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桑園整形外科

東 裕隆 理事長・院長
あずま・ひろたか/1992年北海道大学医学部卒業後、市立札幌病院救急部勤務。93年北大医学部整形外科入局。2000年カルガリー大学(カナダ)留学。03年市立札幌病院整形外科副医長を経て、07年開院。11年医療法人社団くわのみ会を設立し理事長・院長に就任。日本整形外科学会認定整形外科専門医。

メリットとデメリットを伝え、患者の選択を優先

 国内の患者数が3000万人とされる変形性膝関節症。クッションの役割を果たす軟骨がすり減ってしまうのが主な原因だ。「桑園整形外科」の東裕隆理事長・院長は、この膝関節疾患の治療を得意としている。

「起因しているのは加齢や肥満、筋肉の衰えなど。特に女性はホルモンの影響や筋力低下による膝への負担が大きく、罹患率は男性の約2倍です」

 変形性膝関節症に対する代表的な治療法は、保存療法と手術。双方のメリットとデメリットを伝えた上で、患者に選択してもらうのが東理事長・院長のモットーだ。

「膝関節の状態が悪くなると痛みだけではなく、歩きにくさも感じる。末期状態になると手術を推奨する整形外科医も多いが、絶対手術をしなければいけないというわけではない。〝共存する〟という選択肢を提示するのも医師の役目です」

 手術の場合は、低侵襲の「MIS(Minimally Invasive Surgery)」を採用。約5㌢の切開長で体への負担が少なく、通常1〜2カ月の入院期間が約2週間に短縮される。執刀実績は年間170例以上、累計執刀数は4000例を超える(2024年12月時点)。

 一方で、保存療法としては正しいフォームによる筋力トレーニングを指導するほか、痛みが強い場合はヒアルロン酸の注入などを推奨している。

「うまく付き合うことも大事」と話すように、膝への負担を減らす減量はもちろん、正座やしゃがむ、階段の昇り降りといった日常生活に関するアドバイスも行う。同院では、95%の患者が保存療法を選択している。

 再生医療も選択肢の一つと言われているが、同院ではメリットとデメリットを明確に伝えている。

「再生医療は保険対象外で高額なうえ、効果も6割程度です。短期間に連続して実施しても効果は未知数。派手な宣伝広告に惑わされないようにしてほしい」と警鐘を鳴らす。

 また、急速に普及しているロボット手術やナビゲーションシステムも国内で早い時期に導入したのが同院だが、まだまだ改良の余地が多く未熟なため、現在は積極的に推奨する立場をとっていない。

 なお20年からは、社会貢献活動として農作物の栽培をスタート。入院患者に新鮮な野菜を提供し、余剰分は肥料にするなどフードロス解消にも取り組んでいる。

膝の痛み改善の啓発活動として定期的に講演会も実施