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今振り返る、私の思い出紀行 第十一回【AURA ARCHITECTS 山本 謙一氏】

140年以上も建設を続けている「サグラダ・ファミリア」。2026年の完成を目指している

ガウディ建築とまちづくりを考察したバルセロナの旅

 コロナ禍が全世界に広がる少し前の2019年4月下旬、個人の視察旅行として訪れたスペイン・バルセロナでの旅で、さまざまな収穫がありました。

 スペインへは40年ほど前、大学の院生時代に南部のアンダルシア地方を訪れていて、それ以来の2度目の旅でした。 

 オリンピックが開かれたこともあるバルセロナは、カタルーニャ州の州都。紀元前以来の古い歴史を持ち、かつては独立国家の首都の時代もありました。今もなお独立志向が強いと言われ、独自の地域言語へのこだわりもある地域です。

 バルセロナと言えば、アントニ・ガウディの建築が世界的に有名です。中でも19世紀末から建築が続けられ、現在も未完ながら世界遺産に指定されている「サグラダ・ファミリア」(聖家族教会)は全世界から見学客が訪れています。

 私が訪れた時もネット予約の上、国際空港並みの厳しいボディチェックを経て、内部見学まで1時間以上待たなければなりませんでした。全体の完成はガウディ没後100年となる2026年の予定とされています。

 建築家としてサグラダ・ファミリアの見るべきポイントは数知れずあるのですが、この旅ではここで約30年にわたってガウディ建築の研究を続けられている稚内市出身の田中裕也さんにお会いできたことも忘れられません。

 田中さんはカタルーニャ工科大学で建築工学博士号を取得し、ガウディ建築の実測を続け、実に精密な実測図を数多く制作しています。この実測を通じてガウディ建築のデザインや構造、地域性などを明らかにしてきた田中さんの研究は、同じ北海道の建築人として誇りに思うところです。

 地域性ということでは、地図を見てみるとわかるのですが、バルセロナの街は札幌と同様、碁盤目の市街地が特徴です。そして帯広市と同じく、碁盤目市街地を斜めに大通りが貫いています。

 サグラダ・ファミリア以外にも集合住宅や大邸宅、公園などガウディらが手掛けた世紀末建築は数多く、今もなおその魅力、技術力には圧倒される思いです。

 改めて地図を見ると、バルセロナは札幌が位置する北緯40度圏内にあります。積雪寒冷の季節はありませんが「碁盤目の街や緑豊かな小公園、独立志向の強い民族性などが、まちづくりや建築に影響する共通性となっているのでは」というかねてからの視点を、この旅で改めて感じました。北イタリアやドイツの一部地域にも同じことが言えると思います。

 私が手掛けている高気密・高断熱の住宅や、中・高層集合建築にも気候風土、生活様式は欠かせないもので、今後もこれらを十分に考慮し、建築に生かしてまいります。

AURA ARCHITECTS 山本 謙一氏