拓殖大学北海道短期大学
北海道唯一の農業系短大で、実践力と人間力を育む
――今年度から学長に就任されました。
田中 少子化でどの大学も厳しい環境にありますが、本学の特徴をアピールして認知度を上げて、多くの受験生に魅力を感じてもらいたいと思っています。
――新しい取り組みも取り入れていると伺いました。
田中 4月14日に、和寒町と包括連携協定を締結しました。農家はどこも後継者不足が深刻ですから、まずは担い手の育成に取り組みます。具体的な活動はこれからですが、農産物の試験栽培・研究に関することなど6つの分野について連携・協力していく予定です。包括連携協定は初めてですが、地元深川市はもちろん、道内各地でさまざまな連携を進めていきます。キーワードは「地域」。学生には産学官という形で活動し、将来に生かせる地域振興を肌で学んでもらいたいと思っています。
一方、勉学として農業を学びたいという市民も増えています。今後は、リカレント教育や生涯学習の一環としてさらに門戸を開いていきたいと考えています。
――カリキュラムに新しい動きはありますか。
田中 昨年度開講した日本酒学に加え、今年度は日本酒製造実習を開講しました。酒造好適米の播種・田植えを行い、収穫した酒米で日本酒を製造する予定です。
北海道には「吟風」「彗星」「きたしずく」という3つの酒造好適米があり、酒どころとしても北海道を盛り上げたいですね。私は農業試験場で稲の研究をしていましたので、この2つの授業を担当しています。
――昨年度開始したドローンプロジェクトの進展は。
田中 これからの農業には省力化・高度化が必要で、スマート農業の技術は欠かせません。今年度もドローンプロジェクトを継続し、農業用ドローンの実演、小型ドローンの操縦体験、ドローンライセンスの取得などを推進しています。
昨年度は同好会として北海道大会に出場しましたが、より技術を磨けるようにドローンサッカー部を創設しました。2025年にはワールドカップも予定されており、さらに盛り上がるのではないかと期待しています。
――カリキュラムの再編も進んでいるようですね。
田中 北海道で唯一の農業系短期大学として、北海道だけではなく世界の持続可能な発展のために、これからの時代の農業を学び、それを地域経済に還元できる人材を育てていくことが使命だと考えています。
そこで農学ビジネス学科を24年度から再編しました。「農」「食」「地域」をキーワードとしたプログラムのなかから「農業生産者になりたい」「農業、食、観光などに携わる企業に就職したい」「地方公務員や一般企業などで地域に貢献したい」など、将来の目標に応じてカリキュラムを選べるように再構築していきます。
また、今年は7月に、道内農業関係者を集めて農業シンポジウムを本学主催で行う予定です。
――学科間交流として、保育学科の学生も農業に携わる授業があると伺いました。
田中 食育の観点から、野菜栽培を行うといった幼稚園や保育園も多く、学生時代に農業に触れる機会を持つことが大切だと考えています。
また、法人内の大学間交流も推進しています。八王子にある国際学部には農業総合コースがあり、3年次に本学で農業の勉強をしています。今年は24人の学生が深川に来ていますが、過去には卒業後に北海道の農業改良普及職員として採用された例もあります。ほかにも商学部と連携して、東京都内で本学農場産の農作物販売を行う計画も進んでいます。
――就職も順調です。
田中 両学科ともに、一部年次を除き100%の就職率を達成しています。いずれもOB・OGの活躍により、本学の実践教育が評価されているものと考えています。
――人間力養成が評価されているということでもありますね。
田中 小規模な短大ですので、教員と学生との距離が非常に近く、一人ひとりの個性を生かすことが可能です。拓大ミュージカルを筆頭に、スーパーチェーンとのコラボ弁当の企画・販売など、地域での活動もいろいろあります。こうした活動に参加することで、コミュニケーション能力も磨かれます。2年間で基礎を学び、実践力を身に着けるとともに「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という社会人基礎力を高めてほしいと思っています。
――拓大ミュージカルは40周年と聞きました。
田中 本学ではかねてから「感動こそ教育の原点」をモットーとしており、その意味でも拓大ミュージカルの存在は大きいですね。お客さんに感動していただいて、自分自身も達成感で感動する。ステージを成功に導くには、メンバー間の意見の衝突やアクシデントを粘り強く乗り越えていくことが必要です。こうした他では得られない多くの体験をするからこそ、社会でも活躍していけるのだと確信しています。