北海道銀行新頭取・兼間祐二「若手、女性がより輝ける金融機関に」
北海道銀行は今春、まさかの頭取交代を発表し、関係者を驚かせた。新頭取に就任した兼間祐二氏は経営企画部門が長く、現場経験も豊富だ。自身も37歳で支店長を経験。若手、女性を積極登用したい考えだ。
主要人事の相談だと思ったら…
――3月中旬に笹原晶博会長から後継指名を受けたそうですね。
兼間 確か月曜日(3月15日)だったと記憶しています。当時の堰八義博会長と笹原頭取が私の前に座られました。実は年明けから、3人で行内の主要人事の打ち合わせをしていましたので、てっきりその話だろうと……
すると突然、笹原会長から「私の後を引き継いでほしい」と言われました。びっくり仰天でした。
なぜかといえば、御社の4月号で、当行の大きな特集を組んでいただきました。会長、頭取がそろって誌面に登場し、そのいきおいで現体制のまま、創立70周年に臨むのだろうと。私だけではなく、役員も含めて、頭取交代はあり得ないと思っていました。
――弊誌も兼間頭取と同じで、今年の交代はないということで、特集を組んだ次第です。その後、4月26日の取締役会後の記者会見まで、弊誌を含めてよくマスコミに漏れなかったですね。私たちも突然の発表で、まいりました。
兼間 はい。みんな口が堅かったと思います(笑)
当局には、銀行の取締役会のあと、持ち株会社の取締役会を行い、そこで承認いただいた上で、報告します。その前に報道されることのないように、細心の注意を払いました。
笹原会長が頭取になられた時は、交代の情報が早くから外にでていました。今回は情報管理がしっかりしていたと考えています。
――兼間頭取は札幌市のご出身ですね。
兼間 対外的には札幌市としました。父親の転勤の関係で、幼少期に各地を転々としています。生まれは木古内町で、1964年6月11日です。
66年4月1日に中頓別町に引っ越しました。69年には興部町に移り、幼稚園2年間、小学校2年間のあわせて4年間を過ごしました。そして73年には北見市に転居しました。小学5年生の少しまでいて、75年6月1日に札幌市南区に来ました。
80年に札幌南高校に入り、83年に慶應大学経済学部に進学しました。そうすると、物心がついてから一番長く過ごしたのは札幌なので、出身地として公表しました。
――札幌南高の同期には、どのような方がいらっしゃいますか。
兼間 一人目は本多平直衆院議員ですね。彼は高校時代、バンドを組んでいて人気者でした。7月1日付で北海道開発局長に就任した橋本幸君も同期生です。彼もCDをだすほどのバンドマンです。
――もともと就職先は金融志望だったのですか。
兼間 大学の経済学部は当時、一クラス50人くらい在籍していました。そのうち、銀行、生命・損保会社、証券会社も含めて、約8割は金融志望だったのです。
そういう仲間たちと青春時代を過ごしたので、私も自然と金融機関を目指そうとなりました。
――その中で、なぜ北海道銀行を。
兼間 私の第一志望は北東公庫だったんです。何度か人事の窓口の方と連絡をとっていたのですが、就職活動が始まるのが4年生の8月でした。
その一方、当行は4月から採用活動が始まっていました。当時の就職活動は各企業のリクルーターから連絡が来る仕組みです。私にも連絡があり、当行の新宿支店を訪ねた際、その方の印象がとてもよかったんです。北海道に戻った理由などもいろいろ教えてくださいました。
当行の本州での採用活動は東京事務所でおこないます。事務所の応接で雑談していると、今日は札幌から人事部の若い担当者が来ていると。その方が堰八特別顧問でした。まだ30歳前後だったと思います。
ご存じの通り、堰八顧問は昔から熱い方ですから。面接の後、食事をご一緒しました。お酒を飲みながら話しているうちに、なんとなく北海道に戻ろうかなと。
そして堰八顧問に「お前、うちに来ないか」と言われ、思わず「はい」と答えてしまいました(笑)
断れる雰囲気もなくて、頭取就任を打診された時と同じ感じでした。
将来的にプロパー初の女性の役員を
――94年4月1日に総合企画部に配属されました。
兼間 配属から約1年後の95年2月1日、藤田恒郎頭取直轄の経営企画室が新設され、私も人事発令を受けました。
その部署の上席に堰八顧問が就任され、その隣に直属の上司として大学時代のリクルーターをしていただいた先輩がいました。
――北海道拓殖銀行との合併交渉にも携わりました。
兼間 97年4月1日から、拓銀との合併準備委員会の事務局で、半年間仕事をしました。合併延期の発表後、支店への赴任となりました。
2002年1月に花川支店長に着任しました。03年3月期決算で、500億円規模の大きな赤字になる見通しになりました。
優先株の配当についても無配にさせていただいた。私は毎週土曜、日曜に支店のお客さま1社1社に出向き、無配と赤字のご説明をさせていただいたことを、いまでも覚えています。
