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〜患者が主役の医療を目指して〜Fビレッジ TSUBAKI Clinic開業

[右]三上 寛正
MT居宅サービス 社長
(みかみ・ひろまさ)1982年函館市生まれ。2003年函館看護専門学校卒業後、札幌市内の総合病院で看護師として勤務。12年に独立し、MT居宅サービスを設立。訪問看護ステーション椿を開始。今年9月と10月には住宅型有料老人ホームを2棟開設。
[左]鈴木 誉也
FビレッジTSUBAKI Clinic 理事長・院長
(すずき・たかや)1997年北海道大学医学部卒業後、同大学病院第一内科に入局。市立旭川病院、国立函館病院、砂川市立病院などの勤務を経て、2018年在宅専門クリニック院長就任。19年北海道がんセンター緩和ケア内科を経て、今年8月Fビレッジ TSUBAKI Clinic開業。

緩和ケアへの情熱で病院開業を決意

北広島市の高齢化率が全国平均を上回る中、高齢者の尊厳を守り自立生活を支援する地域包括ケアシステムが求められている。

8月に開業した内科・訪問診療「FビレッジTSUBAKI Clinic」は、医師に緩和医療・在宅医学の専門医である鈴木誉也氏を招聘するなど、市の地域課題解決に貢献する施設として注目を集めている。

同院は、札幌市に本社を置く「MT居宅サービス」(三上寛正社長)が運営。訪問看護、介護、リハビリなどの在宅ケアサービスを提供しており、20年からは住宅型有料老人ホームの運営を開始。9月と10月には新たに2施設を北広島市に開設し、計4棟を運営するなど事業を拡大している。

介護事業を手掛ける同社が、なぜクリニック開業に至ったのかを三上社長と鈴木理事長に聞いた。

   ◇    ◇

――お二人の出会いと開業の経緯は。

三上 鈴木先生との出会いは2012年、創業1年目で私が訪問看護師として働いている時でした。

鈴木 私は在宅専門のクリニックに入局した時で、さまざまな事業所へ訪問診療をしていました。ある患者さんの診療に行った時に、看護師としてサポートしてくれたのが三上社長でした。彼のフットワークの軽さと、常に患者さんのために行動する姿勢が印象的でした。それ以来、何度も訪問先で一緒に仕事をするようになりました。 

三上 これまで多くの看取りを経験してきました。その中で、患者さんがより良い環境で最後を迎えられるようにしたいという思いが強くなりました。

また、北広島市では高齢化が進む中で、在宅ホスピスや緩和ケアに詳しい医師が在籍する病院を望む声がありました。私は、患者さんと地域医療への貢献を第一の目的とした病院を開業したいと考えるようになりました。

当社は「本人の思いに寄り添うサービス」を理念に掲げています。この理念を共有できる先生を探していた時に、真っ先に頭に浮かんだのが鈴木先生でした。一度、5年前に「一緒に病院をやりませんか」とお声がけした際「もう一度緩和ケアを学びたい」という鈴木先生の思いを聞き、在宅医療・緩和ケアに対する熱意に感銘を受けました。その時、鈴木先生以外とはやらないと決め、それ以降クリニックの開業に向けた活動はしていませんでしたが、昨年「Fビレッジ メディカルスクエア」での開業の話をいただき、改めて鈴木先生に声掛けさせていただきました。

鈴木 改めてお話を頂いた時は驚きましたが、パートナーとして私を選んでくれた熱い思いに胸を打たれました。三上社長も〝患者が主役〟という私と同じ考え方を持っている方だと感じました。彼の情熱と信念に共感し、在宅医療とクリニック運営において共に新たな挑戦に向かうことを決意しました。

患者と家族に寄り添う病院を目指す

――どのようなクリニックを目指していますか。

鈴木 当院は「ホームを支える」医療をテーマに、関わるすべての方々との関係を大切に、真心をこめた医療を提供して参ります。

私が在宅医療の道に進むことを決意したきっかけは、新人の頃に勤めていた総合病院の患者さんから「家で最後を迎えたい」と言われたことでした。当院では火曜日と金曜日の午後を往診の日として、通院ができない患者さんや自宅療養を行っている患者さんへの在宅診療も継続しながら、専門分野である緩和ケアと一般診療の双方で質の高い医療を提供する、地域のかかりつけ医を目指しています。

三上 患者さんや利用者さんの〝自分らしさ〟を叶えてあげたいという職員の声も多くありました。当社とクリニックが連携することで、高齢者が求める医療ニーズに的確に応える施設を作っていきます。これにより、地域の皆さまが安心して生活できる環境を提供し、地域全体の健康を支えることを目指しています。

 

MT居宅サービス 施設統括部長
斉藤 絵梨さん

当社が運営する住宅型有料老人ホームは、24時間体制で看護師が対応しており、幅広い医療処置に対応できることが特徴です。

私たちは入居者が当施設を自分の家と感じられるよう、安心で安全なサービスを提供し、入居者、ご家族、職員全員が一つの家族のように信頼関係を築き思いやりを持って過ごせる体制を整えています。

また、喀痰吸引の資格を持つ介護職員も増えており、医療依存度の高い入居者に手厚い医療サービスも提供しています。

今後は「FビレッジTSUBAKI Clinic」との連携を強化し、在宅医療の発展につなげていきます。

 

FビレッジTSUBAKI Clinic 看護師長
佐藤 美紗さん

私は看護師長として勤務していますが、その前は訪問看護師として働いていました。介護の現場を知っているという強みを生かし、施設や病院、ご家族やケアマネージャーと密に連携し、スムーズな在宅診療の実現に取り組んでいます。一般内科については、患者様やご家族に寄り添う地域のかかりつけ病院として、通いやすいクリニックにします。

また、当院では光治療を中心とした美容医療も提供しています。アザやシミの除去、肌の改善、脱毛など、お子さんや女性が抱えるコンプレックスの改善にも取り組み、心身ともに健康で自信を持って生活できるようサポートしていきます。

カフェのようなお洒落で落ち着いたデザインを採用
「社内体制も強化し質の高いサービスを追求します」と三上寬正社長
新札幌駅から徒歩3分の「ホテルエミシア札幌」に移転した本部内観