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江別病院

多職種が連携し、心不全患者の治療やリハビリをサポート

心不全治療と心リハの提供で江別地域の医療を支える

3つのチームからなる総合センターを開設

 江別市の基幹病院として急性期治療に力を入れている「江別病院」。消化器内科や呼吸器内科、循環器内科、外科、脳神経外科、整形外科など各科に専門医を配置。特に、密接に関わる循環器内科と脳神経外科は同じ病棟内にあり、常に連携を取りながら治療にあたってきた。

 また、包括ケア病棟の開設や人工透析の充実、「訪問看護ステーションてとて」の開設など、地域医療への貢献にも努めている。

 2月1日には心不全チーム、外来リハ部門、訪問リハ部門の3つのチームからなる総合センターを開設。心不全の治療と心臓リハビリテーションを提供する。メンバーは、センター長を務める松本純一医師を中心に看護師や管理栄養士、薬剤師など多職種で構成。さらに、同院のリハビリテーション科には理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が豊富に在籍している。

 松本医師は「心不全患者の大半がさまざまな疾患と合併しています。心不全は高齢者に多く見られ、認知症や腎不全、透析、高血圧、糖尿病、整形疾患など患者一人ひとりによって併存する症状も異なります。そうなると、一人の医師のみで全ての病態に対応するのはなかなか難しいのが現状。そこで多職種の連携が不可欠です」と語る。

 このほか、資格取得者も徐々に増えており、民間資格の心不全療養指導士が5人、心臓リハビリテーション指導士が4人など、サポート体制も厚い。

「高齢化とともに国内の心不全患者数も右肩上がりで増えており、〝心不全パンデミック〟と呼ばれるほど深刻化しています」と話す松本医師は北海道大学医学部を卒業後、道内基幹病院勤務を経て、北海道中央労災病院では心不全・心臓リハビリテーションセンター長も務めた人物。2022年4月から同院の循環器内科医として勤務している。現在は、北海道大学大学院で循環病態内科学の客室研究員も兼務する。

 心不全は慢性疾患のため、治療の継続が不可欠となる。しかし、患者自身が病気について理解できていない場合や金銭的問題など、さまざまな理由で治療をドロップアウトしてしまい、予後を悪くしてしまう場合も少なくない。

 松本医師は「心不全はA~Dの4つのステージに分類され、ステージA・Bは心不全の症候がないリスクステージとされています。心不全の症状が見られるステージC・Dになると、入院となるケースが多く、急激に身体機能が低下してしまいます。まずは心不全を発症させないことが第一ですが、心不全になってしまった後、予後をよくするために適正な療養指導が重要になります。運動療法や食事療法、患者教育など、多職種が包括的にケアを行い、患者の治療に向き合っています」と語る。

 患者の病態に合わせたプログラムを策定

 外来心臓リハビリテーショでは、150日間のプログラムを策定。患者の病態に合わせ、患者教育や栄養指導、生活指導などスムーズに在宅移行ができるよう多職種でサポートしている。

「実際に多職種で行う包括的ケアが再入院と全死亡を低下させたというデータがあります。全ての心不全患者に対して、運動リハビリと多職種による疾病管理が推奨されています。私たちと患者自身が病気を正しく理解し、向き合うことで再発・再入院、増悪を予防していきたい」と松本医師。

 治療には、薬物治療やICD(植込み型除細動器)・CRT(心臓再同期療法)、手術のほか、運動療法や栄養管理や日常生活指導などの療養指導、緩和ケアがある。

 また、他院に先駆けた新たな取り組みの1つとして、22年4月より医療介護ネットワークシステム「LAVITA」を導入。これは、日々の自己管理が難しい高齢の心不全患者向けのサービスで、患者が自宅で測定したバイタルデータをクラウドを通して、病院側が確認できるシステムだ。症状悪化が見られる人には病院側から来院を勧めるなどタイムラグなくアプローチができ、再発・再入院防止に役立っているという。

 松本医師は「今後も院内への周知や病棟と外来の連携などを行い、コメディカル部門の底上げを行っていきます。江別地域で地域医療をけん引する病院を目指したい」と話す。

 4月からは患者向けの心臓病教室を開始し、心不全の予防や正しい知識の普及を目指す考えだ。

 松本医師は「心不全は高血圧や糖尿病の方など、だれにでもリスクがあります。まずは心不全を発症させないための予防を行うこと。服薬や生活習慣を含めた疾患管理を行いましょう。それでも心不全になってしまった場合は、しっかりと病気に向き合って治療を続けてほしい」と訴える。

●診療科目
外科、脳神経外科、内科、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、整形外科、小児外科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、腎臓内科(人工透析)

●診療時間
月〜金  9:00〜17:00  第1・3・5土曜  9:00〜12:00

●休診日
第2・4土曜・日曜・祝日

 

 

松本純一心不全・心臓リハビリテーション総合センター長
JR野幌駅から車で5分の場所に位置する。約130台が駐車可能
先進の運動機器が備わる心臓リハ室