弁護士法人リブラ共同法律事務所
遺言書作成は親の責務。兄弟・姉妹の絆をつなぐ
「兄弟仲良くしなさい」。親として幼き我が子に伝えてきた言葉ではないだろうか。そんな兄弟の絆が自身の死をきっかけに切れてしまうかもしれない。
数々の〝争続〟を目の当たりにしてきた「リブラ共同法律事務所」の菅原仁人代表弁護士は「一度関係がこじれると修復は難しいのが現状です。子だけでなく孫の代以降も親族と疎遠になるケースが多い」と話す。
親が亡くなった場合の法定相続の基本は、離婚していなければ配偶者に50%、子に50%(子が2人なら25%ずつ)。数字上は〝平等〟だが、例えば何年も親の世話をしていた長男と、何もしていない次男のケースでも相続額が同額では、長男の複雑な心情は察するに難くない。
そこで推奨しているのが遺言書の作成だ。終活の定番であるとともに〝争続〟防止ツールとして有効といわれている。公正証書遺言を作成する際、公証役場への支払いはわずか数万円で、作成に要する時間は1~2カ月ほどと、思いのほか手軽につくることができる。
コロナが5類感染症に移行したこともあり、同事務所にも遺言所作成の相談が増えている。
「これまで面会できなかった病院や施設に公証人とともに伺い、本人の意向を聞きながら遺言書をつくれるようになりました。ご家族から依頼されることも多い」と菅原代表。
一方で、自身の死後に〝無頓着〟な人も少なくないという。
「子供にすべて丸投げするつもりの方も多いのではないでしょうか。しかし、相続時に不満や怒りを抱くのは遺産分配の主導者など〝生きている身内〟に対するものです。生前に遺言書で決めてしまえば、仮に不満があっても故人に向けられます。身内の争いを避けられる可能性が高い」と菅原代表。
さらに遺言書には補足説明も明記できるという。例えば長男が次男よりも多く相続する理由などを付言事項として記載すれば、次男の心証も大きく変わるだろう。
また、同事務所では配偶者や子など相続人に向けた動画メッセージの製作にも対応する。文字だけでなく自身の肉声で説明、説得して納得してもらうという試みだ。
「我が家は皆仲が良いから大丈夫」「財産は少ないから不要」と遺言書を作成しない親も多いが、菅原代表は「親の知らないところで兄弟・姉妹に不和が生じていることもあり、相続が関係決裂のトリガーとなることもありますので注意して下さい。また、相続額が少ないほど相続人はシビアになりますので、資産家よりも一般家庭のほうがこじれることが多い。資産の大小に関わらず対策を」とアドバイスする。