北海道情報大学
ITで教育の個別化と国際化を実現。技術者の自立を支援
――情報技術の観点からみた〝人間力〟とは。
西平 チャットGPTなど人工知能(AI)の開発は私たちの想像をはるかに超えた勢いで進んでいます。これからの情報技術者は、情報技術力に加え、主体的で人間性豊かな能力が求められます。この能力を培うため、本学では起業家精神を養う独自の「アントレプレナーシップ入試制度」を設けています。設定された課題の解決手法やアイデアについてプレゼンテーションを行い、質疑応答やプレゼン資料、適性テストで判定します。入学後は、知識や技術を学ぶだけではなく、コミュニケーション能力や課題への向き合い方など、自立した学習能力を育てるユニークな取り組みです。
――情報通信技術(ICT)を取り入れた教育が特徴です。
西平 コロナ禍の3年間で授業のICT化が急激に進みました。本学では通信教育分野において、eラーニングを活用したオンライン授業を全国に先駆けて実施してきました。メディア教育に特化し、電子教科書などのコンテンツを自製できる技術と経験から、コロナ禍でも質の高いオンライン授業を早期から実現できました。
eラーニングによる予習、対面授業、復習というサイクルを作ることで、各学生が自らのペースで、理解できるまで学習できる環境が整っています。今後もeラーニングのコンテンツを一層充実させ、すべての科目でICTを活用した学習者本位の教育を実践していきます。
――なぜ教育の個別化が必要なのでしょうか。
西平 今日の学生はデジタルネイティブと言われ、ICTに関する知識も経験も豊富なうえ、学習方法も学習目標も多様化しています。その希望に応えるため、学修環境を整備する必要があります。本学で培ってきたICT教育を活用し、達成度の高い学習環境を提供することで、すべての学生が満足できるキャンパスの構築を目指しています。独自に開発した学習者適応型学習支援システム(LMS)POLITEを活用し、何度でも復習できる個別化教育に適した学習環境を実現します。
――教員にも変化が求められる。
西平 多くのIT企業は複雑で多様な社会ニーズに応えるため、これまで以上に若者のアイデアと情報技術力を引きだすことが求められています。こうした変化に伴い、大学においても新たな発想で問題を解決できる人材を育てる教育方法の導入が急務です。反転授業や問題解決型学習法の積極的な導入に加え、インターンシップを通じたコミュニケーション能力の向上など、学生が成長できる学びの場を提供する必要があります。本学では教職員の授業方法や教育支援活動の向上を図るFD・SD研修などにより、教職員のリスキリングを推進しています。
――ICTの発展により、教育のグローバル化が進んでいます。
西平 本学にはバーチャルリアリティ(VR)やAIなどの技術を専門とする教員がおり、学内で仮想空間を自製できるのが強みです。メタバースを活用した講義、バーチャルホスピタル、スポーツなど幅広く導入しており、来年度から始まる国際情報プログラムでは国際交流の手段としても活用します。昨年度にDX推進センターを設置し、対面とオンラインを組み合わせるハイフレックス型授業による国際的な教育研究活動にも着手しました。開学の使命である「国際的に活躍できる情報技術者の育成」につなげていきます。
――地域貢献も大きな特徴です。
西平 学生に限らず地域住民も対象にした全世代型教育の場となることを目指し、江別市内の高齢者団体、女性協議会、PTA組織にも呼びかけ、学びの場として活用できるよう取り組んでいます。
地域におけるユニークな研究テーマとして、「食と健康と情報」を基盤にした街づくり「江別モデル」があります。食と健康に関する個人情報と情報技術を活用した健康支援アプリ「ARON」を開発しました。年齢、性別、血圧、血液検査をAIが解析し、健康チェックステーションとスマホアプリを通じて体調予測や食品の機能性による健康アドバイスを発信します。健康チェックステーションは今年中に市役所や市内の商業施設等に設置の予定です。スマホアプリは7月から8月をめどにリリースし、一般の方も使えるようになります。地域大学の使命のひとつとして、研究成果を市民の健康増進に役立て、地域から必要とされる魅力ある大学として発展することを目指します。