藤女子大学
実体験を重視。カトリック大学ならではの〝人づくり〟を実践
――AIテクノロジーの台頭により、社会から求められる人材像も変化しつつあります。
マルクス さまざまな技術が発展する中であっても、これらを扱うのはあくまでも〝人〟です。倫理的判断を下せる人材がこれまで以上に求められるのではないでしょうか。キリスト教の教えにも通じますが、引き続き慈愛や奉仕といった人を思いやる心を育むことが大切だと考えています。これまでも、そしてこれからも、〝人づくり〟にまい進していきます。
――学内の雰囲気も良いですね。
マルクス 本学はもともと小規模大学であり、学生への支援体制の手厚さも魅力のひとつです。教職員との距離感も良い意味で近く、家族や友達以外の人との接し方を学べます。教職員に丁寧かつ親身に相談に乗ってもらったと卒業生からの声も聞こえてきます。他者に優しくしてもらったからこそ、他者を慮れるものです。こうした実体験と幅広い教養科目で学生の人格形成をサポートしています。
――文学部の強みは。
マルクス 文学部では、2018年に「藤ACEプログラム」と銘打った特別英語カリキュラムをスタートしました。多様なシーンで実用的に英語を使えることを目標に、文字通りエースとして社会で活躍できる人材の輩出に取り組んでいます。コロナ収束の兆しが見えはじめた昨年は、卒業生の協力も得ながら観光通訳に挑戦するなど、現場体験を通じて学びを深めています。
――人間生活学部は3学科を開設しています。
マルクス 専門職者の養成を目的とし、免許や資格の取得を目指した3学科を開設しています。人間生活学科では家庭科教員の養成に力を入れています。道内の私立大学で中学校・高校の家庭科免許を取得できるのは本学のみであり、現代にマッチした家政の教育内容を追究し、ブラッシュアップさせています。キャンパスを構える石狩市をはじめとした地域との連携も強化し、体験的に学ぶことができるように工夫しています。
食物栄養学科では管理栄養士を養成しています。実践的な授業はもとより、学生が主体となって学生食堂のメニューを企画したり、子ども食堂の運営にも携わるなど、実体験を重視しています。
また、子ども教育学科では、保育士と幼稚園教諭、特別支援学校教諭の養成に加え、小学校教員の養成課程も新設しました。こちらは今年度が完成年度になります。幼児、児童、障がい児など、各種実習なども通じてさまざまな知識を総合的に学ぶことができ、インクルーシブな環境で指導できる教員を養成しています。
――各学科の共通キーワードは〝実体験〟ですね。
マルクス やはり自らが体験して培った経験や知識に勝るものはありません。学びの中から得た成功体験を蓄積することで、自己肯定感も高まっていくはずです。社会に出た際にも一定の自己肯定感は必要です。自分に自信が持てれば、自分で考え、行動に移すという主体性も身についてくるはずです。今後、これまでにも増して主体性を持った人材が社会から求められるはずですから、本学では学生の主体性を育むさまざまな機会も設けています。
――具体的には。
マルクス 課外活動に力を入れています。学内のアクティブラーニングスペース「アイランズ」は、FSA(Fuji Student Assistant)として本学の活動に参加する学生たちが運営しています。運営企画に携わることで、与えられた役割に対する責任感が育まれますし、自らのアイデアが形になるという成功体験の構築にもつながっています。また、本学の入試や広報活動に参画する学生スタッフ「F‐lens」も活躍しています。担当教職員とは異なる学生ならではの視点は貴重です。自らの気づきや意見を臆さず発信するという習慣が身につくはずです。
――来春には天使大学と法人統合します。
マルクス 道内に2つしかないカトリックの大学が法人統合することで、シナジー効果を得られるものと確信しています。すでにさまざまな問い合わせをいただいておりますが、中には誤解されているケースも多いようです。法人統合後も両大学は現在の名称で存続しますし、両大学の管理栄養士養成課程も、これまで通り運営していきます。ご安心ください。
――25年には学園創立100周年を迎えます。
マルクス 今後も変化するニーズに応えていくことが選ばれる大学のポイントだと捉えています。教育内容はもちろん、学生へのアプローチなど、「もっと学生のためにできることはないのか」という観点で絶えず見直していきたい。改革に終わりはありません。