藤女子大学
女性像の変化に対応。優しさと〝したたかさ〟を両立させる
――今年度から学長に就任されました。
〝変わる藤、変わらない藤〟をスローガンに、本学を進化させることが私の役割です。そのためにも学生と近い位置に身を置くことで現場感をしっかりと持つことが大切だと考え、週に1回は専門の国際政治経済の授業で教壇に立っています。また、ランチタイムに学生と気軽に議論を交わす「Brown Bag Lunch Seminar」も行っています。
――かなりアグレッシブに活動されていますね。
私の信条は生涯現場主義です。今は情報収集が容易かつスピーディーになりましたが、学生は自分の興味のある情報しか得ない傾向があります。新聞も読まないわけですから、私が記事を解説することで、彼女たちが情報を精査し、分析する機会としたいと考えています。
――貴学の変えるべき部分は。
世の女性像の変化に本学も対応するということです。藤の学生といえば、一般的には〝良妻賢母〟というイメージを持たれている方が多いと思います。もちろん、それは藤の良き伝統ですが、今は結婚・出産後も仕事を続ける女性が一般的になっています。こうした変化を受け、本学の学生にも生涯の武器となるエクスパティーズ(専門的知見)とツールを持ってほしいと考えています。
――具体的には。
例えば英語力の向上です。TOEICで、700点から800点、900点に…とスコアを上げることも一つです。スキルだけでなく、自己の成長を体感する経験も大切です。部活やインターンシップなどのさまざまな活動を通じて成功体験を重ね、自己実現の蓄積が本人の自信となります。カトリック大学としてこれまで同様に慈愛や奉仕といった優しさを育みながらも、自信をもった強く〝したたか〟な女性を育てたい。
――世間一般の「計算高い」「あざとい」とは異なる意味の〝したたか〟ですね。
強く、粘り強く、逃げずに圧力に屈しないという意味です。例えば授業の際に「最後に質問はありますか?」と聞かれた時、周りを見渡して様子を伺う、あるいは他の人が手を挙げているから手を挙げないで遠慮してしまう人は本学の学生に限らず、日本人に多いのではないでしょうか。しかし、そのように消極的な姿勢では社会で埋もれてしまいます。これは一例ですが、こうした場面で即座に手を挙げられる主体性のある女性になってもらいたいと思います。
そして本学から巣立ち、社会にでた際には男女問わずさまざまな人と切磋琢磨できる人材となって、いまだに先進国では最低レベルの我が国のジェンダー・ギャップを改善できる〝ゲームチェンジャー〟になってほしいと考えています。
――学生や保護者から寄せられるニーズの変化はありますか。
昔から〝就職の藤〟と言われるように、本学の就職サポートへの期待がさらに高まっているようです。そこは〝変わらない藤〟として、さらに強化していきたい。23年度の就職実績は、子ども教育学科で100%を達成、文化総合学科、人間生活学科、食物栄養学科が98%台、英語文化学科が97・5%で、日本語・日本文学科が92・6%となりました。
――就職先は。
教育関係をはじめ、航空や金融、製薬、食品、自治体など多岐にわたります。インターンシップのみならず、入学直後からガイダンス等のキャリアを意識する場を提供し、万全の体制でバックアップしています。
――来年は藤学園の創立から100周年を迎えますね。
創立から現在に至るまでに教育の基礎ができた。ステークホルダーからも評価されています。次の100年は北海道、そして日本にいかに貢献していけるのかが問われると思っています。
また、18歳人口の減少が続き、今年度の入学者数は厳しい結果となりました。当然、入学者獲得に向けて、さらなる教育体制の強化やオープンキャンパスの拡充など、さまざまな施策を展開予定です。
その一つとして人間生活学部を「ウェルビーイング学部」に改称し、花川でのこれまでの学びをさらに発展させた内容にします。
一方、企業も労働人口の減少に苦しんでいます。本学では将来、道内企業への就職を前提とした留学生の確保にも力を入れていく所存です。今後10年で外国人留学生の割合を全体の20%ほどに増やしたいと考えています。
そこで、これまで以上に道内企業との接点を増やしていきます。就職先としてはもちろんのこと、例えば共同商品の開発やイベントの企画、実習の拡充など、産学が連携して学生を育てていく仕組みをつくっていきたいですね。