佐藤暁哉リラィアブル社長「関東2店目出店、つくばがコーチャンフォーの基準店になる」
「書籍や文具の売れ行きは世相に直結するから面白い」と語るのは、リラィアブル(釧路市)社長の佐藤暁哉氏だ。10月には複合商業施設・コーチャンフォーの関東2号店がオープンする。出店の狙い、今後の経営戦略などを聞いた。
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オープン前なのに1500人が
――コロナ禍のステイホームで書店需要が高まったといわれます。
佐藤 2年前の4月から5月にかけての緊急事態宣言時、1日も休まず営業を続けました。ちょうど「鬼滅の刃」などの人気コミックが販売されていた時期ということもありますが、書店はステイホームを豊かに過ごすためのものを売っています。読書による疑似体験の渇望というニーズに応えられたと思っています。
――コロナ禍3年目、今年の市況は。
佐藤 コロナ初年度、2年目は全く売れなかったキャンプ関係や旅行雑誌がまた動くようになりました。
また、今年になってから非常に売れているのが、文具コーナーに置いてあるアクセサリー関係です。1個300円程度のものが、全店で1日何百個も売れています。この商品が売れるということは、やっぱり、みなさんお出かけをしたい気持ちになっているんだと思います。
書籍や文具の売れ行きはこのように世相に直結するから面白いんですよね。この業界に身を投じていて、いつも、そう感じています。
――10月下旬には関東2店舗目となるつくば店(茨城県)がオープン予定です。
佐藤 いくつか候補地を検討した中で、主要道路との接続、人口の伸び率なども踏まえ、つくば市にしました。14歳以下の人口も多いんですよ。当社は書店の中でも、児童書や学習参考書などに力を入れています。その強みを発揮できるエリアだと考えています。
――新店舗の特徴は。
佐藤 コーチャンフォーは現在、道内に6店、関東に1店あり、店舗の基本モデルは1500坪以上となっています。最も大きくて、札幌・新川通り店の2900坪、最も小さくて釧路店の1500坪になります。つくば店は2000坪です。
今後新店を出すにあたり、2000坪がコーチャンフォーの基準となるサイズです。書籍や文具を陳列した際にお客様に十分満足いただけるスペースが確保できると考えています。
7年前の関東初進出(東京都稲城市・若葉台店)と比べて、SNSの反響が全然違います。ツイッターで、つくば店のアカウントをつくりましたが、オープン前にもかかわらず、1500人の方々がフォローしてくださっています。注目していただいているんだと思っています。
――今後の店舗展開は。
佐藤 今、具体的に考えているのは関東3号店です。まだエリアも決まってはいないのですが、関東3店体制にしたいと考えています。
賃金の引き上げが何かのきっかけに
――リラィアブルでは従業員の待遇面の改革に取り組んでいます。
佐藤 当社の新卒(大学生)採用は、当店でアルバイト経験のある優先採用と、一般採用の2つがあります。そして、来年度、アルバイト経験者の新卒初任給を1万円引き上げ、25万円にすることにしました。
このご時世、そして小売業ということもあり、当社も人材の確保に注力しています。おかげ様で当社では昨年度20人、今年度22人の新卒を採用し、離職率も年々低下してきています。
ちょうど今も、物価は上がり続けています。しかし、学卒者の初任給は上がっていません。そのため、地方企業から何か取り組んでいかなくてはならないと考え、決断しました。
――北海道の企業で、アルバイト採用を導入し、さらに初任給の引き上げを実施するところは珍しい。
佐藤 道内企業が何か考えるきっかけになってくれたらと考えています。
初任給に手をつけるということで、若手社員との賃金格差が生じないように、2年目、3年目の社員もベースアップさせる予定です。
――社長就任から4年経過しましたが、まだ44歳と若い。
佐藤 私が社長に就いた2018年にマルシェ事業をスタートさせました。ミュージック事業が時代の流れとともに縮小し、それに変わる事業として取り組み、しっかりと実績を積むことができました。経営者としての自信につながっていると感じています。
社長就任当時は北海道で老舗企業の代替わりがちょうど進んだ時期でした。同年代の経営者が多く、心強い。
私は6年前、北海道経営未来塾の1期生でした。そこでの人脈が役立っています。他業種の同年代の方々と定期的に情報交換することが経営のヒントになっていることがあります。
父親(俊晴氏)も代表取締役会長をしていますから、経営に悩んだときには相談に乗ってもらっています。また、専務の弟(唯人氏)はシステム関連全般を担当しています。私が人間関係の構築が得意だとしたら、弟は父親に似て、物事の本質を捉える能力が高い。兄弟で足りない部分を補いながら、人間として、会社として成長していきたい。
――今後のコーチャンフォー像は?
佐藤 コーチャンフォーはもともと、4頭立ての馬車という意味になります。書籍、文具、ミュージック・マルシェ、飲食の4つの事業で1つ店舗を走らせていきます。普遍性のある4つの柱は今後も変えるつもりはありません。
一方で、我々の使命感というものを、改めて考えていきたいと思っています。関東1号店を出したとき、思った以上に多くの人がネットショップで本を買っていることがわかりました。近くに書店がない。大きな書店がない。在庫が置いてない。それだったら、ネットで買おうとなってしまったんですよ。
それが、若葉台にコーチャンフォーをつくったことで、お客さまの購入行動が変わってきたと感じています。変わってきたというよりも、ネットにシフトしていったものをリアル(書店に足を運ぶ)に戻しているイメージです。
これは文化を守るという意味でも、非常に重要なことだと捉えています。やはり店舗で本を買う楽しさや、紙の本を読むということの大切さを伝えていきたい。
だからといって、デジタルを批判しているわけではありません。会社としてもこちらも柔軟に対応していこうと思っています。
(ききて・竹内)
……この続きは本誌財界さっぽろ2022年8月号でお楽しみください。
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