北の達人が「エフエム・ノースウェーブ」買収、今後はどう変わる?新社長を直撃!
エフエム・ノースウエーブの身売りに関係者は驚いた。買収したのは化粧品・健康食品の通販事業を手がける企業。ラジオとは無縁であった新社長に、買収の経緯や狙いをはじめ、新生・ノースはどう変わるのか聞いた。
メディア価値やブランド力を活用
――北の達人コーポレーション(以下、北の達人)は4月1日、広告代理店のえんれいしゃが所有していたノースウエーブ(以下、ノース)の株(72・8%)を取得。ノースを連結子会社としました。その経緯は。
工藤 もともとノースと取引があったわけではありませんでした。昨年11月ごろ、ノースの株主の方から「同社が売却を検討している」というご紹介をいただきました。
その後、北の達人では取得するメリットや、反対にリスクなどを検討しました。その上で、今年2月に買収を最終決定しました。
――ノース売却は大きな話題を集めました。
工藤 買収発表後、多くの方々から問い合わせを頂戴しました。とくにメディア関係者からは「どんな経営をしていくのか」と。関心の大きさに驚きもありました。
――ラジオ業界全体の問題ではありますけど、ノースも決して経営状態がいいとは言えません。
工藤 確かにおっしゃる通りです。音楽イベントなどもできなくなっているので、そうした収入も減っています。ただ、コロナ禍がずっと続くわけではありません。
コロナによって、ビジネスの転換期でもあるといわれています。本体としても、そうしたチャンスと捉えています。
――買収の狙いは。
工藤 大きく分けると3つあります。
1つ目はメディアとしての価値です。ラジオというメディアを活用し、自社ブランドの広告を打ったり、ダイレクトに通販番組をおこなうこともできます。
これはスポンサーとしての立ち場と同じかもしれません。連結子会社になることで、メディアの発信力をより生かせると考えました。
2つ目はコンテンツ制作です。いま、事業者側、利用者側の双方で、音声コンテンツ自体の注目が高まっています。今後、自社ですべて制作するというわけではなく、ノースにかかわる制作会社やアーティストなどと、一緒に取り組んでいくことができるのではないかと考えています。
北の達人はこれまでBtoBのつながりがありませんでした。ノースがお付き合いしている企業との可能性の広がりも感じています。
3つ目はノースの持つブランドです。1992年に設立、93年にFM局として開局し、道民であればノースと聞いたらラジオ局だとわかるはずです。
――ノースの親会社は北海道空港(HKK)グループでした。また、古くは地崎工業(現・岩田地崎建設)のグループでした。
工藤 今回、ご縁をいただき、とてもありがたいと思っています。歴史ある会社の取得で、先ほど述べたように、グループ全体の企業価値が高まると考えています。
――新生・ノースの役員体制は。
工藤 社長の私が、全事業の統括になります。私は北の達人の取締役も兼務しています。また、本体の社長の木下勝寿がノース会長に就きました。
本体の副社長の堀川麻子も、商品や新しい企画の責任者なので、一緒に議論してやっていったほうがいいだろうということで、ノースの取締役になりました。それと監査役は前の親会社の方だったので、北の達人から入れました。
このほか、営業部と編成部の担当役員は前体制と同じままです。社員の雇用も継続したので、現場は大きな変化はありません。
――工藤社長の経歴は。
工藤 今年で37歳になります。北海道大学大学院に在学中、公認会計士の資格を取りました。
大学院修了後は会計士事務所などで勤務し、10年ほど前にIT企業のエコモットに入社しました。エコモットでは財務担当の役員をしていました。
北の達人に転職したのは昨年3月になります。財務や経営管理を担当しています。
北の達人らしさを出したりはしない
――今後について。
工藤 まず本体の北の達人としては、これまでと同じようにスポンサーの立ち場をとっていきます。スポンサーとして、レギュラー番組を1本放送できたらと考えています。
ノースとしては、基本的にこれまでの放送内容を変えるということはしません。これまで聞いてくれているリスナーがいますから。4月の改編も、大きく変更はしませんでした。
「北海道に暮らすあなたに、音楽のある幸せな時間を」というのがノースの方針です。そこはこれからも貫いていきます。将来的にも北の達人らしさを出したりはしません。
本体が通販事業を手がけていますが、だからといって、通販番組だらけにはしないです(笑)。あえて、変化を口にするなら、今後、とがった番組編成にはしていきたいと考えています。
このほか、ノースのネームバリューを活用した放送以外の新しい事業に取り組んでいく方針です。ここはまだ詳しくはお話できませんけど。放送事業だけで安定な収益をすぐにあげるということは難しいと思うので、それ以外の事業強化をおこなっていきます。
リスナーの減少をはじめ、ラジオ業界は市場全体が厳しいといわれていますが、いまラジオを聴いている人は、その分、コアな層だと捉えています。その人たちに対して、どう仕掛けていくか。ターゲットを明確化し、発信することができれば、そこにまだまだ可能性があるのではないかと考えています。
ラジオの持つ公共性やこれまでのリスナーなど、重要なもの、大切なものはそのまま残していきたい。その一方で、事業会社らしく、ビジネスの可能性を追求し、伸ばせるところはしっかり伸ばしていきたい。
……この続きは本誌財界さっぽろ2021年5月号でお楽しみください。
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