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今振り返る、私の思い出紀行 第十二回【ティ・エム(復元死化粧師)田村麻由美氏】

台湾・台中市にある葬儀会社のスタッフら一緒に記念撮影。左は台中の観光スポットの「九份」。

復元の先進技術を学んだ台湾への研修の旅

 私は現在葬祭業を営んでいますが、ご遺体を修復し、最後のお別れの場に穏やかな姿で戻して差し上げる「復元死化粧師」でもあります。以前勤めていた葬儀会社から独立し、今年で11年目になります。

 この復元師という仕事は、その都度同じということがないだけに、日頃の技術的な研究・工夫はもとより、ストレスやプレッシャー、厳しさなどが伴います。

 今は札幌圏を中心に働いていますが、道内はもとより全国各地、海外からも声がかかることがあるので、私にとってはその時の移動が「旅」になるでしょうか。

 最近で印象深いのが昨年の秋に訪れた台湾の旅です。台中市にある葬儀会社「巖華生命禮御」から発注された復元の仕事で、横浜にいる私の師匠らと3人で研修も兼ねて行きました。

 正直なところ、台湾に行く前は日本が復元の技術では世界でもトップクラスだろうと確信していたのですが、現地に行ってびっくり。台湾の復元師は我々より遥か遠くのレベルに達していて、こちらが恥ずかしくなるほどの衝撃を受けました。

 日本の葬儀は、通夜、告別式と、慌ただしく行われますが、台湾はご遺体の修復にかなりの時間と費用をかけます。修復するまでの間は冷凍保存するのですが、大きな事故などで手脚がない場合でも、故人をより生前に近い形に戻して差し上げるのです。使用する道具や材料はもとより、技術力も素晴らしいものでした。

 葬儀に関しても、会場できらびやかな洋服を着た女性たちの楽団が演奏しながら練り歩いて施行されるなど、日本のように厳粛な雰囲気で故人を送るようなことはしません。国民性や慣習の違いがあるのでしょうが、その違いに驚きました。

 台中市は台湾では人口第2位、280万人を数える大都市です。高雄から電車で1時間ほどで、近郊には「高美湿地」などの景勝地があって観光客も多いです。

 また、さまざまな食の店と大勢の客が集中する夜市のにぎわいも大変なものです。現地のスタッフの方々には空いている日程の中で、いろいろと連れて行っていただきました。

 一人暮らしになった母とは、東北から沖縄までこれまでずいぶんと旅をしました。旅をしながらでも高齢化に伴うさまざまな課題や一人ひとりが異なるお別れの様子を考えたりして、その土地にある用具や材料、資料などにもできるだけ目を通すようにしてきました。

 また、亡くなられた人が生活されていた地域の歴史や文化なども、復元師の技術習得・向上には欠かせません。より幅広い知識や情報を普段から学ばなければならないのです。

 その意味では、いつも参加している財界さっぽろさんの「史跡巡りバスツアー」は、私に新しい発見をさせてくれて感謝しております。

ティ・エム(復元死化粧師)田村麻由美氏