札幌大学
〝タテ〟と〝ヨコ〟で学び、生き抜く力を養成していく
――地域に根ざしたさまざまな新しい取り組みをおこなっていますが、まずは昨年度スタートした松本大学と鹿児島国際大学との連携について教えてください。
大森 日本の北に位置する札幌大学、南に位置する鹿児島国際大学、中央に位置する松本大学と、地方創生を目指す大学版日本縦断モデルを作るため、新しい学生交流を昨年度スタートさせました。昨年は9月に「三大学学生交流課題研究会議」を行い、各大学の学生20人が集まって「地域防災」をテーマに活発な議論を行いました。
――学生にとっていい機会になりましたね。
大森 風土が違う場所に行って勉強するのは貴重な経験です。事前に勉強はしていても、実際に行って、見て、そして触れることで、今まで知らなかったことに気づいたのではないでしょうか。
今年は本学がホスト校となり「食と観光」をテーマに9月に開催する予定です。
――高大連携も進んでいますね。
大森 2022年度に高校の学習指導要領に探究学習が導入されました。本学では、高校での探究学習と大学の学びをシームレスにつなぐことが「答えのない時代を生き抜く力」を養うカギになると考えています。
そこで、昨年10月に高校生の探究学習発表会「HOKKAIDO ハイスクールQUEST」を開催しました。札幌市内外から4校9チームが参加し、探究してきたテーマについてプレゼンテーションを行ってもらいました。順位を決めるのではなく、ゲストの方にフィードバックしてもらい、今後に生かせるようなコメントをしてもらうことで、学びの〝幅〟を広げることにつながったのではないでしょうか。
――先生方の交流にもつながったと聞いています。
大森 高校の先生たちも探究学習についての戸惑いがあると伺っていたので、参加校の先生がパネラーとなるパネルディスカッションを行いました。大学と高校の先生、参加者などで本音のコミュニケーションが取れて、有意義な時間になりました。
――地域の自治体との連携も深まっているようですね。
大森 特に美幌町には本学OBの町議がおりまして、インターン学生の受け入れなどの取り組みが進んでいます。学生が子どもたちにスケボーを教えに行ったり、今年の夏にはサッカー部員が合宿の際に地域の子どもを対象にサッカー教室を行う予定です。
今後も美幌町に限らず、各部活動の部員が各地で合宿などをする際に、子どもにトレーニング方法などを教える機会を設けられたらと考えています。
また、鵡川高校、本学、むかわ町という高・大・地の3つの組織で協定を結んでおり、昨年度はむかわ町の役場でインターンシップを実施しました。学生2人がむかわ町で役場の仕事を体験したほか、さっぽろ雪まつりの際には、むかわ町が出展したブースのお手伝いなども行い交流を深めました。
――敷地内に「サツドラ」がオープンしたのも話題になりました。
大森 サツドラホールディングスの富山浩樹社長兼CEOは、本学の卒業生ということから、21年9月に包括連携協定を締結しています。
学生の生活利便性の向上もありますが、この店舗を核にして新たな地域貢献プログラムを構築していくのが本筋です。例えば、データサイエンスに役立つ購買データを提供していただき、学生とサツドラで分析していくなど、活用方法は無限にあります。
店内に休憩スペースを設けてもらい、プログラミング教室など地域の方へのセミナーや大学情報を発信する取り組みも始まっています。
――「ようこそ、学長室へ!」という取り組みも好評のようです。
大森 学生と学長の懇談会ということで昨年度は3回、自治会を含めると4回開催しました。直接学生と話すため、新入生、2年生、留学生にわけて忌憚のない意見を聞きました。今年は数を増やそうと思っています。
――さまざまな取り組みを行うなか、就職率も上昇しました。
大森 22年度は93.7%となり、前年度よりも1.6ポイント上昇しました。ただ、最終的な目標は100%ですから、そのための努力も行っています。
昨年6月には、キャリアサポートセンターと地域連携センターを融合させた「みらい共創スクエア」を学内に開設しました。就職に関する情報を網羅しており、学生にとって必要な場を作れたと思います。
また、北海道中小企業家同友会との共同開催による「札幌大学生と若手社会人のワールドカフェ」など、就職観の醸成につながる各種イベントも開催しています。
――改めて問われている〝人間力〟について感じることは。
大森 本学の建学の精神は「生気あふれる開拓者精神」です。開拓者のように未開の地を開拓していく。行き着く先は、結局は人間力を養うことなのだと改めて感じています。
また、本学の大きな特徴が「1学群8専攻制」という学群制です。大学では専門性を養いますが、「答えのない時代」では1つに特化した専門性だけでは生き残っていくのは難しく、人間としての総合力を身につける必要があります。
本学では、専門性を担保する各専攻での〝タテの学び〟に加えて、「副専攻制」や昨年度スタートした「みらい志向プログラム」などにより専攻横断の学び(ヨコの学び)が可能です。これにより専門性に固執しない幅のある人材育成を目指しています。