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今振り返る、私の思い出紀行 第四回【ばらと霊園住職・佐藤 嘉高氏】

白亜の大霊廟「タージ・マハル」をバックに記念撮影

急成長と混沌を目の当りにしたインドの旅

この旅は2008年の春、インドの急成長の兆しを確かめようと、私が所属する道内の経営者交流会「一への会」のメンバー9人で企画・実施したものです。

インドについては、四大文明、仏教発祥の地の一つとしての長い歴史と、多民族・多言語・多宗教の下での混沌とした環境、植民地からの脱却などを大まかな印象として持っていました。

しかし、21世紀を迎えて人口は世界第2位の13億人に達し、豊富な労働力と知的水準の高さなどを背景に産業・経済が成長し、国内総生産は著しい成長を見せ始めました。

したがって、この旅は現地のジェトロ(日本貿易振興機構)や、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)のアドバイスを受けて、当時の経済状況を反映している現地企業の視察が中心となりました。

当時、日本からの進出企業は自動車とその部品産業が多く、ほかには工作機械や建設機械、石油化学、IT、通信などが目立ち、その後の動向もこうした分野の進出が予想されるという状況でした。

一方、道路や環境衛生などインフラの整備が今一つという感じで、宿泊していたデリーの三ツ星ホテルの周辺でさえ、一歩外に出ると人間と野良犬、牛などが雑踏状態。私も朝の散歩で狂犬とおぼしき野良犬に追いかけられて身の危険を感じたことがありました。また、大好きな生野菜を食べて道中で苦しい思いをし、仲間である田中良治先生に助けてもらったことなどが思い出されます。

現在のインドは人口が約14億人と中国を抜いて世界第1位となり、22年の国内総生産は世界第5位となっています。この成長が本格化し始めた時期に、一端ではあれ、産業の状況や人々の生活を目の当りにできた意義は大きかったと思っています。

経済視察以外では「タージ・マハル」を訪れた時の感動が忘れられません。ここは17世紀半ばに建てられた王妃の墓所で、水路や尖塔に囲まれた総大理石の白亜の丸屋根が象徴的です。その美しさは実に感動的で、今では世界文化遺産にも登録され、年間700万人もの観光客が訪れているそうです。私も宗教家として、ここを訪れるのをこの旅の一番の楽しみにしていました。

今「ばらと霊園」内に、高さ30㍍を超える木造の五重の塔を建立中です。思えばこれもお釈迦様が開いた仏教の伝統的建築物です。

この先、千年に至るまで人々の心の拠り所となるべく願いを込めて完成へ向かっています。

仏教が発祥の地・インドから長い年月と多くの人々によって日本に伝えられたことを思うと、このインドへの旅のもう一つの意義と感動を忘れることができません。

ばらと霊園住職 佐藤 嘉高氏