――03年6月の株主総会で堰八顧問が頭取に就任しました。
兼間 私はほぼ同じタイミングの03年7月に、経営企画部に異動となり、グループリーダー、部長など計8年、在籍していました。
最初に取り組んだのが北陸銀行との経営統合です。97年の時には拓銀との合併をまとめられなかったという思いがありました。何としても経営統合をやり遂げるという強い気持ちで臨みました。
――札幌の鳥居前支店長を経て、縁が深いオホーツクの北見支店長に起用されました。
兼間 オホーツクでは同窓生がお客さまをご紹介してくださいました。いまでも5年に1回、興部時代の同窓会があるのですが、必ず出席しています。
――創業70周年を節目に頭取のバトンを引き継ぎました。打ち出していきたい方針はありますか。
兼間 いまの中期経営計画には、企画担当役員として携わってきました。この計画をスタートさせるタイミングで、北陸銀行の執行役員にもなり、ほくほくFGの将来について、笹原会長と考えてきました。
頭取の交代で、大きく変わることはありません。北海道は人口が減少して、地方経済が衰退しています。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が加わり、追い打ちをかけてしまいました。
厳しい状況での船出になりますが、そこは逆に割り切って、仕事に励んでいきたい。当行が資金繰りを含めてしっかりお手伝いをし、さらにその後の事業再構築も含めたコアなサポートもわれわれの役割です。
いまが底でコロナ収束後、北海道経済は上向きになると信じています。
――職員の意識改革にも力を入れていくと、お聞きしています。
兼間 いま一度、組織の中に銀行員としてのコンプライアンスの考えを徹底していきます。頭取就任時にメッセージを職員に出しましたが、冒頭にコンプライアンスを掲げました。
お客さまのお役に立つためには、職員のレベルアップが必須です。そのためにも、若手がもっともっと力を発揮でき、輝ける職場環境をつくっていきます。私が最初に支店長になったのは37歳でした。
「そんな若い人間には務まらない」などと、内外ともにいろいろなご批判を受けることもありました。
でも、実はその時のお客さまに、今回の人事を一番喜んでいただいています。「立場が人を育てる」という言葉もありますが、お客さまが私を育ててくれました。できるだけ若い人に、さまざまな経験をさせる人事をおこなっていきます。
若手だけではなく、女性も同じです。将来的にプロパーの役員が誕生すればうれしいです。
そういう組織になるように、女性の管理職、経営職を育てていきます。人材マネジメントは大きな柱になってきます。若手や女性を思い切って登用すれば、組織が活性化します。
――6月から札幌市内の業務別の運営体制を見直しました。
兼間 いままでは、すべての店がフルの装備を持っていましたが、法人や窓口、個人ローンなど、それぞれの役割に応じて支店の機能を明確化していきます。
すでにプライベートバンキングセンターがあり、個人向けの渉外係を集約させています。札幌市内の機能集約を2年かけて取り組みますので、次の中期経営計画期間の中心的な位置づけになります。
この集約化で、支店内に空きスペースができます。これをどのように有効活用していくのか。同時並行で議論していきます。
学生のハモネプ動画を見るのが日課
――兼間頭取は社内の合唱部だったそうですね。
兼間 97年の合併準備委員会の発令を受けるまで、合唱部で活動していました。
昔は活動が盛んで、当行は全日本合唱コンクール職場の部で、「金賞」の常連でした。
当時の指揮者が長内勲さんでした。札幌交響楽団でも指揮し、北海道教育大学岩見沢校の教授として、道内の芸術文化の振興に大きく寄与されています。
4月の頭取就任の発表後、真っ先にお電話をいただいたのが長内さんでした。大変嬉しかったですね。もう、途中で活動から身を引いた私のことは、覚えていないのかなと思っていましたので(笑)
いまでも音楽は好きで、YouTubeでハモネプ動画をみるのが寝る前の楽しみです。美しい声を聴くと心地いいですよね。いま、ハモネプは学生たちに人気で毎日、新しい動画がどんどんアップされます。
今年の採用活動で、ハモネプのサークルに入っている学生がいました。採用面接中も、ハモネプの話で盛り上がりました。
――愛読書がありましたら、ご紹介いただきたい。
兼間 稲盛和夫さんの「生き方」です。人事部の推薦図書で、この4月に入行した行員には、内定式以降に全員に1冊ずつ渡しました。稲森さんは京セラの創業者ですが、以前、京セラの工場がある関係もあり、北見市で講演会が開催され、もちろん私も参加しました。
仕事で壁にぶつかったり、立ち止まる時には、読み返しています。
……この続きは本誌財界さっぽろ2021年8月号でお楽しみください。
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