アルファコートが設立20年 不動産開発で存在感 次なるステージへ
全15社で総合不動産業を展開するアルファコートグループの中核企業「アルファコート」(本社・札幌市)が、3月に設立20年を迎えた。一代で〝100億円企業〟へと成長させた創業者の川村裕二社長に、この20年の歩みや苦労、そして次なるステージに向けた展望を聞いた。
大家業で危機を回避家賃収入を事業の柱に
――事業内容は。
川村 総合不動産業のアルファコートを中核に全15社でグループを形成し、不動産開発や分譲・賃貸マンション、ホテル、店舗の企画、設計、施工、解体などグループで不動産に関わるすべてに対応しています。24年5月期のグループ連結決算では、売上高160億円、営業利益43億円を見込みます。売上高のうち、約50億円は保有不動産の年間家賃収入です。
――盤石な経営基盤ですが、会社経営で大事にしていることは。
川村 社内外問わず〝信用〟を大切にしています。約束を破らないことはもちろん、当社の情報を〝ガラス張り〟にすることです。できるだけ資料を整備し、財務内容などの情報をオープンにしています。多くの人に私たちのことを正しく知ってほしいからです。開示資料や事業計画書などは私が自らつくっています。数字を含め、トップが事業全体を熟知していることが信用につながると考えています。おかげさまで現在、27の金融機関と融資取引するに至り、大変感謝しています。
――今年の計画は。
川村 札幌市内では19棟400戸の賃貸マンションと3棟のサービス付高齢者向け住宅の建設に着手する計画です。
ラピダスで話題の千歳市では、ホテル2棟を建設するほか、計200戸の賃貸マンションを着工します。千歳市は10年ほど前から北海道の玄関口ということで注目しており、賃貸マンション400戸とホテル2棟を保有してきました。札幌市内とともに、発展が予想される千歳市内の開発をさらに進めていきます。
――今年3月には、アルファコートが設立20年を迎えました。
川村 18年間務めた財閥系不動産デベロッパーを辞め、2004年に独立しましたのですが、あっという間の20年でしたね。
――設立4年後にはリーマンショックが起こります。影響はありましたか。
川村 独立当初、ファンド・リートブームの波に乗り業績を伸ばしていた矢先に起きたのがリーマンショックです。当時、契約した上で着工したマンション2棟、約30億円の物件が完成直前に急きょキャンセルになり窮地に陥りました。
結果的には2行の金融機関からの融資と内部留保、保有物件の売却、保険の解約などあらゆる金策を講じ、物件を自社保有することで建設会社をはじめ、誰にも迷惑をかけずにピンチを乗りきりました。
――川村社長の経営観も変わりましたか。
川村 リスクヘッジの大切さを学び、経営者としてのターニングポイントとなりました。また、そこから2年は資金調達をできるわけもなく、低迷期でした。ただ、創業当時から今でいうストック型ビジネス、いわゆる大家業が不動産業の王道だと捉え、得られた利益を物件の購入に充てていました。複数の所有物件で家賃収入は得られるわけですから、低空飛行の中でも社員を解雇することなく耐え忍ぶことができました。
そして何より、リーマンショックという状況下で多額の融資を受けられたのも、保有物件が担保になったからでしょう。
結果として、この低迷期に不動産コンサル、再開発コーディネート、企画設計に活路を見いだし、事業分野を拡大したことで筋肉質の収益力を身につけました。
――今では札幌市内の建物保有棟数、建物保有床面積、土地保有面積ランキングで三冠(東京商工リサーチ調べ、23年9月時点)となっています。
川村 保有予定のなかった例の2物件を約2年後に売却できてからは、低迷期を抜けられました。また、他社がまだリーマンショックの影響を受けている最中であったこともあり、優良物件を先んじて買い進められたことも運がよかった。
積極的買収は攻勢に転じているように見られますが、私としては攻めではなく「守り」。リーマンショックという大きな経済変動があっても持ちこたえられた経験から不動産保有の必要性を実感しました。また、コロナ禍でも増収増益を達成したことで確信しています。
――近年は取得ペースが上がっています。
川村 当社では不動産の購入は、すべて長期ローンを利用しています。短期のほうが融資のハードルは低いのですが、さまざまなリスクを想定して10~30年の長期ローンを組んでいます。創業当初からコツコツ購入してきましたから、ローンの完済物件が5年ほど前から増えてきました。
家賃収入50億円のうち、すべての返済経費を控除した〝真水〟のキャッシュ創出額が年間20億円となりました。よって次の投資に充てられるわけです。この好循環でここ数年は毎年50~70億円ほどの買収や開発投資が可能になり、来期は100億円の投資を計画しています。
不動産開発で街づくりに貢献
――道内主要都市の再開発にも力を入れていますね。
川村 不動産を通じて北海道を活性化したいという思いで独立しました。18年には道内不動産業で唯一、経済産業省より「地域未来牽引企業」に認定され、当社の取り組みが高く評価されていると認識しています。
これまでに札幌市・篠路駅西口や伊達駅前、恵庭駅前、釧路市北大通の再開発プロジェクトを手がけました。中でも記憶に残るのは、帯広市の旧イトーヨーカドービルの再開発です。閉店後20年ほど塩漬けとなっていた同ビルを買収し、帯広市と帯広市商工会議所、北海道銀行とともに再開発を実現できました。
現在は北見経済センタービルの建て替えを含む周辺の再開発事業を進めており、26年度中に全事業が完了する予定となっています。
北海道の発展に貢献次なるステージへ
――賃貸マンションの開発にも力を入れています。
川村 自社所有だけでなく、個人投資家向けの低層マンションやファンドやリート会社向けの大型賃貸マンションの企画・販売も手がけています。「アルファスクエア」シリーズとしてブランド化し、高級賃貸マンションを展開中です。
――数多くの不動産プロジェクトが進んでいます。社員も多いのでしょうね。
川村 社員は現在60人ほどで、一人ひとりが経営者感覚を持った優秀なスタッフばかりです。その結果として一人あたり平均7000万円の営業利益を生み出しています。この実績はまさに、大家業・開発・企画コンサルが三位一体となり、バランス良く収益化した結果です。全てはリーマンショックが鍛えてくれたものだと認識しています。
――20年という節目を迎えた現在、北海道の不動産市況をどう見ていますか。また、次のステージに向かう意気込みは。
川村 大局的には、再開発が進んでいる札幌市内中心部の不動産が、道外の投資家やリート等へ買収されることを危惧しています。これは結果として収受する家賃収入が道外へ流出していることになります。
私個人としては、当社に限らず、道内企業が家賃収入を還流し再投資することで新たな建設需要や雇用、消費につながり、ひいては道内経済の活性化につながるものだと考えており、微力ながら当社がその一翼を担う存在になれればと思っています。
個別的には、インバウンドも回復した今、北海道の強みはやはり観光です。当社としては改めてホテルの開発に力を入れていく予定です。保有ホテルは札幌市に1棟、千歳市に2棟、さらに前述の26年春に完成する2棟も含めて千歳エリアは4棟になるほか、北見駅前にも新たなホテルの建設予定があり、近く計6棟体制になります。
開発エリアを道内主要都市に広げ、地域の活性化に貢献していきたいと考えています。