3期連続トップ当選、票は2番手の2倍強、得票率11%超…北見市の40代市議(森谷隆文氏)が圧勝のワケ

 定数26に対して現職22人、新人9人が出馬した北見市議会議員選挙は、3月27日に投開票が行われ現職20人、新人6人が当選。投票率は4年前の前回選挙より1.76ポイント低い48.86%だった。

 人口11万4041人(2022年2月28日現在)の北見市は投票日時点の有権者総数9万8166人。うち投票総数4万7964票、有効投票総数4万7410票となったが、このうち5273票、得票率にして11%以上という圧倒的な支持を集めたのが、3期連続のトップ当選を果たした無所属の森谷隆文氏だ。

 森谷氏は地元出身の46歳。北見北斗高校から北海学園大学を卒業し、民間企業勤めや衆院議員秘書を経て14年同市議選に出馬、3239票を獲得しトップ当選を果たした。

 再選を目指した18年市議選ではそこからさらに6割以上票を伸ばして5153票を獲得。2番手候補を2700票あまり上回るダブルスコアを記録していた。今回はそこからわずかながら票を伸ばしての3期連続当選。それもこの4年で人口減から有権者総数が3000人以上も減る中でのことだ。

 北海道選挙管理委員会は得票率の記録は把握していないとしているが、本誌の調べる限り、人口10万人以上の道内拠点都市では、近年最高の得票率と見られる。

「あまりに票を取るものだから、下位当選は票数のハードルが下がり、感謝する議員もいた」(議会関係者)とまで言われる状況だが、森谷氏自身は「皆様のお支えや温かいお言葉により、何とか気持ちを立て直し、今回の結果を残すことができました」と謙虚だ。

 地元の名門・北見北斗OBを中心とした若年層の掘り起こしが森谷氏の基本戦術。高齢候補が多い市議選にあって唯一の40代候補であることも手伝い、若者の票が集まりやすいという背景はある。

 ただし、森谷氏を知る地元関係者は「合併で東西に100キロもある広大なまちとなった北見だが、旧3町出身者以外の大半は旧市街にしか足が向かない。その中で森谷氏だけは日ごろから3町にもしっかり足を伸ばしている。ラグビー部で鍛えた運動量が何よりの武器」と明かす。

最少人数での選挙活動を実施(森谷氏のFacebookより) ©財界さっぽろ

 今回は新型コロナウイルス禍が続く中での選挙で「選挙期間以外の後援会活動はすべて自粛。告示日の3月20日日曜と翌21日月曜もまん延防止期間中だったために街頭での活動は一切行わず、ポスター貼りと後援者へのハガキ執筆だけ。遊説も最少人数にして、大半はウグイス嬢と私の2人で行いました」と森谷氏は話す。

 他候補が必死で選挙活動を行う中、ある意味“余裕”を感じる戦いぶりにも見えるが、森谷氏は「後援会長がコロナの感染外来を担当する医師ということもあり、コロナに対してはしっかり向き合う必要がありました」と率直に語る。

 地元経済界首脳は「自ら資料を持参して、コロナ禍で苦しむ民間事業者を回っていた。もらえると思っていなかった事業者も随分いたようで、助かったところは多かっただろう。日ごろの活動がダイレクトに票と結びつく好例では」と分析している。

 政治家にとって選挙に強い、票が稼げるというのは最強のカード。3期連続トップ当選ともなるとさまざまな期待の声が出てくるのが政治の習いだ。直近では来年4月に統一地方選の北見市道議選、同9月には任期満了に伴う市長選が予定されている。これまでも各級選挙が近づくたび、水面下で名前が飛び交ってきただけに、今回の結果でその声がますます強まる可能性は高い。

 なお、4月15日発売の月刊財界さっぽろ5月号では、今回の市議選結果による北見政界の“地殻変動”についても掲載予定なので、こちらもお見逃しなく。