今津寛介・旭川市長「停滞から前進へ、生まれ変わる旭川」
85の公約を掲げて立候補し、昨年9月の旭川市長選で初当選を果たした今津寛介氏。スピード感ある対応で旭川市のイメージ回復に全力を注ぐ。「公約達成度は71%」と語る今津氏が見据える展望とは。(22年2月28日取材)
“旭川モデル”でいじめ再発防止へ
――就任から6カ月目を迎えました。
今津 市政の停滞、閉塞感を変えてほしいと言う市民の皆様の大きな期待を感じています。市長選では85の公約を訴えて戦ってきましたが、そのうち当選後すぐに実行する公約として、新型コロナ対策、いじめ問題の真相解明と再発防止、生活道路の排雪倍増の3つを掲げました。決断、実行、発信を心がけています。失敗を恐れずに「挑戦」していくということを、職員の方々へも繰り返しお伝えし、日々公務に臨んでいます。
――旭川市では一時期、新型コロナ感染者が途切れず、批判の声が挙がりました。現在の対策は。
今津 2020年の自衛隊派遣の際は、国・道との連携不足が露呈されました。市長就任以降、21年10月に旭川で感染者数が一時増えた時期がありましたが、鈴木直道知事のご配慮を頂き道から医師・看護師、加えて道の要請により国立感染症研究所から職員2名を派遣して頂き収束に向かいました。鈴木知事、上川総合振興局の皆様には感謝しております。
40人の保健所職員と他部局からの応援職員と合わせて約80人の体制を整え、高齢者施設等重症化リスクの高い方々への対策を重点的に行っていきます。
他にも、旭川駅前イオンや道北の繁華街である3・6街の大型スクリーン、街頭放送等で感染予防の啓蒙、飲食店関係者の無料PCR検査、道の第三者認証を受けCO2センサーを取りつけた飲食店には20万円の奨励金支援、予約・接種券不要のワクチン接種など、感染拡大を抑え込むため出来うることは全て行っています。
――先のいじめ問題では全国的にも旭川の印象に悪影響を及ぼしています。安心できる教育環境はどのように構築されますか。
今津 市民の皆様をはじめ全国の皆様にもご心配をおかけしており、一刻も早い真相解明に全力を尽くしています。総合的に判断し、市長としていじめであるとの認識を就任後初の市議会で答弁致しました。一連の出来事から1年が経過しましたが、ご遺族におかれては多大なご心痛を抱き過ごされた毎日であったと思います。今年度内にご遺族の意向に寄り添った中間報告がなされるよう教育委員会を通じ、第三者委員会に申入れをしています。併せて中間報告の際には、最終報告の時期についてめどを示すこと、その期限は遅くとも調査開始から1年を迎える6月には行うことをお願いしています。今後の状況によっては市長部局での並行調査の実施に向け、準備を進めていかなくてはなりません。
いじめ問題は真相解明とともに、再発防止が非常に重要です。昨年末には岐阜市、大津市、寝屋川市に赴いて、いじめ対策の事例や取り組みの勉強をしてきました。そこで旭川に足りないこと、必要なことが見えてきました。末松信介文部科学大臣とも面会し、国からの支援も求めています。
いじめ防止について先進的な取り組みをしている寝屋川市では、市長部局に設置された「監察課」に弁護士資格を持つ職員が常駐し、いじめを人権問題として対応しています。第三者が学校や教育委員会と連携しながらいじめ問題に対応することにより、多忙な学校現場の負担軽減にもつながっているようです。こうしたさまざまな都市の事例を参考にしていじめ対策の“旭川モデル”を作りたいと考えております。
また、寝屋川市長とは、このようないじめ問題が発生した、あるいは対策を行っている自治体が一堂に会し、“いじめ対策サミット”を開催することで一致しています。悲しい事案を経験した街として再発防止に責任を持つと同時に、いじめ対策に悩む多くの自治体があると思いますので、この“旭川モデル”を国へ提案し、全国に発信していきたいと考えております。
除排雪対策で市民の命と生活を守る
――除排雪対策について、どう取り組んでいますか。
今津 除排雪は旭川市の長年の懸案事項でした。18年の選挙に落選してから約750回、吹雪の日も灼熱の日も一人で街頭演説を行い、市民の皆様の声を聞かせていただきました。その中で圧倒的に多かったのは除排雪に対する不満の声でした。そのため旭川の道路の8割に及ぶ生活道路の排雪を倍増するという公約を掲げ、対策にいち早く取り組みました。タクシーの運転手やバス会社の関係者からは、今シーズンは走りやすい、事故が減ったと言って頂いています。
今年は大雪により札幌をはじめ道内各地でさまざまな影響が出ています。大雪は私たちの暮らしだけではなく、時として、救急車・消防車両などの緊急搬送の妨げになることや、受験、商談など予期せぬところに影響を及ぼします。この不安を解消できることは重要です。企業誘致、移住等でも冬に強い旭川をPRしてまいります。
