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北星学園大学・北星学園大学短期大学部

中村 和彦 学長
(なかむら・かずひこ)1965年小樽市生まれ。87年北星学園大学文学部社会福祉学科卒業。同大大学院文学研究科社会福祉学専攻修士課程修了。龍谷大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。ソーシャルワーカーとして勤務後、道内外の大学・専門学校で助教授、教授を務める。17年から北星学園大学で学習サポートセンター長、学生部長、副学長を歴任。24年から現職。博士(社会福祉学)。

〝北星らしさ〟を生かし、大学ならではの学びを追求

――貴学初のOB出身の学長だそうですね。就任初年度の意気込みを。

中村 私は本学の文学部社会福祉学科の卒業生です。就任後は多くの同窓生から激励を頂き、身が引き締まる思いです。昨年度末に本学は短大の募集停止を発表しました。難しい決断でしたが、学園設立137年目、短大設立73年目、大学設立63年目となる2024年を新たな出発の年にしたいと考えています。

――入試状況は。

中村 短大は今年が最後の入試ということもあり、2学科とも55%ほどです。4大は7学科全体で定員を充足できました。本学は02年に文学部に心理・応用コミュニケーション学科、経済学部に経済法学科を作ってから、昨年に社会福祉学部の2学科を再編するまで、20年間学科構成は変わっておりません。極めて珍しいですが、安定して入学者を獲得できています。北星が持つある種の安定感やブランド力が生きているのではと感じます。

――資格と就職の状況は。

中村 5月1日現在96・6%ですが、100%達成に向けて就職支援課が最後まで丁寧に対応しております。教職課程では特別支援学級や中学(英語、社会)、高校(英語、公民、地理など)の教諭を輩出しています。また〝福祉の北星〟と称される本学では、国家資格の社会福祉士と精神保健福祉士の合格者を数多く出しています。

この社会福祉士と精神保健福祉士は、社会ニーズの拡大と反比例して学生の希望者が減少傾向にあります。私は249校が加盟する全国組織「日本ソーシャルワーク教育学校連盟」の会長も兼務しているので、大学での教育だけではなく、高校生へのアピールや国への働きかけなどにも積極的に取り組んでいきたい。

――進化する大学教育とは。

中村 コロナで学校に来られないということが続き、この数年で授業の形態も変わらざるを得なかった。中学、高校をその環境で過ごした学生さんにとって今や大学も「授業が終わったら真っすぐ帰る」というのが当たり前になっています。しかし本来の大学とはそうではありません。キャンパスに通学し、対面授業で学ぶことの充実感など大学本来の良さを改めて伝えていく。その1つには優秀な教員による教育力の強化が挙げられます。もちろん以前と同じことをするのではなく、リモートワークを活用した個別指導も併用するなどカリキュラムを進化させていきます。また、キャンパスには友人との交流や活動を通じたさまざまな楽しみがあります。新しいものを取り入れつつ、良さを伝える。本学のリブランディングも含めて新しい大学をどう作り上げていくのか。「エビデンス」があるわけではないですが、学生さんの声も拾いながら決めていきたい。

――来年度以降の取り組みを。

中村 具体的なカリキュラムでは昨年度の実績を踏まえ「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」を国に申請し、来年度から導入します。また、学生個人のノートパソコンを必携とし各自の端末で授業を受ける「BYOD」をスタートさせます。すでに今年からWi‐Fi環境を拡充させ、オンライン・プリント・システムの導入を図っています。今後は学内のDX推進の一環として、効果的な教育方法、学習環境のデジタル化を進めていく計画です。

また社会貢献については地域社会との連携を強化したい。本学では札幌市厚別区や歌志内市などと協定を結んでいますが、これを次にどう生かしていくかが重要だと考えています。

国際交流は元々盛んで多くの協定校がありますが、さらなる充実や強化にも取り組みます。例えば昨年は協定校ではありませんが、新たに韓国の全州市にある総合大学の全北大学校社会福祉学科と交流を行いました。

――貴学が目指す人物育成像は。

中村 こういう時代だからこそ、隣にいる人のことを感じ取れるような共感力と多様性への理解を授業を通して身につけてほしいですね。資格取得や就職に生かすのはもちろんですが、地域社会への貢献や海外でも活躍できる人になってもらいたいと思います。

――高校生にメッセージを。

中村 天気のいい日に一度、本学のキャンパスに足運んでみてください。広くはないけれども、アクセスは良いし自然が豊かで静かで気持ちの良い場所だと思っています。そのときは、是非アポなしで構わないので学長室に遊びに来て下さい。それから図書館にも立ち寄ってみて下さい。蔵書も豊富で外国の雑誌も多く、福祉系の本ではどこの大学よりも充実しています。誰でも利用でき、実際に地域の高校生が放課後に図書館に来て勉強しています。むしろ大学生より多いかもしれない。本学の入学希望者だけではなく、地域の高校生が来てくれることはすごくありがたい。どんどん利用して欲しいですね。

自然に囲まれたキャンパスは、地下鉄東西線大谷地駅から徒歩5分の好立地