【今月号特選記事】キャバクラから拡大 クラスター発生で訪れた“二番底”
ススキノが静まりかえった休業要請期間が5月末で終わり、6月以降、街には徐々ににぎわいが戻ってきていた。多くの飲食店が前を向こうとした矢先、キャバクラでクラスターが発生。再び街は暗くなった。
7月15日から再び客足途絶える
すすきの観光協会によると、5月末までにススキノ地区全体の店の7%が閉店。8月末までに10%程度の店がなくなると推測されている。
それでも、休業要請が解かれた6月1日からは、徐々に街にはにぎわいが戻ってきていた。
ススキノのバー店主は「7月頭には久しぶりに顔を見る常連のお客さまもいて、その人は『いまの感染状況なら以前のペースでまた通える』とおっしゃっていました。底から脱出したと思ったのですが……」
7月15日、ススキノに激震が走った。この日、札幌市で感染が確認された13人のうち、11人がススキノの同じキャバクラ店の従業員と客だったことが判明した。
あるタクシードライバーは次のように嘆く。
「キャバクラのクラスターが判明する前の週末の人出は、コロナが拡大する前の街を思い出させるほどだった。それが15日を境に、今度は休業要請期間中と同じ状態に戻ってしまった」
ちなみに、ススキノと道外の歓楽街では、キャバクラの定義が違う。ススキノのキャバクラはお触りありの店を指すが、道外ではそれを「セクキャバ」や「おっパブ」と呼ぶ。道外のキャバクラは、ススキノで言うニュークラを意味する。
クラスターが発生した店は、1人目の感染発覚後も営業を続けていた。そのため、同業者からも「悪質だ。体調が悪い人を店で働かせていたのだから。接客業なのだから、ちゃんと考えてほしかった」と批判の声があがっている。
7月15日以降、ススキノでの感染は拡大。9月4日時点で40店舗、74人の感染が判明している。
市はススキノに臨時のPCRセンターを設置。さらに出前型の検査も実施している。すすきの観光協会は抗体検査キットを販売。精度は100%ではないため、これを使って陽性が出た人にはPCR検査の受診を勧めている。
すでに抗体検査キットは3000セット売れているという。ススキノには飲食店が3800店舗あるといわれているから、かなり多くの店が従業員に検査をおこなっていることがわかる。
また、道は対策を講じている店に専用のステッカーやポスターを配布。積極的な防止策をおこなっている店については、希望があれば「優良事例」として店名も公表する。
だが行政と飲食店が協力し合って新型コロナに立ち向かう形が構築されようとしていた矢先、両者の信頼関係が大きく揺らいだ。
その原因となったのは、市保健所が内部文書として作成した“感染店リスト”の流出だ。
3段階の注意レベルごとに店名が並んでいる文書で、「利用客および従業員から陽性者が発生した店舗」をレベル3、「従業員から陽性者発生/陽性者が利用した接触が多い店舗類型/複数グループの利用客から陽性者が発生」をレベル2、「従業員から陽性者が発生した店舗の系列/陽性者が利用した店舗」をレベル1に振り分け掲載。
店側が非公表を望んでいるのにもかかわらず、店名リストがネット上に流出したこと自体が問題だが、さらに油を注いだのが、注意レベルをハートマークの数で表現していたことだった。
ススキノの飲食店経営者は「市と店側の信頼関係は、このハートマークが一瞬にして破壊した」と憤る。
8月14日発売の月刊財界さっぽろ9月号でもさらに詳報している。
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