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寿産業

鉄製品の製造で欠かせないローラーガイド

部門連携で難題を解決。安定感抜群のトップメーカー

ローラーガイドの国内シェアは8割超え

「寿産業」は、旧富士製鐵(現日本製鉄)室蘭製鉄所の部品納入業者として、1951年に創業。63年にローラーガイドの開発要請を受け、専業メーカーとして北海道から九州まで全国に展開し、今日まで歩み続ける。

 ローラーガイドは、鉄製品をつくる上で必要不可欠な〝誘導機器〟。鉄製品の製造において、琥珀色になった高温の鋼材が形を変えながら加工されるシーンを想像してほしい。この高温に熱された鋼材を棒状や板状の鉄鋼製品に加工するのが圧延機であり、圧延機に鋼材を誘導するのがローラーガイドの役割だ。

 左上の写真は同社が製作するローラーガイドの一例。ローラーの間に鋼材を通し、正しい位置や角度で圧延機に流す。粗列、中間、仕上、と各工程の圧延機の入口と出口に据え付ける。

 国内大手の鉄鋼メーカーを中心に、全国の製鉄所を顧客に持つ。シェアは国内8割超を誇り、トップメーカーとして製鉄業界を下支えしている。今では韓国やインドネシア、アメリカ、サウジアラビア、ベトナムなど海外の製鉄所にまで納品先を拡大している。

 ローラーガイドはすべてオーダーメードで製作。生産拠点となっているのが札幌市西区の「発寒工場」だ。ここでは営業所、技術部、生産管理室、製品室の4部門が連携し、顧客の要望に応えている。

 中でも日々顧客とコンタクトをとっている営業スタッフの役割は大きい。

 鈴木孝太郎常務は「お客様の要望をヒアリングするには、一定の知識がなければ話になりません。技術・加工など横断的な知識が必要となる〝技術営業〟といえます」と話す。

 近年は省人化・省力化・脱属人化・安全面強化を図ったローラーガイドや圧延関連機器の新設および改修依頼が多く寄せられている。これらを具現化するのが技術部のミッションだ。

 さまざまな要望を実現させるため、一から図面に起こし、唯一無二のローラーガイドを設計していく。安全面の観点から制御装置を付属することも多く、制御プログラムの構築など業務は多岐にわたる。

 生産管理室は、営業・技術スタッフが試行錯誤を重ねて完成させた図面をもとに、必要な部品を調達する。ここではスピード感に加えてコスト意識も重要。各種材料を顧客の予算内でそろえられるかがポイントだ。

 製品を完成させるのが製品室だ。3部門がつないできた〝努力のバトン〟をしっかりと形にする。品質に直結する工程であり、組み上げ精度が問われる。

 鈴木常務は「お客様から難しい課題を投げかけられることも多々ありますが、『できませんとは言わない』をスローガンに、各部門のスタッフが知恵を出し合い、一つの製品を完成させています。課題が難しいほど、実現できればお客様に喜んでいただける。そこが我々のモチベーションです」と語る。

他者・チームのために。貢献心が成長の原動力に

 ローラーガイドの新設をはじめ、既設機の修理やカスタム、メンテナンス、製鉄所で使用される各種産業機械の製作、据付など多種多様なオファーが寄せられる。4部門はフル稼働だ。

 前述の通り、自己で完結する業務は少ないため、ベテラン社員も「自分一人では何も進まない」と口をそろえる。〝自分だけのため〟の行動にモチベーションを見いだせないが、〝チームのため〟〝他者のため〟となるとフットワークが軽い若者が増えている昨今、同社のような環境に身を置くことで、大きく成長を遂げる若手社員も多い。

 鈴木俊一郎社長は「頑張った社員は正当に評価する。22年に一新した評価制度は〝やらない社員〟には手厳しいもので退職者もでましたが、残ってくれた現有戦力が頑張ってくれています」と胸を張る。

 正当な評価に加え、正当な対価も用意する。23年4月からは物価調整手当として、約80人の全社員一律で月額3万円を支給。資格取得や外部研修も手厚くサポートしている。

 企業は人なり――すべては社員のためだが、決して〝迎合〟はしない。

「離職を恐れ、腫れ物に触るような指導で人は本当に育つのでしょうか。無責任な優しさは社員の利益にも、会社の利益にもなりません。雇用する以上、人生を預かるという覚悟を持って立派な社会人を育て上げます」と鈴木社長。

札幌営業所 森谷 湧右さん

 札幌と室蘭、苫小牧の製鉄所を担当しています。お客様とのコミュニケーションを大切にしており、リクエストに応えることはもちろんですが、何気ない会話の中から潜在需要を掘り起こし、お役に立つ提案ができた時はうれしいですね。既設製品のカスタムなどを依頼されることもあり、業務は多種多様です。技術部との連携も多々あり、お客様のところに一緒に訪問することもあります。チームとして動いているので、連帯感を持って仕事に取り組めます。

技術部 本村 樹生さん

 営業所がヒアリングしてきたお客様の要望や課題をどうクリアするのか、図面を書いたり、制御プログラムを構築したりと、忙しい毎日を過ごしています。当社のどの部門にも困っていたら手を差し伸べてくれる先輩がいます。これが当社の文化であり、いいところ。専門学校を卒業後、新卒で入社して気付けば29歳になり、今は指導する立場になりました。若手のリーダーとなれるよう、先輩がしてくれたように後輩を助けていきたいですね。

鈴木俊一郎社長
札幌中心部に位置し、アクセス良好な本社
世界に向けてローラーガイドを製造する発寒工場
さまざまな加工マシンを用いてローラーガイドを具現化
鈴木孝太郎常務