹・自民党衆院議員
「私はどうしたらいいのでしょうか」
男性は何度も、何度も、つぶやいた。
記者がある事実を告げた後だった。
男性は7月下旬、家賃支援給付金の詐欺事件の関係で道警から任意聴取を受けた。
男性は言う。
「私は10件ぐらい家賃支援給付金の申請手続きにかかわり、中には怪しいなと感じたものあった。“本物”が半分ぐらいという印象です」
メディアの間には「9月中に事件が弾ける」との見方がある一方、「ターゲットの1人が病気のため立件が遅れる」との情報も流れている。
自分も逮捕されるのか――不安にさいなまれつつ、男性はさる人物の力を借りた。ところが、その人物の裏切りを記者から知らされ、男性は激しく動揺したのだった。
悪用された家賃支援給付金は、コロナ禍で売り上げが大幅に減少した中小企業や個人事業主が対象。2020年7月14日~21年2月15日まで申請を受け付けていた。地代や家賃の負担を軽減し、事業の継続を支援するのが狙い。
ところが、他のコロナ関連の給付金制度と同様に不正が横行。道警がどこまで時間と人手をかけるかによるが、今回の事件だけでも不正総額は2億円近くに及ぶとささやかれる。
前述の男性以外に複数の人物が、道警から任意聴取を受けた。末端まで含めると、関係者はかなり多くなりそうだ。
札幌市内で不動産業S社を営むK氏も道警のターゲットになっており、何回も任意で事情を聞かれている。
「Kさん絡みの不正受給は10件以上あると思います。私もKさんから誘われたが、よく分からなかったので断った」(K氏の知人)
このK氏が自民党の衆院議員・東国幹氏と接点を持つ。K氏は、東氏が100%オーナーのX建設(札幌市白石区)で一時、代表取締役を務め、まさにその時、X建設も不正に給付金を受給していたのだ(8月に返還)
X建設が給付金を申請したのは21年1月27日、翌2月2日には600万円が入金された。登記には、K氏は21年1月25日から同年3月31日まで代表取締役とある。K氏の辞任後は東氏が代表取締役に就いた。
手口は以下の通り。K氏は余市郡仁木町に山林を所有している。その土地をX建設が残土置き場として借りていることにし、地代の軽減として給付金をせしめた。
家賃支援給付金を得るには賃貸契約書などの関連書類が必要になる。しかし、X建設の申請では、土地の貸し借りの実態がないのだから当然、すべての書類が偽造された。
東氏は代理人弁護士を通じて不正への関与を否定。
周囲には、申請関連の書類には別の会社の代表印が押されている、と説明している。
こうした説明は部分的には正しい。給付金申請に必要な賃貸借契約書の借り主欄には、X建設と無関係な会社の代表印が捺印されていた。ただ、その他の関連書類にはすべてX建設の代表印が押されている。
X建設ではベテラン経理のN氏が代表印を管理し、誰でも持ち出せるものではない。普通に考えるなら、当時の代表取締役K氏が申請書類に捺印したように思える。
しかし、前出のK氏の知人の見方は異なる。
「実は私がKさんをオーナーの東さんに紹介した。Kさんは名義上の代表取締役のような存在で、会社に1、2回しか顔を出したことがないと聞いていました。東さんの了解なしに、Kさんが代表印を使えたとは思えません」
K氏を知る別の人物が明かすエピソードも興味深い。
「Kさんは無報酬の取締役でした。だから交通費ぐらい出してほしい、と田口さんにお願いしていたこともありました。経理に自分が言っても出してもらえないからでしょう。Kさんの判断では、あの会社のお金を1円も動かせなかったと思います」
「田口さん」とは東氏の秘書・田口貴光氏。給付金申請が行われた当時はX建設の取締役で、7月末からは代表取締役を務めている。
2つの証言が事実なら、K氏は単なる形だけの雇われボスに過ぎない。K氏が独断で給付金申請の関連書類に、代表印を押すことができたのだろうか。
また、入手したX建設の決算報告書には、給付金の根拠となった架空の賃貸契約による賃借料237万6000円が、「販売費及び一般管理」の所に計上されている。雑収入欄には「家賃支援給付金600万円」の記載もある。
つまり会社として正式に処理していた。オーナーの東氏及び常勤の取締役だった田口氏が、給付金の申請自体を全く知らなかったのだろうか。
好評発売中の月刊財界さっぽろ2022年10月号では疑惑に関してさらに本誌記者が踏み込んでいる。
財界さっぽろ10月号は全国の書店店頭で取り寄せ可能なほか、当社オンラインショップからも購入できる。お買い求めは以下のリンクからどうぞ。
→Webでの購入はコチラ
→デジタル版の購入はコチラ