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上川大雪酒造

博士(農学)の学位を授与された「碧雲蔵」副杜氏の山根桃華さん。研究テーマは「碧雲蔵での清酒醸造過程に生育する乳酸菌とその酒質に及ぼす影響の解明」

総杜氏は客員教授。副杜氏は日本酒研究の農学博士

 2017年に上川郡上川町で「緑丘蔵」を、20年に帯広市で「碧雲蔵」を設立、今年8月には網走市で新たな酒蔵プロジェクトがスタートした。

 いずれも酒造がない地域だったが、その土地でしか購入できない酒をブランド化することで新たな特産品を作り、地域振興に貢献している。グループ企業では飲食店やホテル経営も行い〝地方創生蔵〟としての酒造りが全国で注目を集める。

 産官学連携にも力を入れている。「碧雲蔵」は帯広畜産大学の敷地内にある国内初の大学キャンパス内の酒造だ。産学連携の象徴として蔵内を全て見渡せるガラス張りの見学ルームを設けたほか、講義などに使えるセミナー棟もある。六次産業化や地方創生について学ぶために道内外から学生や企業、JAなどの業界団体、地方自治体が続々と訪れており、取材当日も東京農業大学の学生が調査研究を行っていた。同社では地域貢献として無償で講義や研修を行っている。

 講師となる総杜氏の川端慎治副社長は同大学の客員教授を務めるほか、副杜氏の山根桃華さんは酒造りを行いながら、よりおいしい日本酒造りの一環として乳酸菌について研究。今年同大学の博士号を取得した。

 北海道は〝食の王国〟と呼ばれるうえ、温暖化や品種改良により米の生産において質、量ともに国内トップクラスだが、他の都道府県に比べ酒造の数は少ない。

 塚原敏夫社長は「未来の醸造家を育てていく必要があると考えています。国内唯一の国立農業系単科大学であり、全国から学生が集まる帯広畜産大学で醸造学の講義を行うことで、北海道発の醸造家を育て、全国で活躍してほしい」と話す。

 現在、地域のベーカリーや菓子メーカーといった企業と協力し、酒かすやこうじなどの副産物の活用も進んでいる。

「網走市で計画中の蔵でも、東京農業大学をはじめ、オホーツク地域で産学連携を深めておいしい日本酒を作りたい」と塚原社長。 

 

総杜氏
川端慎治氏

米の割り振りや酒の生産量など、当社のすべての蔵の製造を統括しています。各蔵でその土地の水を使用しますが、碧雲蔵では札内川水系の中硬水を使用しており、キレのある味になります。日本酒を含む発酵食品はおいしいだけでなく、五臓六腑に染みわたり体を喜ばせるものとして数百年前から世界中で親しまれています。世界で通用する酒を作り、地元で飲んでもらうとともに十勝から世界へ発信していきたいです。

帯広畜産大学の敷地内にある「碧雲蔵」
蔵内で見学(上)、セミナー棟で講義を受ける東京農業大学の学生