札幌学院大学
地域をキャンパスとして社会課題を解決できる人を育てる
――2キャンパス体制に移行して3年が経過しました。
河西 江別キャンパスに加え2021年4月に新札幌キャンパスを開設して経済経営学部を新設しました。22年4月には心理学部も移設しています。今後は各キャンパスの教育研究資源を生かした教育改革を進めて行きます。また、コロナ禍で控えていたグローバル教育の活性化にも力を入れており、新たな留学先としてオーストラリアのサザンクロス大学との協定に向けた準備を進めています。
――就職状況や国家資格試験は。
河西 就職希望者688人に対して就職決定者は631人。就職内定率は91・7%です。売り手市場ということもあって前年度よりも上昇しています。実就職率は、卒業者が766人ですから82・4%となります。
今の若い世代は人との関わりが苦手な人が多く、就職活動ためのコミュニケーション力開発プログラムを用意しています。発達障がいのある学生の就業支援も求められていますが、本学は全国組織の「障害学生修学支援ネットワーク」の道内唯一の拠点校でもあり、きめ細やかなサポートを行っています。
資格では、近年は正規のカリキュラム以外に講座を開講して受験指導にも力を入れてきました。その結果、教員採用試験の現役合格者数は過去最高の27人で既卒者も含めると34人となります。また社会福祉士と精神保健福祉士については全国平均程度の合格率ですが、合格者数・合格率ともに上昇傾向にあります。公認心理師の現役合格者は7人で道内私立大学、大学院の中で2番目の多さです。
――今年度の入試状況は。
河西 新さっぽろキャンパスの経済経営学部と心理学部は定員以上の入学者を確保しました。一方、江別キャンパスの人文学部と法学部は入学者が減少しましたが、これらの学問領域は全国的に学生獲得に苦戦する状況にあります。その背景には好景気による公務員志望者の減少、教職課程の不人気、女性のキャリア志向などがあり、本学も強い危機感を持っています。社会のニーズに応じた選ばれる教育を提供しなければなりません。そのための教育改革が喫緊の課題であり、この間、教員に対して学科ごとの収支状況を開示するなどして改革への意識付けを行っています
なお、定員未充足が続いている大学院地域社会マネジメント研究科は学生募集を停止し、これに代わって立地の良い新札幌キャンパスでの社会教育プログラム「札幌学院大学コミニュティカレッジ」において、社会人向けの職業能力開発(リスキリング)を拡充する予定です。
――進化する教育とは。
河西 札幌学院大学の目的は「北海道の産業の発展及び北海道の社会文化並びに道民の福祉の向上に貢献し得る人材を育成すること」です。そのため本学では、講義や演習を展開する江別キャンパスと新札幌キャンパスに加え、地域社会を第3のキャンパスと捉えた「地域丸ごとキャンパス」というコンセプトで大学教育の進化と深化に取り組んでいます。学生が大学で学んだことを地域社会の課題解決に応用する教育です。
――具体的には。
河西 学生が地域のお祭りをサポートする取り組みなどです。大学で学んだプロジェクトマネジメントやイベントマネジメントの知識を実践の場で使い、問題の解決に取り組みます。恩恵を受けた高齢者たちから感謝され、それにより学生の学習への意欲も高まります。
これを推進するため、地域社会を構成するさまざまな組織や機関と連携しています。学長に就任して以来、フィリップス・ジャパン、日本政策金融公庫、北海道中小企業総合支援センター、木古内町役場、IKEUCHIグループ、大和リース、北空知信用金庫と包括連携協定を締結しました。
今年度からは、新さっぽろ駅周辺の再開発を行った大和ハウス工業、大和リース、札幌市と連携し、教育の一環として学生たちが住みやすく魅力あふれる新たなまちづくりに関与しています。先日は札幌市役所から職員を招き、まちづくりに関する講義を行いました。
――どのような人材を育てたいと考えていますか。
河西 地域社会、国際社会で生きる人は多様で複雑な課題を抱えています。それを解決できる知識を持ち、柔軟に行動し、目的を達成できる人材が必要です。具体的には情報を収集、分析して課題を抽出し、計画を立て実行に移し、結果の検証までの過程を的確にマネジメントできる総合的な能力を備えた〝人財〟を育んでいきたいと考えます。
――目指す将来像は。
河西 ある学生が就職活動で東京の大手企業の集団面接を受けたとき「建設会社とモデルハウスをつくるプロジェクトに参加し、チームで動くことを学んだ」と話したら「君の大学はそんな教育をしているのか」と感心され、自信を得たとのこと。本学が目指していることは間違っていないと感じました。人づくりと地域貢献を両輪とした本学独自の教育として、今後も地域社会に積極的に出る課題解決型の学びに力を入れます。