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今振り返る、私の思い出紀行 第九回【札幌総合卸センター理事長 守 和彦氏】

標高約5000メートル地点でのキャンプ地。現地スタッフ10人とラバ10頭とでトレッキング

ブータンでのトレッキングと国王との出合い

 旅の楽しみといえば、国内外を問わず、訪れた土地の文化や自然、人、食などとのふれ合いです。私の場合はこれらに「歩く」が加わります。それも、おしゃれな街を散策するのではなく、3~4000㍍級の山岳地帯などに出かけ、数日間を要して登るトレッキングの旅です。

 私の「歩き」は48歳からと遅いスタートでした。散歩仲間から山歩きを進められたのがきっかけで、藻岩山の登山を手始めに、自然とふれ合いながらの体力づくりに魅了されました。以後、札幌を不在にする日以外は毎日のように暗いうちから明け方にかけて藻岩山に登っています。

 これまでに道内の主な山の大半と、日本百名山の7~8割は登りました。この間に国内外の名所旧跡や離島も訪れました。国内外での登山はそれぞれに楽しみがあるのですが、ここ数年はアドベンチャートラベル(AT)にはまっています。直訳すると「冒険旅行」となりますが、危険を冒してまでのものではありません。

 昨年、札幌でATのワールドサミットが開かれて話題となりましたが、要はトレッキングやカヌー、フィッシング、サイクリングなどによる自然体験を中心に、各地独特の生活習慣など、異文化体験のほか、地域の人々とのふれ合いも加えた新しい旅の形態です。

 私の場合はトレッキングを中心とするATになります。すでにカナディアン・ロッキーなど、いろいろと体験していますが、特に印象に残っているのが2014年4月に、ヒマラヤ東南部〝世界一幸福な国〟と呼ばれるブータンでの高地トレッキングです。

 一行9人。全日程13日間のうち、8日間を1日5~7時間のトレッキングで、女神が住むとされるヒマラヤの聖峰チョモラーリⅠ(7314㍍)のベースキャンプ地に行き、雪と氷河に輝く峰を仰ぎ見ました。

 この間はテント泊まりで、食事は地元の食材を使って地元ガイドが調理してくれます。高度が4000㍍を超えるキャンプ地もあり、高山病の危険もありますが、私は日頃から場所や時間を問わずに寝られるので、どのキャンプ地でも問題ありませんでした。

 終了後には、焼いた石で湯を沸かすブータン式の風呂で、驚きながらもさっぱり気分に満足しました。

 出発地・パロでは思いがけないことがありました。その日、折から大仏画が披露される仏教祭があり、そこにワンチュク国王夫妻が見えられたのです。そこで私が音頭をとり、一行で「こんにちは」と挨拶をしたことで、王様に日本からの訪問を喜んでいただき、お話しをすることができました。

 ブータンは日本から農業技術を学ぶなど親日国ですが、王様の心遣いを嬉しく思いました。

札幌総合卸センター理事長 守 和彦氏