【今月号特選記事】寿都町核のゴミ騒動・片岡春雄町長vs鈴木直道知事“第1ラウンド”
札幌市から車で3時間。海と山に囲まれた寿都町は人口3000人の小さな町だ。古くはニシン漁で栄え、現在は漁業と水産加工業が主力となっている。
町のシンボルは海沿いにそびえ立つ風車群。同町のカントリーサインにも使用されている。
地元で「だし風」と呼ばれる局地的な強風を有効活用するため、1989年に全国の自治体で初めて風力発電施設を設置。現在は11基が稼働しており、クリーンエネルギーを生み出す環境に優しい町を目指してきた。
その状況が一変する出来事が起こった。8月13日付けの北海道新聞朝刊の一面で「核のごみ最終処分場 寿都町が調査応募検討」と大きく報じられた。
片岡春雄町長は「文献調査への協力による交付金を得られる。地震災害が頻発する中、地盤の安定性もわかる」などと、応募検討の理由を述べた。
町が推し進めるクリーンエネルギー事業とは相反する〝核のゴミ〟の受け入れ。
事前に何も説明されていなかった町民らは困惑。寿都町と関係する産業団体や周辺自治体からは反対の声が多数あがった。
鈴木直道北海道知事も核のゴミの道内持ち込みを〝受け入れがたい〟とする「核抜き条例」の遵守を求めた。
これに対して片岡町長は「町民の声は聞くが、知事の言うことを聞くつもりはない。私の考えを聞かず、一方的に批判されている」と徹底抗戦を表明した。
この2人の会談が実現したのは9月3日のこと。寿都町役場には道内メディアが大挙。会場内の様子は夕方の情報番組で生中継された。
本題を切り出したのは鈴木知事だ。
「町長の意向は報道で確認して理解しているが、道としては受け入れがたい。核抜き条例を遵守していただきたい」と申し入れた。
一方、片岡町長は「核のゴミは自国で処理するのが世界で定められたルール。このままないがしろにして判断を先延ばしにすれば、日本は世界中から笑いものにされる。そうなれば外交にも影響が出る。これは全国で協議すべき問題。パンドラの箱を開けるために一石を投じた」と反論した。
知事は原子力発電環境整備機構(NUMO)から入手した最終処分場選定プロセスに関する資料を手にしながら「3段階の調査(文献、概要、精密)でどこまで進むおつもりか」と質問。
すると、片岡町長は最終段階までに至る20年間を〝学校〟に例え「まずは小学校(文献調査)に入学して、核のゴミについて勉強しましょう。途中で町民が反対した場合、『中退してもいい』という書面を国からもらっている。しかし、はじめから中退するつもりでは奨学金(交付金)を出す国に対して失礼。最終的には町の未来を担う若者たちの判断だが、個人的には建設を決める最終段階の精密調査まで進むべきだと思っている」と胸の内を明かした。
この発言に知事は目を大きく見開き、驚きの表情を見せた。
「精密調査まで行きたいということであれば、やはり反対を申し上げる。まずは町民や周辺自治体などに丁寧なご説明と慎重な判断をお願いしたい」(鈴木知事)と終始、反対姿勢を崩さなかった。
約1時間の会談で双方の主張はかみ合わず。進展は何もなかった。その後の会見で片岡町長は「知事の頭から条例が離れていないなら相成れない」と直接対決の第2ラウンドを示唆した。
月刊財界さっぽろ2020年10月号では、このほか“片岡式ビジネス”を標榜、“稼ぐまち”を実践してきた片岡町長の功罪、人口3000人のまちにとっての交付金20億円の大きさを数字で示した検証記事など“核のゴミ”騒動に揺れる寿都についての特集記事を掲載している。
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