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核家族化や高齢化で需用が急増、今話題の『遺品整理士』とは

木村 榮治 理事長
(きむら・えいじ) 1965年小樽市出身。北星学園大学社会福祉学部卒業。第三セクターや民間企業などを経て、2011 年に一般財団法人遺品整理士認定協会を設立。一般社団法人事件現場特殊清掃センター理事長など、8団体の代表を務める。著書「遺品整理士という仕事」(平凡社新書)他多数出版。

「団塊の世代」が75歳以上になり、国民の5人に1人が後期高齢者になる「2025年問題」が懸念されている。多死社会に突入することが予測される中で、注目を集めているのが「遺品整理士」だ。遺品整理士の産みの親である遺品整理士認定協会の木村榮治理事長に協会設立の経緯や今後の展望を聞いた。

親の遺品整理で心を痛め協会を設立

 ――まずは遺品整理士について教えてください。 

木村 一言で言うと、故人の遺品を整理する専門家です。遺品整理には、遺品整理に関わる多くの法律が絡んでおり、親族だけで行うと予期せぬトラブルが生じるケースも少なくありません。遺品整理士は、ご遺族に代わって法的に適切に遺品を仕分けし、供養を行い、不用品の処分や部屋の掃除などを実施します。また、物理的な〝モノ〟の整理だけではなく〝心〟の整理も重要です。遺品整理とは、どちらも満たされてこそ成り立つものだと考えています。ご遺族の心情に寄り添い、思い出を整理する姿勢を大切にしています。

 ――一般財団法人遺品整理士認定協会を設立された経緯を教えてください。

木村 きっかけは、2010年に父を交通事故で亡くしたことでした。その際、地元の便利屋に遺品整理を依頼しましたが、業者は遺品を単なるモノとして扱い、思い出に浸る暇もなく機械的に仕分けていきました。その対応に心を痛めました。

 その後、遺品整理業を営む知人から、廃棄物の不法投棄や不当な高額請求、現金や貴重品の盗難などを行う悪徳業者が多いことを聞きました。当時は監督機関もなく、無法地帯のような状況でした。遺品整理業界を健全化することで私と同じように傷つく人を減らしたいと考え、11年9月に一般財団法人「遺品整理士認定協会」を立ち上げました。

 ――「遺品整理士」という資格は設立当初は存在しなかった。

木村 はい、設立当時は「遺品整理士」という概念すらありませんでした。私たちは、日本で初めて遺品整理業界の認定民間資格制度を立ち上げました。これは業界の健全化を目指し、プロフェッショナルな遺品整理士を育成するための大きな一歩となりました。

超高齢化社会で遺品整理の依頼が殺到

 ――現在、遺品整理の依頼は全国から殺到していると聞いています。

木村 現在、当協会では遺品整理業者の検索サイト「みんなの遺品整理」を運営しており、認定を受けた1500社を超える企業と連携しています。大手不動産会社とも連携しており、全国から1日70~100件ほどの問い合わせがあります。北海道から沖縄まで全国を網羅したネットワークを構築しています。この規模を持つ団体は、全国的に見ても当協会のみです。

 ――遺品整理を題材としたドラマが話題になりました。

木村 23年1月から放送されたテレビ朝日系列のドラマ「星降る夜に」では、北村匠海さんが遺品整理士を演じました。このドラマの反響は大きく「遺品整理士」という職業は若い世代にも広まり、認知度が高まりました。

 ――会員数が急増しているとのことですが、現在の状況について教えてください。

木村 24年6月には、遺品整理士の会員数が6万人を超えました。そこからさらに増え、現在は6万4000人となっています。設立当初はここまでの規模になるとは想像していませんでしたが、今では多くの遺品整理士が活躍し、多くの方からご依頼をいただいております。遺品整理に対する需用が社会的に高まっていることを改めて実感しております。

 ――今後の展望についてお聞かせください。

木村 今後、日本は「多死社会」へと突入することが予測されており、遺品整理士が担う役割は、より一層大きくなります。

 設立時と比べるとかなり遺品整理業界の状況は良くなりましたが、まだ道半ばです。業界の健全化を推進するためも、法令の遵守の姿勢と高い倫理観、礼節を身に付けた遺品整理士が必要です。設立時から掲げる〝残された想いを、ご遺族へ〟という理念を忘れずに、故人への敬意とご遺族への配慮を徹底しています。感謝される遺品整理業界を目指していきます。