札幌学院大学
実践的な学びで社会ニーズに応え、課題を解決する人材に
――貴学の考える人間力を高める教育について教えてください。
河西 内閣府は2003年に人間力の定義を「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定めています。06年には経済産業省でも「社会人基礎力」という類似した概念をつくりました。これはビジネスや地域貢献する人材を育成しようというものです。これらに対応すべく本学でもデータを理解し、方針を定め、意思決定できる教育を重視しています。昨年度からデータサイエンスをカリキュラムの中に組み込み、社会のニーズに応えています。
また、入学時には「なぜ大学で学ぶのか」という目的設定と動機付けを行います。そのうえで大学1年から基礎学力として日本語と数学、グローバル化の観点から英語、さらにICT、リーダーシップとフォロワーシップについて学習します。2年以降は「何を学ぶのか」の観点から、文系総合大学の幅広い知識を学び、その上で専門分野での理論を学習します。
3、4年ではその応用として資格取得を目指すほか、座学だけではなく、実際の社会課題を見つけて解決していく能力を身につけるため、PBL(プロジェクトベースドラーニング、プロブレムベースドラーニング)を取り入れています。これは、キャンパス外で行う実践的授業で、人間力を持った人材の要になっていくと考えています。
――具体的に教えてください。
河西 例えばHTB(北海道テレビ放送)と包括連携協定を結び、動画制作のスキルを学んで実際の企業のPRや、キャンパスのある新さっぽろの街を活性化するような情報を動画コンテンツにして発信します。また江別市が地方創生の一環で行う「ジモ×ガク」事業に参画して、近隣の自治体のイベントや条例を作るワークショップにも参加しています。
――今年度も地域と連携した学びを企画しています。
河西 5月27日にSDGsに関連する「第1回あつべつフェアトレードまつり」を北星学園大学の学生団体と本学学生団体が共同開催し、厚別区長も激励に来てくださいました。9月には新さっぽろで初となるコスプレイベントを学生が中心になって企画しています。大切にしているのはオープンエデュケーションという考え方です。社会のさまざまなリソースを使って教育プログラムを構築し、その成果を社会に還元するという試みを積極的にやっています。例えば「高齢化したボランティアを若い人たちに引き継ぎたい」と「YOSAKOIソーラン祭り」の「あつこい会場」運営委員会から相談が来ています。授業でイベントマーケティングの講義を行って学生から運営スタッフを募り、希望者を紹介しました。
――入試状況は。
河西 今年4月の入学者は767人で入学定員に対する充足率は99%でした。また大学全体の収容定員充足率でみると104%となっています。キャンパス別で見ると21年に開設した新札幌キャンパスの学部は好調ですが、立地の点で江別キャンパスの学部がやや苦戦しています。ただ、大学選びにおいては立地よりも「どんな教育でどういう将来が切り開けるか」という実績が重要と考えています。学部ごとの特色のアピールに注力しています。
――新札幌キャンパスの特徴を教えて下さい。
河西 新さっぽろには心理学部と経済経営学部があり、特に心理学部は「心理臨床センター」での実習や、新さっぽろのさまざまな医療機関と連携した実践的な学びが可能です。
また、国家資格である公認心理師の資格取得もサポートしており、大学院を含めて6年間で合格できるよう支援します。
――江別キャンパスの魅力を教えてください。
河西 江別キャンパスには人文学部と法学部を置いています。特に人文学部の人間科学科はソーシャルワーク、心理・教育、地域文化の3専攻制で、学びの幅が広いのが特徴です。地域文化専攻はいわゆる考古学です。本学は北海道博物館も近いほか、古くからこの分野に強く、オホーツクの置戸町と協定を結び遺跡の発掘実習などもあるのが魅力です。
また、人間科学科には特別支援学校教諭を養成する課程もあります。さらに日本学生支援機構から、障がい学生支援の拠点校にも指定されており、早くからバリアフリーが進んでいます。車椅子や聴覚障がいの学生が多いのも特徴です。
――就職については。
河西 今年3月の卒業者の就職内定率は91%でした。就職活動がオンラインから対面へシフトしたことで学生には戸惑いもあったものの、昨年と同水準でした。
今後も入学時からの人間力を高める教育をベースに「どんな組織で何をしたいのか」という学生のニーズと就職の満足度にこだわった支援を続けていきます。