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北海道医療大学

三国 久美 学長
(みくに・くみ)千葉大学看護学部看護学科卒業。北海道医療大学大学院看護福祉学研究科看護学専攻修士課程修了。北海道医療大学大学院看護福祉学研究科看護学専攻博士課程修了。1993 年本学就任後、看護福祉学部教授、看護学科長、看護福祉学部長、大学院看護福祉学研究科長を歴任。2024年4月から現職。

創立50周年。学生にとって魅力ある教育を実現させる

――4月に学長に就任されましたが、何に力を注いでいますか。

三国 学生主体の教育が重要と感じています。学生が自分の頭で考える機会を提供していきたいです。例えば、患者の個別性を踏まえて、適解を見つけるトレーニングを授業で積極的に取り入れるなどです。

今は調べればどんな情報も得られます。この時代に必要なのは「正しい情報、使える情報、いらない情報」を見極め、情報の取捨選択をして活用する力です。そのためには、主体的に自分の頭で考えられることが大事なキーワードだと思っています。

――多職種連携教育にも注力されていると聞いています。

三国 医療現場ではチーム医療が主流です。本学ではさまざまな保健福祉医療職の人材を育成する中で、現在も連携教育を行っていますが、より密にすることで学生のうちから基礎を作り上げ、即戦力の人材として現場に送り出せると考えています。

ここで最も重要なのはコミュニケーション能力です。チーム医療では、同じ目標を持ちつつも、方法論は複数あるため専門職同士が意見を戦わせるシーンが必ずあります。その際にコミュニケーションをとることで、それぞれが最大限の力を発揮できます。そのためにも専門知識という自分の土台があり、その上に聞く・伝える力が必要です。

多職種連携教育では、学生のうちからさまざまなな職種を目指す仲間とともに学び、ディスカッションを重ねることで、コミュニケーション能力が鍛えられます。今後、この分野の教育をより充実させていきます。

――文部科学省「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」の実施機関に採択されました。

三国 「医療データサイエンス入門」という科目を立ち上げました。選択科目ですが、AIを使った授業では仮想空間の中でアバターがやり取りをしたり、医療分野でも活用される画像認識のAIを作ったり、学生たちはさまざまな体験をしています。

また、医療業界ではテレメディスン(遠隔医療監視)が進んでいます。本学でも傷の状態や患者の履歴などを学習したAIが、患者に適した医療用品を提案する研究を大学院生が行っています。AIなどの最先端のデジタル技術もますます医療現場に導入されることになりますし、まもなくデジタルネイティブ世代も入学してきます。データサイエンスに関する体験を通して、今後の医療業界から期待される人材の育成ができるのではと考えています。

――例年、高い水準にある就職率と国家資格合格率ですが、昨年度の実績を教えてください。

三国 就職率は例年通り高い水準でした。資格合格率も介護福祉士、保健師は100%を達成するなど、ほとんどの資格で全国平均を上回りました。

合格率が高いのは、教員の量と質だと捉えています。教員1人あたりが受け持つ学生の数は、全国平均が19人なのに対して本学は10人です。国家資格取得に向けて、どの学科も丁寧にサポートしています。

――昨年、北広島市へのキャンパス増設を発表。経緯を教えてください。

三国 本学は現在、札幌市から遠く利便性が良いとは言えません。人口が減少する中、札幌市や他市町村からの通いやすさはとても重要になっており、北広島市にキャンパスを設置することで解消できると考えました。

また、現在は当別町とあいの里にキャンパスがありますが、今後は1つに集約します。多職種連携教育もしやすくなり、より効率的かつ効果的にカリキュラムの運営ができると考えています。

――最後に、現在はどのような大学教育が求められていると感じていますか。

三国 移り変わりのスピードが早く予測が難しく先の見えない時代の中で、どんなことにも柔軟に対応できる人材を養成することが必要です。大学教員の役割は教育と研究、地域貢献の3本柱。教育だけではなく研究にも力を注ぎ、それを教育に還元させるスキームの構築も重要。本学は、全学部に大学院研究科があります。そうした特色をより強めることも大切だと感じています。

4年後の北広島市への新キャンパス増設は、あくまでも通過点にすぎません。本学は今年で創立50周年を迎え、100周年に向かって新たなスタートを切りました。学生にとってより魅力ある教育を提供するには何が必要なのか、引き続き戦略を練って前に進めていきます。

 

JR学園都市線「北海道医療大学」駅と直結する当別キャンパス
医療現場で活用できるようデータサイエンスに関わる科目を立ち上げた