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日本医療大学

島本 和明 総長
(しまもと・かずあき)1946年10月7日、小樽市出身。71年札幌医科大学医学部卒業。78年同大で医学博士の学位を取得。2004年から同大附属病院長、10年から同大理事長・学長を歴任。16年から現職。

多職種が学び働く環境でチーム医療を実践する人材を育む

――今年で開学10周年です。

島本 10周年を祝い、創設以来初めて札幌ドームで入学式を執り行ったほか、5月には運営母体の「つしま医療福祉グループ」が国際交流事業として、韓国ソウル特別市と介護分野で連携協定意向書を交わしました。

――人材の育成目標は。

島本 まず1つ目が患者さんの痛みを理解して寄り添える豊かな人間性を持った人材です。2つ目が国家資格を取得できる知識や技術を持った人材で、3つ目がチーム医療を実践できる人材です。特に3番目については現在の医療職は多岐にわたっており、本学でも保健医療学部に5学科がある。多職種連携や協働ができる医療人を育てます。

――カリキュラムの特徴は。

島本 去年から初年次教育に力を入れています。主に学校推薦型選抜合格者を対象に入学前に2つの学習課題を課します。1つが課題図書のレポート提出。もう1つが理科、計算、国語、社会などのドリルです。

また、入学式の1週間前から「リメディアル教育」を行います。いわば高校の復習です。看護学科なら生物、診療放射線学科と臨床工学科なら物理、臨床検査なら化学の基本が必要となりますが、高校で履修していない生徒でも分かるように丁寧に指導します。

学部教育については、国家試験の合格を念頭に置き、学科ごとにカリキュラムの見直しを行っています。特に本学はチーム医療にこだわっていますが月寒本キャンパスは「日本医療大学病院」と「介護老人保健施設 ノテ日本医療大学リハビリ」に隣接しており、実習段階から多職種連携や協働を学べる環境が整っています。

また、日頃からチーム医療を実践できるようにしています。大学祭などの運営をサポートする学生サークル「JHU(Japan Healthcare University)CREW」では、活動を通じて学部や学科の垣根を越えた交流ができます。

――キャンパスライフの充実にも取り組んでいます。

島本 2021年に月寒本キャンパスを新設しました。校舎が新しくなったことはもちろん、交通の利便性が向上しました。地下鉄駅が東西線「南郷13丁目」駅と東豊線「福住」駅のダブルアクセスが可能になりました。学食は安くて美味しく、800席あるので、待たされることも少ない。

さらに隣接するコミニュティセンター「リアン」には、書店を併設したコンビニ、パン工房、ATM、クリーニング店、レストランなどが入居しています。さらにフィットネスジムもあり、こちらは学生の利用が無料です。日本医療大学病院もワクチン接種はもちろん、学生さん個人のケガや病気でも治療費がかかりません。いずれも大変評判がよい。

――今年度の入学者は。

島本 保健医療学部は定員に対して92・2%の充足率です。だが、学科別に見ると特に臨床工学技士を育成する臨床工学科では、現場ニーズが高いのに入学者が少ない傾向が見られる。この資格は透析治療から手術室に必要な人工心肺、コロナ禍で有名になったエクモなども取り扱うため、現代医療に欠かせない人材です。

また、リハビリテーション学科では、理学療法学専攻が充足率110%に対し、作業療法学専攻は少なめです。

いずれも資格や職種の認知度の低さに原因があり、本学だけではなく全国的な課題です。今後は中学生や高校生、新入学生にも周知徹底するなど、臨床工学科と作業療法学専攻の2学科の定数確保に全力を挙げます。

――国家資格は。

島本 今年度の合格率は看護師が91・7%、診療放射技師が83・3%、理学療法士が95・5%、作業療法士が84・6%といずれも高い実績です。

――この4月に大学院を開設しました。

島本 大学院保健医療学研究科では、大学の4学科を「高齢者療養支援領域」と「診断技術領域」の2つに分けて多職種連携などの研究を担います。定員6人のところ9人が入学しました。来年度の入学者も確保されています。

――進化する大学教育とは。

島本 年齢や職業、時間や距離に関わらず学べる環境の構築です。すでに大学院は対面とリモートを併用したハイブリッド授業を導入しています。全ての入学者は多忙な社会人で、居住地も苫小牧市や東京都や熊本県など通うことが難しい地域ですが対応しています。

――地域との連携について。

島本 月寒地域との連携や健康まちおこしにつながっているのが「日医大生涯学習講座」です。参加は無料で月寒公民館を拠点に毎月開催しています。さらに月寒本キャンパスで開催される大学祭「日医大フェス」は、22年の第1回目から想定を上回る来場者がありました。地域のお祭りとして定着したと感じます。第3回目の今年は6月15日に開催されます。多くの地域住民に参加してほしいですね。

大学病院や老健施設と隣接する「月寒本キャンパス」