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北海道情報大学

西平 順 学長
(にしひら・じゅん)1979年北海道大学医学部卒業。同大学医学研究科分子医科学助教授などを経て2006年北海道情報大学医療情報学科教授に着任。14年副学長、21年4月から学長に就任。医学博士。

地域と未来社会に求められる国際的なIT人材を育成

――変化する大学教育において、貴学で取り組まれていることは。

西平 生成AIの社会実装など情報技術が急速に進化する中、最先端の情報技術を持った専門家の育成が急務であり、対応するカリキュラムや教育の仕組みづくりに取り組んでいます。本学は情報を専門とする高等教育機関として、ICT教育を軸に未来社会にむけた人材育成を強化しています。

――貴学のICT教育の特徴は。

西平 情報技術に関する知識や経験が豊富な近年の学生は、学習方法や目標も多様化しています。そのため本学では学習管理システム「POLITE」を独自に開発し、高品質のeラーニングを用いて自分のペースで予習や復習を行える個別最適化された学習環境を提供してきました。

最近では、生成AIの急速な進化に対応するため、正しい知識を吸収する力と柔軟性をもったモラルの高い人材を育てる情報リテラシー教育の強化がテーマです。生成AIを使った誤った情報を分別できる能力など、日進月歩で進化する情報化社会で必要とされる能力や知識を身につけ、社会に貢献できる情報分野のエキスパートを育成していきます。

――ICT教育は具体的にどのように変化していくのでしょうか。

西平 コロナ禍で作ってきたオンライン授業のための基盤を一層発展させ、情報教育デザインに基づいたハイブリッド授業を進化させていきます。オンライン授業コンテンツによる効率的な予習や復習、またアクティブラーニングを導入した対面授業を組み合わせた反転授業で、効率的かつ効果的に知識と応用力を身に付ける取り組みです。また、長期インターンシップなどの社会体験教育も対面とオンラインの両面から行うほか、教職員と学生が密にコミュニケーションを取れるシステムの構築、さらには豊富な教育デジタルツールを導入したユニークな教育環境を創造し、学生から選ばれる大学へと成長していきます。これらの構想を基盤に、情報学を専門とする高等教育機関として、北海道にとどまらずわが国の情報教育をリードすることを目指します。

――地域を巻き込んだアクティブラーニングにも注力しています。

西平 物事を多面的に捉える教育法の一つとして、本学が立地する江別市や道内の市町村に学生と教員が赴き、学修の場として活用すると同時に地域にも貢献する取り組みがあります。事例として、江別市では認知症リスクのある55歳~75歳の約1000人を対象に、10年間にわたり認知機能調査を行っています。また北空知管内北竜町では、観光資源であるヒマワリを題材にした映像を学生が制作し、道の駅の壁にプロジェクションマッピングで放映を行うなど町の活性化に貢献しています。

また、道内の半導体産業の拡大を見据え、地域の情報産業に就職できる人材育成に着手しています。本学から半導体企業で活躍する情報人材を送り出すことを楽しみにしています。

――国際情報プログラムが本年度からスタートします。

西平 教育DXや複言語教育システムを推進し、国内外の教育機関と連携して、グローバルに活躍する個性豊かな情報エキスパートを育てるプログラムです。短期留学や連携する海外大学とのオンライン講義など、ハイブリッドな教育の仕組みを駆使して国際性豊かな感性を養うと同時に、グローバルな視点で情報技術を学べます。複言語教育では言語の学習に加えて、他国の文化に触れることで学生が海外に視野を広げるきっかけとなることを期待しています。

大学進学志望者が道内から首都圏へ流出する傾向がありますが、本プログラムで国際的な素養と情報技術を持った学生を育てる教育システムを定着させ、道内で活躍の場を広げると同時に、国際的な視点も備えたアントレプレナーシップ(起業家育成)にもつなげる計画です。また、SDGsの17のゴール設定を積極的に教育に取りいれ、本学での学修がどのゴールにつながるのかを意識することも教育方針の一つに掲げています。

――9月に開催される工学教育に関係する国際会議「2024 CDIOアジア地域国際会議」のホスト校に選出されました。

西平 CDIOは「Conceive(構想)」「Design(設計)」「Implement(実装)」「Operate(運用)」の頭文字を取った教育の枠組みです。工学教育のために欧米で開発され、現在は文理を問わず幅広い分野で活用されています。アジア地域25の国と地域から250人以上の工学教育のリーダーが集まり、3日間に渡ってCDIOの理念を基にした教育改革にかかわる研究成果を発表します。本会議は、日本では2度目の開催であり、道内大学では初の取り組みです。ホスト校に選ばれたことはICT教育に特化した大学として大きな意義があります。海外の最新の情報教育の知識や技術の吸収とともに、本学の国際情報プログラムやICT教育を世界に発信していきます。

学生制作のプロジェクションマッピング(北竜町)
立地する江別市でも、学習成果を通し地域に貢献する