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中村記念病院

佐藤 憲市 脳腫瘍センター長・部長
さとう・けんいち/札幌医科大学卒。大学を卒業後、中村記念病院、函館赤十字病院、滝川脳神経外科病院、札幌東徳洲会病院などを経て、2003年4月に再び中村記念病院に勤務。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。

ガンマナイフと分子標的薬を併用する治療法を考案

「中村記念病院」は、1967年に国内初の脳神経外科専門の医療機関として発足したことで知られる。

脳神経外科医50人が在籍し、このうち36人が日本脳神経外科学会の脳神経外科専門医資格を有する。さらに、日本脳神経血管内治療学会の脳血管内治療専門医が9人所属する病院は全国でも珍しい。

そんな同院において、脳腫瘍部門の陣頭に立つのが佐藤憲市医師だ。専門は悪性脳腫瘍で、脳内の病巣部に細かいガンマ線ビームを集中照射させる放射線治療「ガンマナイフ」を得意としている。

佐藤医師は「悪性脳腫瘍の代表格は膠芽腫。脳から発生し、脳に浸潤する腫瘍で、言語障害や手足の麻痺が特徴です。一般的に5年生存率が7%で、平均余命は約15カ月と言われています。早期発見のために一年に一度の頭部MRI検査を推奨します」と語る。

こうした疾患は手術で病巣を全摘出するが、運動麻痺や言語障害の後遺症が生じやすく、道内で手術が行える医療機関は限られる。同院ではナビゲーションシステムを併用し、術中の電気刺激で脳の運動野や運動神経を筋電図モニターで同定して行う。また、覚醒の状態で患者と会話して言語野を同定する「覚醒下手術」も実施している。

一方で、膠芽腫は再発しやすいという特性も持つ。この場合は、ガンマナイフと分子標的薬を併用する「アバガンマ療法」を行う。2013年に佐藤医師自身が考案した療法で、国内では佐藤医師しか行っていない特殊療法だ。

ガンマナイフは再発に対し有効だが、放射線壊死の副作用が起こり治療効果に限界があった。分子標的薬のベバシツマブには放射線壊死を改善させる働きがあり、これと併用することで放射線との〝内・外〟から治療を行ってくことができる。開頭もしないため、侵襲が低く後遺症も少ないと言われている。

再発に対して何も手段がないとされていた膠芽腫だが、佐藤医師は「アバガンマ療法により5年生存率が30%、平均余命は30カ月に伸びています」と話す。同療法で現在までに、約100人の患者に治療を行っている。

「アバガンマ療法によって、生活の質を落とさない治療が可能。研究を重ね、人の〝健康〟に貢献していきたい」と佐藤医師。全道の大学病院から、アバガンマ療法での治療依頼も増えている。

アバガンマ療法前のMRI写真。白い部分が膠芽腫
ガンマナイフ治療には最先端機器を活用する
札幌市1次救急、2次救急指定の中村記念病院