森山病院
脳波診断でMCIを早期発見。
予防には良質な睡眠を推奨
「65歳以上の5人に2人が認知症予備軍、または認知症と言われています。これは社会の大きな課題です」と訴えるのは、「森山病院」で心療内科部門を統括する千葉茂部長。
同院は1952年に、道内初の整形外科単科病院として旭川市に開院した。道北エリアの基幹病院として、広範囲の地域医療を支えている。
千葉部長は、旭川医科大学名誉教授でもあり「日本てんかん学会」「日本睡眠学会」 「日本老年精神医学会」の理事を歴任。「てんかん」「睡眠」「老年医学」を〝脳波〟の観点から、40年以上にわたり研究してきた人物だ。
認知症の鑑別診断に脳波検査に用いる数少ないドクターとして知られ、その数は全国でも15人以下。千葉部長がそのうちの1人だ。
脳波の検査では、刻一刻と変化する脳機能をリアルタイムで把握する。
千葉部長は「問診や一般身体検査、画像検査では正常と診断される場合でも、脳波から異常と判断できる場合もあります。誤診が少なくなりますし、とくにMCI(軽度認知障害)の早期発見に役立ちます」とメリットを語る。
MCIとは認知症の前段階で、いわゆる〝認知症予備軍〟の病名だ。認知機能の低下がみられるものの、日常生活に支障をきたすほどではないのが特徴。この段階で適切な診断と治療を行えば、認知機能の回復も期待できるが、放置すると認知症へと進行する。すなわち、早期の発見と治療が鍵となる。
「このフェーズは臨界期。本人の自覚はないことが多いので、ご家族が注意深く観察することが重要です。昨年には治療の新薬も開発されており、回復可能な病気と言えます」(千葉部長)
日頃からできる予防法として〝良い睡眠〟を推奨する。「睡眠時間には個人差があるため、高齢になると長さにそれほどこだわる必要はないです。むしろ、日中に心身を活動させることに注意を向けてください」と千葉部長。
ここで言う良い睡眠とは、毎日同じ時刻に起床することを指す。とくに早朝を勧めており、朝の陽射しを浴びることで、体内時計を整える効果が期待できる。
また、適度な運動を取り入れることも推奨。昼間の活動によって、夜の睡眠で熟眠感を得られる。
千葉部長は「当院では運動や栄養、木々などの自然の恵みをもとに、全診療科が連携してさまざまな病気の予防医学を追究しています。森山領理事長の理念である『病気にさせない病院』を実現します」と意気込む。