北海道科学大学
基盤能力を養い、プロフェッショナル人材の育成を強化
――学長に就任し、2年目を迎えました。
川上 学長1年目の昨年度は、教育や学術・研究に関すること、組織力をつけることなどいくつもの枠組みを作りました。今年はこれらに命を吹き込んでいく年度だと捉えています。目指すべき教育を実現するために各教員や連携組織と協力体制を強化し、一体となって進めていきたい。
――目指すべき教育とは。
川上 人間力を高める教育です。本学のスローガンである「+Professional」の考え方が重要になってくると思います。社会で求められる基盤能力とプロフェッショナルな専門性を併せ持つという考え方です。
現在は予測不可能な時代で、これまでの価値観も変わってきており、これからますます〝人〟ありきの時代になっていくでしょう。教養として古典的な学びも重要です。過去を学ぶことで未来が見通せると考えています。私たちは、特定分野のプロフェッショナルである前に、普遍的な教養や人間力を伸ばすことが社会で活躍する〝人間力〟につながるという結論に至りました。
本学では、核となる基盤能力を養うために新しい教育プログラムを構築しました。それが2024年4月開講予定の「HUSスタンダード」です。
――HUSスタンダードの狙いは。
川上 専門性に偏らない授業を展開することで、学生にコミュニケーション力や課題を発見して解決していく力、自己管理力・自己向上力、多様な視点から物事を捉え、異なる意見を理解する力を身につけてもらうことが大きなテーマです。全学部全学科すべての学生が履修します。
特に、力を入れたいのが課題解決型の授業です。例えば、道内のリアルな課題を見つけ、どのように解決に導いていくかをプロジェクト形式で学びます。異なる学部学科の学生が混成になるようなチーム編成を取り入れることで、活発な意見交流が期待できます。他の学生たちの意見を聞きながら、自分とは異なる視座で物事を見るという経験は貴重なものになるはずです。
――データサイエンスの授業にも力を入れていますね。
川上 数年前から、データサイエンスやAIのニーズが高まってきていると感じていました。本学でも21年度からデータサイエンスプログラムを開講しています。22年8月には文部科学省「数理・データサイエンス・AI認定制度(リテラシーレベル)」に認定されました。
今後は、経験のみに依存した意思決定ではなく、エビデンスを基にした判断が必要になってきます。データの見方や扱い方はすべての学生にとって必要な力であると言えます。このデータサイエンスプログラムは来年度から「HUSスタンダード」の中に組み込まれ、本学すべての学生が受講する予定です。
――4月には系列校の北海道科学大学高校が移転してきましたね。
川上 移転前から系列校としてさまざまな連携を行ってきましたが、これからより一段高いレベルの連携をしなくてはなりません。
大学と高校で相互に単位を認定するコンカレントプログラムによる相乗効果を期待しています。本学への進学を予定している高校3年生の後期に大学1年生の後期科目を履修するというものです。高校3年生のうちに単位を先取りすることで大学1年生の後期にギャップタームが生まれます。その期間を留学やインターンシップ、ボランティア活動などの時間に充てるなど、さらに豊かな大学生活、そして豊かな学びを実現してほしいと考えています。
――入試、就職も好調です。
川上 道内の私大では5年連続志願者数1位となっています。各教員や就職支援センターの努力の結果、就職率も99.4%を維持しています。
――法人創立100周年記念事業として、3月には図書館がリニューアルしました。
川上 名称は学生からの公募で「HUS+H」に決定しました。従来の静かな空間ではなく、学生たちがさまざまなアイデアを出しやすいアクティブな空間にしており、既に高校生や大学生が利用し、にぎわっています。
館内には、13のプロジェクトルームもあります。個室でガラス張りの設計にしており、中の学生と外の学生たちが創発しあい、イノベーションが起きることを期待しています。
――今後の展開については。
川上 25年4月に本学5つ目の学部として「情報科学部(仮称)」の新設を予定しています。北海道が抱えている広域分散や人口減少などの地域課題をDXを通じて解決していきたいと考えています。新学部がIT人材の育成と地域課題の解決の両方を担い、そこで育った優秀な人材が北海道に残り未来を切り開いていく、その礎となってほしいと願っています。