【田中賢介・まだ見ぬ小学校へ】札幌大学理事長・荒川裕生氏と語る(後編)
本誌連載「田中賢介 まだ見ぬ小学校へ」より、札幌大学理事長の荒川裕生氏を迎えての対談を前後編に分けて全文公開する。田中学園立命館慶祥小学校の校舎はもともと札幌大学の施設だった。この建物が縁で、両者は包括連携協定を締結。子どもたちと学生たちの交流をはじめとした小学校と大学の連携内容や地域との関係性などを語り合った。以下はその後編。
隣接する教育機関として連携効果を地域にも
アフターコロナへ学びの幅を広げる
――包括連携協定によって、田中学園の子どもたちと札幌大学の学生たちの交流事業を実施していきます。このほかの取り組みとして、想定していることは?
田中 校舎・施設の相互利用などができるのではないかと考えています。たとえば、小学校高学年になると、より難しい本が読みたくなります。札幌大学の図書館をお借りしたいですね。
荒川 本学では今年11月に新校舎が完成します。大・中教室からなる講義棟は対面授業と遠隔授業の両方に対応できるように整備しています。
コロナ禍によって、オンライン・オンデマンド授業が急速に普及しました。これはコロナが収束しても元に戻ることはなく、教育のあり方を変えていくと感じています。
新棟には、行事や演奏会などを実施できるホールも設置しますので、ぜひ田中学園の子どもたちにも使っていただきたいですね。
田中 反対に、札幌大学の学生たちにも、小学校に足を運んでもらえるような事業も実施していきたいですね。
荒川 教育現場では今、直接社会を知ることの重要性が高まっています。そういう意味では、今回の連携は学生たちにとって、実際に小学校の教育現場を知るきっかけにもなります。
本学には教職課程もありますので、身近に子どもたちと触れ合えることは、先生を目指す学生たちにとって、いい経験になるのではないでしょうか。
田中 札幌大学の学生たち、田中学園の子どもたちの学びの幅を広げていくという意味で、この2つの教育機関の連携は意義あることだと感じています。
荒川 コロナ禍の影響もあって、社会からは、AI教育やデータサイエンスに関する教育の充実が求められていて、本学でも来年度から新たなプログラムをスタートします。
一方で、AI時代においては、スポーツや文化・芸術などの人間の根源に関わる教育も再認識されていくと個人的に考えています。田中学園は教育の柱に「国際教育」「確かな学力」「スポーツ&アート」を掲げていると伺っていますので、方向は合っていると思います。
田中 そういった分野での連携にも取り組んでいけると感じています。
西岡のマチに教育の集積地を
――札幌市豊平区西岡に位置する札幌大学は地域貢献活動にも力を入れています。
荒川 本学は今年、創立54年目を迎えました。開学当初、校舎の周りは畑や森で、その後、マチができていったと聞いています。
マチの発展と共に本学も地域の活動に取り組んだり、応援するなどしてきました。例をあげると、商店街のイベントに参加したり、スポーツに取り組む子どもたちに対して、学生たちが指導したりしています。
この西岡の地域の方々にとって、札幌大学は親しみある場所になっていると感じており、今後は田中学園も地元の活動に参加していただけると思っています。田中理事長にも地域の輪に入っていただければ、地元の方々も喜ばれるでしょう。
田中 子どもたちと地域の方々が触れ合えるような企画も考えていきたいですね。
札幌大学との連携は同じ地域にあり、お互いの学校が近い場所にあるというところもポイントだと思っています。連携効果をこの西岡地区全体に波及させていきたいです。地域貢献はもちろん、将来、この地域を教育の集積地にできればいいですね。
――荒川理事長から見て、理事長・田中賢介はどのように映っていますか?
荒川 小学校開校にこぎつけられたスピード感は素晴らしいと思います。田中理事長が行動を起こすと多くの方々が応援してくれるのは、お人柄とともに、厳しいプロ野球の世界で、“実践”を通じて培ってこられた人間力があるからではないでしょうか。
田中 そう言っていただいて、ありがとうございます。
荒川理事長は、かつて副知事も務められ、これまで担ってきた責任の重さは計り知れません。私も田中学園の大きな決断をする際、荒川理事長なら、どうするかと考えることがあります。荒川理事長をはじめ、諸先輩方の存在は心強いです。
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