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日の出運輸

ジ・アースクリーナーを実装した機器。左がブーム式で右が定置式

特許取得ポンプを活用し、SDGs関連の新事業を開始

 室蘭・苫小牧エリアで高いシェアを誇る総合物流企業の「日の出運輸」。輸送分野以外に事業を拡大するため、1月から環境や災害に関わる新事業を本格的に開始した。それが「ジ・アースクリーン」事業だ。石見秀樹社長自身が北大工学部機械工学科出身という経緯もあり、同事業に乗り出した。

 石見社長は「当社の従業員が独自開発した、コンクリート圧送ポンプ『ジ・アースクリーナー』を環境保護や防災に活用する事業です。災害の復旧作業、自然環境の保全、土木工事現場などで活用できます」と話す。

 同製品は元来、プラント建設の断熱工事用の圧送ポンプとして開発されたもので、2017年に特許を取得している。

 断熱工事では、粉末状のパーライトを断熱材として吹き付けるが、通常のポンプ車では吸引して圧送する際に、パーライトが固体化するため、吸引と吹き付けを別々で行っていた。

 一方、ジ・アースクリーナーは吸引と圧送の同時進行ができるため、作業の効率化を実現。人手不足が叫ばれる業界において、最低限の人員のみで施工ができる。さらに粉じんが舞いにくいなど、安全性が高いことも特筆する部分だ。

 同社では、ジ・アースクリーナーを実装した機器としてブーム式と定置式の2タイプを用意。ブーム式は、高い吸い込み効率で生コンなどをスムーズに圧送する一方、定置式は小型で軽量なのが特徴だ。

「土砂災害発生時には、吸引した土砂をそのまま運搬トラックに送り出すことができるため、復旧期間が大幅に短縮できます。また、放水車としても機能するため、森林火災などの消火にも有効的です。北見工大などと連携し、数多くの実証実験も実施してきました」(石見社長)。

 また、水素と二酸化炭素を反応させて都市ガスの主成分であるメタンを合成する「メタネーション」にも貢献できるという。

 水素を液化するにはマイナス253℃以下の温度管理が必要不可欠。専用のトレーラーや運搬船などで保冷剤として使用されているのがパーライトだ。

 火力発電所などで排出される二酸化炭素を回収して水素と合成させることでオフセットが実現するため、カーボンニュートラルにもこの技術が寄与する。

 実績としては廃業したガソリンスタンドの地下タンク処理にが挙げられる。処理の際は、完全に取り除く方法と埋め立てる2つの方法があるが、完全撤去は高い費用が発生してしまう。

 一方、埋め込みは完全撤去に比べて低コストで済むが、タンクの中に水や砂を詰め込む必要がある。ジ・アースクリーナーを活用することで、大幅に作業時間を短縮できるうえ、さらなるコストカットも可能だ。下水処理施設では、ろ過材を送り込んだ実績も有する。

「廃業で放置されているガソリンスタンドが数多くあります。当社の処理費用は従来法に比べて4分の1程度のため、跡地の再利用のハードルが下がります。多くの人々に知ってもらいたい」と石見社長。

 

これまでにさまざまな実証実験を行ってきた
石見秀樹社長