除排雪対策を行えば渋滞もなくなり、自動車からのCO2削減が図られるため、ゼロカーボン北海道の観点からも望ましい。毎年冬になると雪のため空港で一夜を明かす方々のニュースが放送され、胸を痛めます。旭川空港を新千歳空港の代替空港として観光でもビジネスでも大きな可能性を発揮していきたいです。高速道路のミッシングリンク解消や、新幹線の旭川までの延伸など、旭川の公共交通体系の充実にも取り組んでまいります。
――今シーズンは降雪量が少なかったということですが、来シーズン以降の対策はいかがですか。
今津 今年度は例年の約8割の降雪量ですが、昨年12月には4億4000万円の補正予算を組むと共に、除排雪地区体制を再構築するなどしっかりと準備を進めてきました。
新年度予算では当初予算として34億8000万円を計上しました。これは過去最大の除排雪予算です。予算の裏付けがあることで、企業の皆様も先を見据えた従業員の雇用、除雪機械の確保など、計画的でシームレスな除排雪が可能になります。
また、毎晩深夜の作業から今シーズンは日中の除排雪も進め、オペレーターの負担軽減や育成支援を図っています。市民マナーも重要ですので、次年度からは、行政・企業・市民が一体となって除排雪先進都市を目指すために、雪に対する条例の制定も予定しています。
予算に関しては、事業の見直しはもちろん、自民党・公明党の道選出国会議員や国交省に除雪費用を要望していますし、旭川開発建設部の特段のご配慮を頂き、上川総合振興局・旭川市の道路管理者3者による道内初の除排雪に関する協定を締結しました。これにより国管理の一級河川に150万立方メートルの雪堆積場が確保できたことも除排雪向上の大きな要因となっています。
都会が持つ弱点を旭川の強みにする
――3つの公約の他、特に力を入れていることは。
今津 女性が輝くまち旭川を目指し、女性に優しく、子どもを産み育てやすい街へと変えていくために、子育て施策やいじめの問題を含めた教育施策について重点的に取り組みます。
なぜなら、人口動態では20代30代の女性の転出が特に多く、その裏付けとして、今年度の市民アンケートで子育てや教育に関する満足度が著しく低いことが明らかになりました。ですから、ピンポイントでスピード感を持った対策が必要と考えました。
新たな施策としては駅前のツルハビル2階に、「(仮称)あさひかわおやこひろば」を設置します。これまで分散していた窓口を集約することにより、妊娠期から就学時までワンストップで手続きできるようになります。この施設は秋をめどに開設する準備をしています。
子ども医療費の一部無償化についても検討を進めています。また、女性活躍推進室を立ちあげ、担当の部長を置く予定です。子育て、介護、キャリアアップなど、女性を取り巻く問題を抽出し課題の解決に向けた取り組みを進めます。
同時に、22年4月から民間からのCDO(最高デジタル責任者)を登用しDXを加速させていくと共に、7月には地方創生に精通した中央省庁の職員を派遣頂き、政策立案力を高めていくなど市役所改革も行っていきます。
――現在の公約達成度は。
今津 新年度予算発表の時に現状では71%の達成度とお伝えいたしました。これは全てできたものと一歩踏み出せたものも含めての数字です。これから検討・着手していくものが残りの約30%。また一歩踏み出せたものに関してはより充実させていくことが求められます。
――8月で旭川市制施行から100周年を迎えます。
今津 今年は他にも買物公園50周年や、吹奏楽・マーチングバンドの祭典「北海道音楽大行進」が90周年を迎えるアニバーサリーイヤーです。コロナ禍を乗り越えて、市制が施行された8月1日に周年行事を執り行い、許されるのであれば、夏まつり、北の恵み食べマルシェ、冬まつりなど多くのイベントを復活させていきたいと思っています。
秋には100周年を記念した野外フェスティバルを開催するなど、コロナ禍で皆様が我慢されていた分、今年は活気を取り戻していく。そういう1年にしたいですね。
――旭川のイメージ向上に向けて。
今津 ウィズコロナの時代にあって旭川こそが大きな可能性があると思っています。大都市圏はいまだに電車やさまざまな施設が過密状態になりがちです。首都直下型地震や南海トラフに起因する地震など、いつ大災害が起こるかもわかりません。救急搬送困難事案の件数も増加しています。
都会の弱点はまさに旭川の強みと言えます。旭川は医療福祉介護にも恵まれていますし、全国の中核都市や政令指定都市の中でも災害に強く、空港があって、駅があり公共交通の利便性が高い地域です。都市と自然が美しく融合しています。買い物にも困りませんし、食も大きな魅力です。
今年1月には旭川市と周辺8町で「旭川大雪圏域連携中枢都市圏」を形成しました。移住やワーケーション、企業誘致において、旭川大雪圏域こそ輝いていくと思っています。まちの魅力、市民の想いを職員がコーディネートし、「旭川の力」を一つにし、最大限発揮していくことで、旭川は間違いなく前進していくと確信しています。これからも旭川の応援をどうぞよろしくお願い致します。
……この続きは本誌財界さっぽろ2022年4月号でお楽しみください。
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